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【内容一部公開】豊富な問題と解説で理解が深まる!――近刊『建築鋼構造の基礎』

2023年8月下旬発行予定の新刊書籍、『建築鋼構造の基礎』のご紹介です。
同書の一部を、発行に先駆けて公開します。



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まえがき
建築分野における鋼構造を取り扱った著書は数多く発刊されており、力学特性・現象から構造設計まで幅広い内容となっています。本書でも同様にこれらを網羅していますが、鋼構造とは力学特性・現象に関する学問が体系化され、それに基づいて構造設計法が確立されたものであることを重視しました。

そのため、大学および高専の建築系の学生、若手の建築技術者が、鋼構造の基礎と最新の知識を習得できるように、鋼構造特有の力学特性や現象を理論的にわかりやすく記述しています(第2~8章)。そして、これらの力学特性に基づいた、構造設計の基礎である許容応力度設計法の説明(第9章)へと展開しています。とくに、許容応力度設計に用いられる式は鋼構造の力学特性や現象を構造力学(弾性論)に基づいて展開されたものであるため、これらの関係を理解することは非常に重要です。そのため、設計式の根拠となる弾性論について詳しく説明しています。さらに、大地震時により塑性化・損傷を生じる建築物の安全性を確認するための設計法として、保有水平耐力計算などを説明しています。

鋼はほかの構造材料に比べて比強度が高く、さまざまな形状に加工できることから、鋼構造建築物は優れたデザイン性を備えた大規模で複雑な形状を創生できます。そして、コンピューターの演算能力・記録容量の大幅な向上と設計プログラムの普及に伴い、数値解析を行えば、複雑な形状の鋼構造建築物であっても、想定されるさまざまな荷重に対して各部材や各接合部に作用する応力や変位を出力できます。設計者は得られた膨大なデータから、数値解析結果が意味する力学現象の本質を理解し、解の妥当性を検証しなければなりませんが、部材の作用応力・変位と各設計式より求められる耐力・変形性能との関係を見定めることができれば、複雑な形状の建築物であっても構造設計が可能となります。

本書では、鋼構造における力学とその延長にある設計法について理解を深める大切さを学んでいただけるよう心がけました。そのため、

「第1章 はじめに」では、鋼構造の特徴や建築構造に鋼が適用されるまでの歴史に触れ、現在の設計・施工法に至る経緯を説明しています。

「第2章 鋼構造における構造形式と部材断面」では、第1章で説明した背景をふまえて、実際に建築物に作用する荷重・外力と損傷の関係を説明するとともに、このような荷重・外力に耐えるための各種構造形式を紹介しています。とくに、多くの鋼構造建築物に採用されているラーメン構造や筋かい付きラーメン構造などの階層構造の特徴を説明しています。

「第3章 鋼材の機械的性質」では、鋼の力学的特性の説明に始まり、現在使われている鋼材の規格と種類について説明し、材料の観点から鋼構造の優位性と問題点を述べています。

「第4章 引張材」では、引張応力を受ける鋼部材の力学特性と実際の構造物に使用される際の問題点(ボルト接合による断面欠損や偏心)を説明し、具体的な応力算定方法を示しています。

「第5章 圧縮材」では、圧縮応力を受ける鋼部材に用いられる断面形状について概説し、圧縮材の力学現象として代表的な曲げ座屈と、この現象が生じるときの荷重式の導出過程を説明しています。

「第6章 曲げ材」では、第5章と同様、曲げ応力を受ける鋼部材に用いられる断面形状について概説し、曲げ材の応力状態、そして力学現象として代表的な横座屈と、この現象が生じるときの荷重式の導出過程を説明しています。さらに、軸力と曲げを受ける部材の力学現象を説明しています。

「第7章 板材」では、圧縮材や曲げ材を構成する板材の力学現象である板座屈(局部座屈)と、この現象が生じるときの荷重式の導出過程を説明しています。

「第8章 接合」では、梁や柱といった部材を組み立てて骨組を形成する際、各部材をつなぐための接合について、その方法・種類を概説し、各種接合方法の応力伝達機構や耐力算定式を説明しています。

「第9章 構造設計」では、各種構造設計法について概説していますが、第3~8章までのさまざまな力学特性・現象が体系化された学問との関係を示しつつ、とくに一次設計(許容応力度計算)を説明しています。さらに、実際の構造設計に用いられる二次設計(保有水平耐力計算など)についても述べています。最後に、第3~9章までの知識を活用するために、演習問題を用意しています。

執筆にあたっては、力学特性や現象を基礎から解説するとともに、自習でも有効に活用できるように、各章に例題や多くの演習問題も設けています。これらには、丁寧に解法を誘導した解答例もあわせて示しているので、より理解が深まるものと思います。また、本書の範囲外ではあるものの、教養として学んでいただきたいという主旨で、鋼構造の研究・設計・施工における時事問題、力学特性・現象を取り上げて、本文とは別に「解説」に掲載しています。

そして、大学や高専の講義を考慮してまとめていますので、内容の難易度や量を適宜選択して時間配分していただければ幸いです。

(以下略)

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東北大学 木村 祥裕 (著)

【目次】
1  はじめに
 
1.1  鋼構造の特徴
 1.2  鉄と建築構造の歴史
 演習問題

2  鋼構造における構造形式と部材断面
 
2.1  建築物における荷重・外力と損傷レベル
 2.2  鋼構造建築物における各種構造形式
 2.3  階層構造
 演習問題

3  鋼材の機械的性質
 
3.1  機械的性質
 3.2  規格と種類
 演習問題

4  引張材
 
4.1  引張材の断面形状(有効断面積)
 4.2  偏心
 4.3  その他の注意事項

5  圧縮材
 
5.1  圧縮材の断面形状
 5.2  単一圧縮材
 5.3  組立圧縮材
 演習問題

6  曲げ材
 
6.1  曲げ材(梁)とは?
 6.2  横座屈
 6.3  軸力と曲げを受ける材(柱)とは?
 演習問題

7  板材
 
7.1  板座屈(局部座屈)
 7.2  板座屈補剛(スティフナー)
 演習問題

8  接合
 
8.1  接合方法
 8.2  ボルト接合
 8.3  高力ボルト接合
 8.4  溶接接合
 8.5  接合部

9  構造設計
 9.1  各種構造設計法の概要
 9.2  荷重と外力
 9.3  一次設計(許容応力度等計算)
 9.4  二次設計
 演習問題

演習問題解答
参考文献
索引

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