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【内容一部公開】基礎から最先端の知見まで――近刊『不動点定理による安定性解析』

2024年7月下旬発行予定の新刊書籍、『不動点定理による安定性解析』のご紹介です。
同書の一部を、発行に先駆けて公開します。



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まえがき

本書では、微分積分学における中間値の定理の応用として得られる種々の不動点定理を解説し、さらに常微分・積分微分・差分・偏微分方程式の解に関する定性的手法を述べる。様々な方程式の安定性解析を学ぶための、また不動点定理を応用するための図書であることを意図し、必要最低限の定義を丁寧に述べ、重要な概念に関し入門的な説明をするように努めている。本書を通して一応の理解が得られるよう、記述は自己完結的(self-containted)な表現となるよう試み、また、定義・定理の内容の簡潔な説明を心懸けている。

前提とする知識は、線形代数学、微分積分学と、大学2年次までに学ぶ微分方程式論、複素関数論、フーリエ級数とフーリエ変換の定義、定理などである。本書では、主に条件が単純・簡潔な問題(初期値問題、境界値問題)に対し、不動点定理・逆写像定理を、どの様に応用すればよいかを解説することを目標としている。さらに例に関しては、未出版の知見を含めて多数を掲載している。その推論に関し不十分な部分があれば、筆者によるものであり、読者の指摘を真摯に受け入れるものである。

(以下略)


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同志社大学 齋藤誠慈(著)

【目次】
第1章 完備距離空間とバナッハ空間

 1.1 線形空間
  1.1.1 線形空間の定義と例
  1.1.2 濃度
 1.2 ノルム
 1.3 内積空間
 1.4 距離空間
  1.4.1 距離空間の定義と例
  1.4.2 完備性
 1.5 位相空間
 1.6 位相と写像の連続性
 1.7 分離公理
 1.8 位相空間のコンパクト集合
 1.9 パラコンパクト集合
 1.10 集合の稠密・可分・全疎性
 1.11 連結性
 1.12 導入される位相
 1.13 バナッハ空間と完備距離空間
 1.14 バナッハ空間のコンパクト集合
 1.15 逆写像定理
  1.15.1 フレシェ微分
  1.15.2 逆写像定理
 1.16 ヒルベルト空間

第2章 不動点定理
 2.1 バナッハの不動点定理
  2.1.1 縮小写像の原理
  2.1.2 ピカールの定理と縮小写像
  2.1.3 最終縮小写像の応用
 2.2 ブラウワーの不動点定理
 2.3 シャウダーの不動点定理
 2.4 シャウダーーティホノフの不動点定理
 2.5 ルレイーシャウダーの不動点定理
  2.5.1 コンパクト写像
  2.5.2 Condensing mapping(有限被覆存在の下限減少化写像)
 2.6 ブラウダーの不動点定理
 2.7 ホルンの不動点定理

第3章 常微分方程式
 3.1 初期値問題
  3.1.1 単独・連立1階常微分方程式
  3.1.2 高階常微分方程式
  3.1.3 初期値問題の一意性
  3.1.4 解の延長可能性と大域存在性
  3.1.5 比較定理
  3.1.6 解のパラメータに関する連続依存性
 3.2 境界値問題
 3.3 周期系の周期解
 3.4 漸近挙動の定義とその応用
  3.4.1 一様漸近安定性の定義と例
  3.4.2 一様漸近有界性の定義と応用例
  3.4.3 漸近挙動性のダイヤグラム

第4章 線形常微分方程式の安定性解析
 4.1 線形系$${x'(t)=A(t)x(t)}$$の定性解析
  4.1.1 基本行列とその応用
  4.1.2 基本行列の計算
 4.2 係数行列$${A(t)}$$のmeasure$${μ(A(t))}$$とその応用
 4.3 係数行列$${A(t)}$$の成分による定性解析
  4.3.1 基本行列の符号
  4.3.2 線形系$${x'(t)=A(t)x(t)}$$のゼロ解の安定性
 4.4 斉次定係数に帰着される変係数線形常微分方程式

第5章 常微分方程式の漸近挙動解析
 5.1 線形系と摂動系問題の解析
  5.1.1 1次式の摂動項
  5.1.2 線形系非斉次式
  5.1.3 線形の摂動項
 5.2 モルガンーナレンドラの定理
  5.2.1 モルガンーナレンドラの定理とその拡張
  5.2.2 モルガンーナレンドラの拡張定理の応用
 5.3 非線形常微分方程式の定性解析
  5.3.1 変分方程式とその応用
 5.4 リアプノフの方法
  5.4.1 リアプノフ関数
  5.4.2 安定性定理
  5.4.3 不安定性定理
  5.4.4 有界性定理
  5.4.5 大域的漸近安定性定理
 5.5 Exponential dichotomy
 5.6 常微分方程式の逆定理
  5.6.1 リアプノフの行列方程式
  5.6.2 一様漸近安定性の逆定理
  5.6.3 一様漸近有界性の逆定理
 5.7 自励系の解析

第6章 準線形常微分方程式の安定性解析
 6.1 準線形常微分方程式
 6.2 漸近安定性
 6.3 周期系の周期解の存在とパラメータ依存性
  6.3.1 周期系の周期解の存在
  6.3.2 パラメータ付き周期系の周期解のパラメータ連続依存性
 6.4 境界値問題
  6.4.1 有界閉区間上の境界値問題
  6.4.2 2点境界値問題
  6.4.3 無限区間上の境界値問題
  6.4.4 無限区間非線形境界値問題
 6.5 常微分方程式の漸近同値性

第7章 積分微分方程式の安定性解析
 7.1 常微分方程式から積分方程式へ
 7.2 線形ヴォルテラ方程式とゼロ解の安定性の定義
  7.2.1 合成積型方程式
  7.2.2 非合成積型方程式
 7.3 不動点定理による準線形積分微分方程式の定性解析
 7.4 常微分方程式の境界値問題から積分方程式へ

第8章 差分方程式の安定性解析
 8.1 差分方程式の問題
  8.1.1 初期値問題
  8.1.2 周期解の存在
 8.2 解の漸近挙動性に関する定義と定理
  8.2.1 一様漸近安定性
  8.2.2 一様漸近有界性
 8.3 線形系および線形摂動系差分方程式の定性解析
  8.3.1 線形系差分方程式
  8.3.2 線形摂動系差分方程式
  8.3.3 準線形差分方程式
  8.3.4 準線形摂動系差分方程式
  8.3.5 修正ニコルソン{ベイリーモデル
  8.3.6 差分方程式の不安定性
  8.3.7 差分方程式の逆定理
  8.3.8 差分方程式の振動性定理
 8.4 不動点定理による差分方程式の定性解析

第9章 放物型・双曲型偏微分方程式の安定性解析
 9.1 有界区間での放物型偏微分方程式の定性解析
  9.1.1 有界区間上の線形熱方程式に関する混合問題
 9.2 不動点定理による双曲型偏微分方程式の定性解析
  9.2.1 $${R}$$上での初期値問題の解の存在と一意性
  9.2.2 $${R²,R³}$$での斉次線形初期値問題
  9.2.3 不動点定理によるR1での線形摂動系問題の定性解析

参考文献
索引

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