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近刊『マイクロ波工学 第4版』訳者序文公開

2021年1月中旬発行予定、『マイクロ波工学 第4版』(David M. Pozar 原著)のご紹介です。

同書の訳者序文を、発行に先駆けて公開します。

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『マイクロ波工学 第4版』訳者序文

原著:David M. Pozar  共訳:永妻忠夫 村田博司 真田篤志

本書は、マイクロ波に関連する分野の研究者や技術者であれば、知らない人がいないほど著名な教科書で、いわばバイブルというべき存在である。3 名の訳者は皆、マイクロ波分野の研究者であり、また大学において、電磁気学、電磁波工学、マイクロ波回路・デバイス工学、マイクロ波システム工学、マイクロ波計測工学などの講義を担当している。日本語で書かれた、マイクロ波分野の教科書を見渡したとき、基礎から応用までを本書ほど包括的に、また高い質でまとめられたものを少なくとも私たちは知らない。

マイクロ波工学の持続的な進展を支える学生や若きエンジニアが、世界中で本書を座右に勉学に励む中、我が国の学生やエンジニアにもぜひ手にしてほしいと思っていたところ、出版社から翻訳の依頼があった。躊躇うこともなく、非才を顧みず翻訳をお引き受けした。

本書のもっとも大きな特徴は、回路、コンポーネントならびにシステムの設計者が、ややもすれば難解な電磁気学と電磁波工学を容易に理解できるよう工夫されており、そして、そのような基盤的な知識に基づいて、きわめて実践的で最新の応用を提供していることである。

携帯電話は第 5 世代に入り、ミリ波とよばれる高周波電波の利用が始まりつつある。今後、Beyond 5G に向けてさらなる超高周波電波の無線利用が検討されている。また、IoT (Internet of Things) の時代に向け、あらゆるモノが無線で繋がり、またマイクロ波を使ったセンサがいたるところに散在し、それらがネットワークを形成する世界が迫っている。その他、自動運転や高度医療、セキュリティの分野においても、マイクロ波技術がますます重要な役割を果たすであろう。

マイクロ波エンジニアにはこれからも活躍の場が待っている。本書が、未来を切り開くマイクロ波分野の学生やエンジニアにとって役立つことを祈ってやまない。

David M.Pozar マサチューセッツ大学名誉教授
永妻忠夫(ながつま・ただお) 大阪大学教授
村田博司(むらた・ひろし) 三重大学教授
真田篤志(さなだ・あつし) 大阪大学教授

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『マイクロ波工学 第4版』
https://www.morikita.co.jp/books/book/2635

原著:David M. Pozar  共訳:永妻忠夫 村田博司 真田篤志

●世界的な名著 待望の翻訳!

1998年に初版が出版されて以来、多くの学生、研究者、技術者に愛読されてきたDavid M. Pozar著「Microwave Engineering」。
本書はその第4版の邦訳である。

本書では、現代のRFおよびマイクロ波工学に適用される電磁気学、電波伝搬、ネットワーク解析、および設計原理といった基礎をわかりやすく説明している。

そして、その基礎を基盤として、各種のマイクロ波回路とコンポーネントの設計といったきわめて実践的な応用を説明している。

基礎から応用までを網羅して高い質でまとめられているので、Beyond 5GやIoTなどこれからの時代に活躍の場が待っている、マイクロ波分野の学生やエンジニアにとって、最良の書籍である。

【目次】
Chapter 1  電磁気学
 1.1  マイクロ波工学への誘い
 1.2  マクスウェルの方程式
 1.3  物質中の電磁界と境界条件
 1.4  波動方程式と平面波
 1.5  平面波の一般解
 1.6  エネルギーと電力
 1.7  境界における平面波の反射
 1.8  誘電体境界への斜入射
 1.9  いくつかの重要な定理
 参考文献
 演習問題

Chapter 2  伝送線路理論
 2.1  伝送線路の等価回路モデル
 2.2  伝送線路における電磁界の解析
 2.3  終端抵抗を接続した伝送線路
 2.4  スミスチャート
 2.5  1/4 波長変換器
 2.6  信号源と負荷との不整合
 2.7  損失のある伝送線路
 2.8  伝送線路における過渡現象
 参考文献
 演習問題

Chapter 3  伝送線路と導波管
 3.1  TEM 波,TE 波,TM 波の一般解
 3.2  平行平板線路
 3.3  方形導波管
 3.4  円形導波管
 3.5  同軸線路
 3.6  接地導体上の誘電体板における表面波
 3.7  ストリップライン
 3.8  マイクロストリップライン
 3.9  横共振の方法
 3.10  波動の速度と分散
 3.11  伝送線路と導波管のまとめ
 参考文献
 演習問題

Chapter 4  マイクロ波ネットワーク解析
 4.1  インピーダンスと等価電圧と等価電流
 4.2  インピーダンス行列とアドミタンス行列
 4.3  散乱行列
 4.4  伝送(ABCD)行列
 4.5  シグナルフローグラフ
 4.6  不連続点とモード解析
 4.7  導波管の励振―電界と磁界の電流
 4.8  導波管の励振―開口結合
 参考文献
 演習問題

Chapter 5  インピーダンス整合と同調
 5.1  集中定数素子による整合
 5.2  シングルスタブによる整合
 5.3  ダブルスタブによる整合
 5.4  1/4 波長変換器
 5.5  多重反射理論
 5.6  二項級数多段インピーダンス整合変換器
 5.7  チェビシェフ型多段インピーダンス整合変換器
 5.8  テーパ線路
 5.9  ボード・ファノ基準
 参考文献
 演習問題

Chapter 6  マイクロ波共振器
 6.1  直列・並列共振回路
 6.2  伝送線路共振器
 6.3  方形導波管空洞共振器
 6.4  円形導波管空洞共振器
 6.5  誘電体共振器
 6.6  共振器の励振
 6.7  共振器への摂動
 参考文献
 演習問題

Chapter 7  電力分配器と方向性結合器
 7.1  分配器と結合器の基本特性
 7.2  T型電力分配器
 7.3  ウィルキンソン電力分配器
 7.4  導波管方向性結合器
 7.5  直交位相(90◦)ハイブリッド
 7.6  結合線路方向性結合器
 7.7  ランゲ結合器
 7.8  180◦ ハイブリッド
 7.9  他の結合器
 参考文献
 演習問題

Chapter 8  マイクロ波フィルタ
 8.1  周期構造
 8.2  影像パラメータ法によるフィルタの設計
 8.3  挿入損失法によるフィルタの設計
 8.4  フィルタの変換
 8.5  フィルタの実装
 8.6  ステップインピーダンス低域通過フィルタ
 8.7  結合線路フィルタ
 8.8  結合共振器を用いたフィルタ
 参考文献
 演習問題

Chapter 9  フェリ磁性コンポーネントの理論と設計
 9.1  フェリ磁性材料の基礎特性
 9.2  フェライト媒質中の平面波伝搬
 9.3  フェライト装荷方形導波管中の伝搬
 9.4  フェライトアイソレータ
 9.5  フェライト移相器
 9.6  フェライトサーキュレータ
 参考文献
 演習問題

Chapter 10  雑音と非線形ひずみ
 10.1  マイクロ波回路の雑音
 10.2  雑音指数
 10.3  非線形ひずみ
 10.4  ダイナミックレンジ
 参考文献
 演習問題

Chapter 11  能動 RF およびマイクロ波デバイス
 11.1  ダイオードとダイオード回路
 11.2  バイポーラ接合トランジスタ
 11.3  電界効果トランジスタ
 11.4  マイクロ波集積回路
 11.5  マイクロ波管
 参考文献
 演習問題

Chapter 12  マイクロ波増幅器の設計
 12.1  2ポート回路の電力利得
 12.2  安定性
 12.3  単一トランジスタ増幅器の設計
 12.4  広帯域トランジスタ増幅器の設計
 12.5  電力増幅器
 参考文献
 演習問題

Chapter 13  発振器とミキサ
 13.1  RF 発振器
 13.2  マイクロ波発振器
 13.3  発振器の位相雑音
 13.4  周波数逓倍器
 13.5  ミキサ
 参考文献
 演習問題

Chapter 14  マイクロ波システム入門
 14.1  アンテナのシステム的な側面
 14.2  無線通信
 14.3  レーダシステム
 14.4  ラジオメータシステム
 14.5  マイクロ波伝搬
 14.6  その他の応用とトピックス
 参考文献
 演習問題

付録
 付録 A:接頭辞
 付録 B:ベクトル分析
 付録 C:ベッセル関数
 付録 D:その他の数学結果
 付録 E:物理定数
 付録 F:一部の材料の導電率
 付録 G:一部の材料の誘電率と損失正接
 付録 H:一部のマイクロ波フェライト材料の特性
 付録 I:標準方形導波管データ
 付録 J:標準同軸ケーブルデータ

演習問題解答
索引



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