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実務に役立つテクニックを解説――近刊『実務者のためのPID制御設計』まえがき公開

2022年3月中旬発行予定の新刊書籍、『実務者のためのPID制御設計』のご紹介です。
同書の「まえがき」を、発行に先駆けて公開します。

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まえがき

フィードバック制御系は古くから知られており、産業分野をはじめとしてさまざまな分野で適用されている。フィードバック制御系の設計においては、制御対象の動作を調べることができる数式の導出(数式モデル化)と、数式モデルを用いた制御式と制御パラメータ調整法の検討(制御設計)が必要である。

制御対象の数式モデル化には、古典制御の基礎であるラプラス変換、ブロック線図、伝達関数の知識が必要であるが、市販されている多くの参考書では、これらは個別に説明されている。そのため、基礎知識だけでは制御対象の数式モデル化手法を理解することは難しい。また、古典制御の参考書には、伝達関数を用いた過渡応答や周波数応答の解析法も説明されている。しかし、これらの解析法をフィードバック制御系の制御設計にどのように適用するかを明確な手法として説明した参考書は見当たらない。

そこで、本書では制御系の三つの基本要素である比例・積分・微分要素で構成される電気系と機械系を制御対象としたフィードバック制御系の設計方法について説明する。また、制御法としては、幅広い分野で適用されているPID制御法を対象とする。

まず、古典制御の基礎であるラプラス変換、ブロック線図、伝達関数について説明し、これらを用いた制御対象の数式モデル化手法を具体例に基づいて紹介する。制御器に比例・積分・微分要素を一つ以上含む制御系をPID制御系とよぶと、制御対象によって構成が異なる複数のPID制御器を適用することができる。そこでつぎに、制御対象を1次から3次まで次数によって区別して、それぞれの制御対象に適用可能なPID制御器について説明する。さらに、周波数応答の解析手法の一つであるボード線図を用いた制御器のパラメータ(比例・積分・微分ゲイン)の設定手法を説明する。その後で、制御系の過渡応答を解析し、制御性能を評価する。本書で説明する設定手法は、片対数グラフ用紙を用いて机上でパラメータ設定できるという特長がある。

なお、微分制御を行う場合、制御量の微分量が必要であるが、微分量が制御対象の状態変数に含まれる場合は、微分制御は現代制御における状態フィードバック制御と等価となる。そこで、PID制御系と現代制御の状態フィードバック制御やサーボ系との関連についても説明する。これによって、本書で説明するパラメータ設定手法は、状態フィードバック制御やサーボ系のパラメータ設定にも役立てることができる。

本書は、実務でフィードバック制御系を設計する技術者や、これから古典制御やPID制御を学びたい学生や若手技術者に役立つと思われる。

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 著:小山正人(金沢工業大学 教授)

幅広い分野で適用されているPID制御を対象に、

・数式モデル化(ブロック線図と伝達関数の導出)
・数式モデルを用いた制御系の設計

の2点を丁寧に説明しています。

 電気系・機械系の制御対象を次数ごとに分類し、それぞれに対して適用可能なPID制御器について述べるとともに、ボード線図を用いた制御パラメータ(比例・積分・微分ゲイン)の設定方法をわかりやすく解説しています。

また、回転座標軸を用いる3相交流モータ制御システムへの適用や、現代制御における状態フィードバック制御とPID制御との関連性なども紹介。


【目次】
第1章 序論
 1.1 フィードバック制御系とは
 1.2 本書の構成

第2章 制御系の基本要素とラプラス変換
 2.1 基本要素の表現
 2.2 ラプラス変換の定義
 2.3 基本関数のラプラス変換
 2.4 基本要素のラプラス変換
 演習問題

第3章 伝達関数とブロック線図
 3.1 伝達関数とブロック線図
 3.2 複数個の基本要素を含む系のブロック線図の求め方
 3.3 ブロック線図の求め方の例
 3.4 ブロック線図の作成のまとめと補足
 演習問題

第4章 ブロック線図の結合
 4.1 ブロック線図の結合法則
 4.2 具体的なブロック線図の結合例
 4.3 ブロック線図の結合法則のまとめ
 4.4 伝達関数のほかの求め方
 4.5 伝達関数からブロック線図を求める方法
 演習問題

第5章 過渡応答と安定性
 5.1 過渡応答の求め方
 5.2 基本的な要素のステップ応答
 5.3 安定性
 5.4 安定な伝達関数
 5.5 安定判別方法
 演習問題

第6章 周波数応答
 6.1 周波数応答の表現
 6.2 ボード線図のメリット
 6.3 基本的な伝達関数のボード線図
 6.4 折れ線近似のゲイン線図
 6.5 折れ線近似のゲイン線図の描き方
 6.6 フィードバック制御系の安定性
 6.7 伝達関数と定常状態の関係
 演習問題

第7章 1次の制御対象のフィードバック制御
 7.1 フィードバック制御系の基本構成と伝達関数
 7.2 ボード線図を利用した設計方法
 7.3 積分の制御対象の場合
 7.4 1次の制御対象の場合

第8章 2次の制御対象のフィードバック制御
 8.1 積分要素の直列結合の制御対象の場合
 8.2 積分要素を二つ含むそのほかの制御対象の場合
 8.3 2次の制御対象の制御法のまとめ

第9章 3次の制御対象のフィードバック制御
 9.1 3次の制御対象の例
 9.2 差速度フィードバック付きPI制御
 9.3 状態フィードバック付きPI制御
 9.4 直流モータの回転角制御
 9.5 PI型制御とI-P型制御の比較
 補足説明1
 補足説明2

第10章 3相交流の制御対象のフィードバック制御
 10.1 3相交流モータの制御システム
 10.2 座標変換
 10.3 永久磁石同期モータのブロック線図
 10.4 永久磁石同期モータの回転速度制御
 10.5 AC/DC変換器による電力制御
 補足説明

演習問題の解答
索引

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