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実践的計算テクニックを身につける!――近刊『演習で学ぶ基礎制御工学 実践編』まえがき公開

2021年11月上旬発行予定の新刊書籍、『演習で学ぶ基礎制御工学 実践編』のご紹介です。
同書の「まえがき」を、発行に先駆けて公開します。

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まえがき

本書は、好評を頂いている「演習で学ぶ基礎制御工学」(森北出版、2004年)の続編である。制御工学を勉強するとき、蛍光ペンを片手に教科書を読むだけでは何度読み返しても理解はなかなか深まらないが、鉛筆を走らせて数値例を解いているときにはっと気づくことがある。このように、定理やアルゴリズムを、受け売りの知識ではなく自分の技として身に付けようとするならば、いろいろな場面を想定して作成された適用事例をたくさん経験することが重要である。

本書はその目的に沿って書かれた演習本の続編であり、特徴はつぎのとおりである。

(1)「演習で学ぶ基礎制御工学」の章立てに合わせている。
(2)逆ラプラス変換をする際には、部分分数への分解を避けては通れない。重根がある場合への対応を含め、ヘビサイドの展開定理の適用例を数多く扱っている
(3)周波数応答の図的表現法の代表格であるベクトル軌跡は、システムの特性を把握するための重要なツールである。そこで本書では、パラメータを変えるときのベクトル軌跡の形状変化を扱うことでベクトル軌跡の本質に迫る。
(4)伝達関数からボード線図を作成する手法は、多くの市販本で解説されている。本書では逆に、与えられたボード線図から伝達関数を推定する問題を扱うことで、ボード線図をより深く理解し、使いこなす技を身に付けることができる。
(5)制御対象自身あるいは設計後の制御系の共振値やゲイン余裕、位相余裕を知るには、それらを求める計算式を理解したうえで、その式に当てはめれば求められる。本書では逆に、指定する共振値や安定度を満たす制御系設計手法を扱っている。実際の設計においては、与えられた設計仕様を満足するように制御系を構成しなくてはならず、後者の手法をマスターすることが肝要である。
(6)最終章である第12章には、章を超えた内容で出題する総合演習を設けている。
(7)総合演習の章を除く各章のはじめには、基本的な事項を簡潔にまとめている。
(8)演習問題の解答はすべて詳細とし、必要に応じて「解説」を設けている。

上記特徴のうち、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)は、「演習で学ぶ基礎制御工学」には書かれていない新しい試みである。実践において役立つ基本的事項が演習問題の形でまとめられている本書によって、制御工学の深みと面白さを楽しみながら実践力を身につけて頂ければ、著者としてこれほど幸せなことはない。


著:森 泰親(東京都立大学 名誉教授)


●○さまざまな演習を解いて実践的計算テクニックを身につける!○●

演習中心の入門書・テキストとして好評の「演習で学ぶ基礎制御工学 新装版」の実践編!

たとえば、制御系の共振値やゲイン余裕、位相余裕を知るには、それらを求める計算式を理解し、その式に当てはめて求めます。テキストでは学びやすいこの流れになっています。

一方、実際の設計では、与えられた設計仕様を満足するように制御系を構成するので、指定する共振値や安定度を満たす制御系設計手法が必要になります。

本書では、後者のように、実際の設計や深い理解を意図し、テキストとは違った流れの演習を用意し、より実践的計算テクニックが身に付くようになっています。


【目次】
第1章 システムと制御
 1.1 電動機と発電機の動特性を数式で記述する

第2章 ラプラス変換
 2.1 ヘビサイドの展開定理を理解する
 2.2 ラプラス変換を使って微分方程式を解く

第3章 伝達関数
 3.1 入力信号から出力信号までの伝達関数を求める

第4章 ブロック線図
 4.1 入力信号から出力信号までのブロック線図を作成する

第5章周波数応答
 5.1 パラメータを変えるときのベクトル軌跡の形状変化を知る

第6章 ボード線図
 6.1 ボード線図を折れ線近似を使って手で描く
 6.2 ボード線図から伝達関数を推定する

第7章 過渡特性
 7.1 2次遅れ要素の最大行き過ぎ量と行き過ぎ時間を求める
 7.2 指定の最大行き過ぎ量を実現する制御系を設計する

第8章 システムの安定判別
 8.1 制御系を安定にする制御パラメータの条件を求める
 8.2 ゲイン余裕と位相余裕を計算する
 8.3 指定のゲイン余裕と位相余裕をもつ制御系を設計する

第9章 制御系の設計
 9.1 微分・積分動作の効果を検証する

第10章 部分的モデルマッチング法
 10.1 むだ時間系に対してPID制御とI-PD制御を施す

第11章 根軌跡法
 11.1 分母と分子の次数差が1の数値例に根軌跡法を適用する
 11.2 分母と分子の次数差が2の数値例に根軌跡法を適用する
 11.3 分母と分子の次数差が3の数値例に根軌跡法を適用する
 11.4 分母と分子の次数差が4の数値例に根軌跡法を適用する

第12章 設計例の演習
 設計例① 閉ループ系を安定化する補償器を設計する
 設計例② 制御系を安定限界とするパラメータの値とそのときのすべての  
      特性根を求める
 設計例③ 共振値の設計とそのときのゲイン余裕と位相余裕を求める
 設計例④ 代表特性根の減衰係数を指定する
 設計例⑤ 代表特性根の減衰係数と固有角周波数を指定する
 設計例⑥ 制御系の直列補償器の形を変えながら減衰係数を指定する

参考文献
索引

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