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あーぼ へーぼ!?/あの日、天然水の森で。

2003年から始まった「サントリー天然水の森」の活動。
実は、この公式note「森に、あう。」を担当している”わたし”の父もコピーライターとしてこの活動に携わらせてもらっています。そして、時々師匠と一緒に森に入っては、森の小さな小さな営みをカメラで捉え、エッセイを書いていました。
今も昔も、変わらず森には生命いのちがめぐっています。それらを、ちょっと前のエッセイから感じてみよう、というシリーズです。

「サントリー天然水の森 東京農業大学奥多摩演習林プロジェクト」の舞台、“東京農業大学 奥多摩演習林”を訪れた時のことです。

演習林長の菅原泉教授から、ちょっと変わった言葉を教えていただきました。

「この辺りでは、山の神様のことを<あーぼ へーぼ>と云いまして……」

えっ? あの、もういちど、仰っていただけますか……

「<あーぼ へーぼ>、です……」


<あーぼ へーぼ>!? いったい、何語?

奥多摩といえば、ある地名が思い浮かびます。

「サントリー天然水の森 奥多摩」の所在地は、
東京都西多摩郡檜原村字人里。

はじめてそうと知って驚いたのは、最後の“人里”の読み方でした。
なんと、<へんぼり>と読むのです。

※人里=へんぼり、という読み方の由来については、下記をご覧ください。

<あーぼ へーぼ>にも、きっと、謂れがあるに違いありません。

ありました。

小正月、その年の豊作を祈って、ヌルデやニワトコ、コウゾなどの木を、粟(あわ)の穂の形にしつらえて竹に挿したものを、神々に供える。
稗(ひえ)に見立てた穂状のものを、共に飾ることが多い……

なるほど。

<あーぼ>は、<あわほ>。<へーぼ>は、<ひえほ>。

同様の風習は、日本各地に伝えられていて、その地、その地で、少しずつ、呼び慣わし方が違っているようです。

奥多摩を含む地域では、<あーぼ へーぼ>。

もともとは農耕儀礼の一つのようですが、山で生きる人々が、同じように山の神々に祈りをささげ、やがて山の神々のことを<あーぼ へーぼ>と呼ぶようになったとしても、何ら不思議はありません。

「山で生きる人たちにとっては、たとえば、その岩も、<あーぼ へーぼ>なのです」

わかる気がします。菅原先生。

2013.4.18|サントリー天然水の森 東京農業大学奥多摩演習林プロジェクト