見出し画像

島日記 野いちごに想う

何の花?
葉を見ればわかるが、野いちごの花だ。
一番乗りで、ちょっと恥ずかしげに下を向いている。

とげとげなので農家には嫌われ者だが、なんと透きとおった白であろうか。
赤い実もおいしいが、花も好きだ。
実のなる頃は、刈り取られていてあまりお目にかかれない。
でも見つけて一粒ふたつぶは口に放りこむ。

厳密にいえば、ラズベリー(キイチゴ)、そしてクサイチゴのようだが、野にあるから野いちごと呼んでいる。

5月頃

「野いちご」という孤独な老人のロードムービーがある。
研究に一生を捧げてきた医師は称号をもらうために会場に車で向かう。
途中、実家に寄り野いちごを見て、過去を回想する。
またその一日でいろいろな人に出会い、旅を通してこころを解放する老人を描く。

イングマール・ベイルマン監督の古い白黒映画だが、今見ると違った思いをいだく作品だろう。

生の終わりに近づくと、走馬灯のように過去の経験などが脳裏に浮かぶという。
できれば病院のベットでなく、縁側で日向ぼっこをしながら追憶し、喜怒哀楽をすべて肯定し、安堵して目を瞑るように逝きたいものである。
が、それは難しい時代になっている。

生の終わりでなくても、野の花を見ると、幼い日の出来事がふと浮かぶことがある。
昨日見た野いちごの花も思い出のよすがになるだろうか。

ハートのカタバミ
春は黄色があちこちに
隣のミカン園にレンゲがいっぱい
金網で入れず遠くから ピンボケになる
除草剤をかける園では見られない草花たち
大きな石は苔でいっぱい


雨が上がり、外は南風が強く吹いている。
「春一番とニュースで言っていましたよ」
町報を持ってきた区長さんが言った。
立春まもないのに今年は早く吹いた、気温は高いが風はまだ冷たい。



今日もお付き合いくださってありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?