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マトリクス構造解析のかんどころ――近刊『よくわかる剛性マトリクス法-Excelによる構造解析入門-』序文公開

2022年4月下旬発行予定の新刊書籍、『よくわかる剛性マトリクス法-Excelによる構造解析入門-』のご紹介です。同書の「序文」を、発行に先駆けて公開します。

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序文

構造設計に携わる方は、剛性マトリクス法という言葉は耳にしたことがあるかと思います。本書は、剛性マトリクス法をはじめて学ぶ学生や実務者を対象とした解説書です。剛性マトリクス法は、構造物を線材の組み合わせとして考え、行列を利用して複雑な構造物の解析を行う手法であり、コンピュータによる一貫計算プログラムの多くはこの解析手法を使用しています。計算プログラムでは、簡単に答えが得られますが、得られた結果の妥当性を検証するためには、解析手法についての理論を知っている必要があります。

そこで、本書では剛性マトリクス法の解析手法を習得することを主眼とし、煩雑な行列演算はExcelを利用し、初歩的な構造力学の知識さえあれば理解することが可能なように、トラスやラーメンの解析方法を説明することとしました。

このほか、本書の解説に準じて作成した、Excel VBAを利用したトラスやラーメンの解析プログラムを以下のURLからダウンロードできます

https://www.morikita.co.jp/books/mid/052631

これを利用して多くの構造力学の問題を解くことにより、力学的感覚を養うことができます。

本書は剛性マトリクス法の入門書ですが、剛性マトリクス法が対象とする線材要素の代わりに面要素を利用して解析を行うと、さらに複雑な形状の解析が可能な有限要素法となります。そのほかにも、振動における固有値問題や弾性体の座屈などでも、行列を利用した解析が扱われます。本書を理解すると、このようなさらに高度な解析の学習もスムーズに進むことでしょう。

 

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著:吉田 競人(名古屋女子大 教授)

複雑でつまずきがちな剛性マトリクス法を、Excelを使ってスムーズに身につけよう!

 剛性マトリクス法の基礎からはじめて有限要素法の初歩まで、トラス、ラーメン解析の豊富な例題を交えながらわかりやすく解説します。複雑な計算はExcelのプログラムを使って実践的に解くことができるよう工夫されているので、行列演算に惑わされることなく、マトリクス構造解析の考え方の基礎をしっかりと学べます。

 これから剛性マトリクス法を学ぶ大学生、設計エンジニアにおすすめの一冊です。


【目次】
第0章 準備:Excelによる行列の計算

 0.1 行列演算の基礎知識
  0.1.1 加法と減法
  0.1.2 スカラー積
  0.1.3 かけ算
 0.2 転置行列と逆行列
  0.2.1 転置行列
  0.2.2 逆行列

第1章 剛性マトリクス法の概要
 1.1 はじめに
 1.2 応力法と変位法
 1.3 剛性マトリクス法の特徴
 1.4 剛性マトリクス法による構造物の解析
  1.4.1 有限要素法と剛性マトリクス法
  1.4.2 剛性マトリクス法の用語
  1.4.3 解法の概略

第2章 剛性マトリクス法の解法
 2.1 ばねの剛性方程式
  2.1.1 要素剛性マトリクス
  2.1.2 2部材の全体剛性マトリクス
  2.1.3 剛性マトリクスの性質
  2.1.4 重ね合わせによる全体剛性マトリクスの作成
 2.2 剛性方程式の解法
 2.3 剛性方程式の一般解法

第3章 トラスの解法
 3.1 座標変換マトリクス
  3.1.1 変形量の変換
  3.1.2 力の変換
  3.1.3 局所座標系における剛性マトリクスの変換
  3.1.4 座標変換剛性マトリクス
 3.2 部材応力マトリクス
 3.3 トラスの剛性方程式
 3.4 トラス剛性方程式の解法

第4章 ラーメンの解法
 4.1 曲げを受ける部材の剛性マトリクス
 4.2 座標変換マトリクス
 4.3 剛性マトリクスの座標変換
 4.4 ラーメン剛性方程式の解法
 4.5 分布荷重
 4.6 軸力が作用する場合
 4.7 部材の変形
  4.7.1 軸力が作用した場合の形状関数
  4.7.2 曲げモーメントやせん断力を受ける部材の形状関数

第5章 有限要素法
 5.1 有限要素法の概要
 5.2 解析方法の概要
  5.2.1 三角形要素の定式化
  5.2.2 要素剛性方程式

付録A 構造解析プログラムの操作
 A.1 操作準備
 A.2 操作方法
 A.3 操作方法の応用

付録B プログラムの詳細
 B.1 プログラムの作成方法
 B.2 プログラムリスト

参考文献
索引

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