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半透明人間

 たまの週末、職場の人たちに誘われて飲みに行く。
 多くても五人まで。場所は大衆居酒屋。主な話題は仕事の悩みとか、その場で注文した料理やお酒の感想とか。あとはオタクだと認知されているので、その手の話を振られる。
 お酒は割と何でも飲める。ビールで乾杯してからレモンやお茶系のチューハイに移るか、この頃はまだ寒いので芋焼酎のお湯割りを注文する。
 多分、楽しい。終盤の偏った論説でスッと酔いが醒めてしまうことさえ除けば。
 1から100まで満足を求めるのはさすがに欲張りかもしれない。年齢差や職歴などの価値観の違いは仕方ないし、互いに傷付かない距離感でいるのが安牌だ。
 それに会話や食事でストレスを発散出来るタイプだから、適度な息抜きにはなる。


 あるひとつのコンテンツを追えなくなった。現場から離れたり、ファンとしての活動を辞める「他界」が近いのだろうか。
 具体的な定義がどこまでを指すのか分からないけれど、私の場合はファンクラブにも入っておらず、活動の全てを追っていたわけではない。コロナ禍に突入してから、ゆっくりと熱が落ち着いてしまったのが正直な感想だ。
 これは他のジャンルでも当てはまるけれど、新しい需要があっても手が伸びない。楽しそうだとは分かっているし、スマートフォンをタップするだけなのに。そんなきっかけすら行動出来ない。

 誰かとSNSで繋がるきっかけは、共通の趣味やその時推しているコンテンツだったりする。そこからオフラインで交流するようになった人もいる。
 現地での楽しそうな写真や、想いがこもった感想を眺めていると、微笑ましさと寂しさが混ざった複雑な気持ちになる。
 みんなと繋がっているSNSでの発言が少ない私にも、せめて半透明人間ぐらいの存在感は残っていてほしい。
共通の話題が減っても変わらずに仲良くしたい。
 難しいことかもしれないけれど、ただそれに尽きる。


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