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ミンミン、ジジジ、と競うように騒いでいた蝉の大合唱はもう聞こえなくて、もう少し声の高い、控えめな鳴き声が聞こえた。秋の虫だろうかと日陰で電車を待ちながらぼんやり考えた。 祖父が亡くなった。享年89歳。救急車で運ばれた翌々日、病院で息を引き取った。 自宅で転倒してから満足に歩けなくなり、腰の骨が折れていた(!)から 入院することになったものの、最終的に在宅介護をすることになった。 祖母が「自宅で看取りたい」と言っていたと両親から聞いたのが、たしか去年末だったと思う。