デザイン思考を学ぶだけではイノベーティブにはなれない

ずいぶん前に書いたデザインシンキングに関して追加の考察をば。

前回記事:デザイン思考と戦略思考の違いについて

デザイン「シンキング」は、前回の記事で述べた「異なる専門性を持つプロフェッショナルの協働を成功に導くためのプロセス管理及びマインドセット」以上のものがある

前回の記述では、「デザインシンキングとは、本質的には「シンキング(思考方法)」ではなく、問題解決のプロジェクトを進める上でのプロセス管理方法・アプローチであり、プロジェクトに関わる人間が持つべきマインドセット・姿勢である」と書いた。

これ自体、僕自身の初期的な仮説だったのだけれども、その後少し勉強した結果、デザインシンキング自体は、もう少し奥が深いものだと考えるようになった。初期仮説を簡単に棄却してごめんなさい(苦笑)。

僕が書いた「異なる専門性を持つプロフェッショナルの協働を成功に導くためのプロセス管理及びマインドセットを指している」というのは、確かにデザインシンキングの一側面を言い当ててはいると思う。

しかしそれ以上に、「デザインシンキングとは、“商業的に成功するデザイン”を志向する過程で、人がしばしば陥ってしまう“思考のワナ”から、強制的に抜け出す(確率を上げる)方法でもある」というのが、僕が2015年にデザインシンキングを勉強して辿りついた結論だ。

(デザイン「シンキング」改め)Human Centered Design Approachは、革新的なソリューションを生み出す上で、人が陥りやすい「2つのワナ」を巧妙に回避し、その人の実力の100%を出し切れるよう設計されている(少なくともそのような設計を目指している)

「商業的に成功する」というデザイン「シンキング」(注)の目的を鑑みると、避けなければいけない「思考のワナ」には、(当たり前だが)二つのパターンが存在する。一つ目のワナは、デザインしているソリューションが、対象ユーザーの行動パターンや動機に沿った形のものとなっていない(すなわち”Human Centered”なソリューションとなっていない)ケースで、もう二つ目のワナは、デザインしているソリューションが、常識にとらわれ新規性をまったく持っていないケースだ(図1参照)。

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