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#525 熟達論

陸上競技400mハードル日本記録保持者であり、元オリンピック選手でもある為末大さんの最新著書「熟達論」を読んだ。今回はその際に僕が取っていたメモを載せる形でご紹介したい。

為末さんは、熟達への探求プロセスを5段階に分けて説明されている。

1.遊 全ては遊びから。不規則さを面白がること

「面白い」に理屈はいらない。全身の力を思い切り使えているか?制御を知るのは全力を知ってから。評価者の目を意識せずに全力を出すこと。

2.型 技能の土台

身につけていく技能・技術の土台となるもの。軸とも言いかえられるかもしれない。型は細かい切り分けをせずに流れをとにかく丸呑みする。

3.観 構造の理解→想像。猿真似から本質理解、応用へ

深く観察し、型を部分に分けて互いの関係がわかるようになる。全体の「型」→部分の「観」。結果となる動作に起因する理由や構造を理解する。

4.心 中心を取ること。本質的中心だけ残る→個性へ

構造を理解し見えるようになると、「ここさえ押さえれば上手くいく」という核が見えてくる。これが「心」。中心の確立、自在から自然体が生まれる。ただの脱力は自然体とは言えない。

5.空 自我がなくなり、制約から開放される

所謂「ZONE(ゾーン)」と呼ばれる状態。意識と無意識の関係性。ロジャー・バニスターが破った「1マイル4分の壁」。意識の自分が消えることで思い込みの打破が成される。無意識の「勘」は①時間感覚の変容②感覚の細分化③自分主体でなくなる、ということが起こっている。

以上、僕がざっと読みながら取ったメモの内容である。

個人的に記憶に残ったというか、腑に落ちて反省できたのは「遊→型→観」の流れについてである。僕は一時、「遊」と「観」の2つを重視して「型」をおろそかにしていたと思う。型を細分化して部分的な動作・コツに切り分けて練習し、後からつなげる方法を取ることが多かった。これはある程度「型」を身につけた後であれば有効な手段だったかもしれないが、それを身につける前の選手に実施すると全体の流れがわからないのでぎこちなくなってしまう。なぜこうなってしまうのか、に対する答えをもらえたように感じた。

スポーツであれその他のことであれ、何かしらの技能・技術の習得を実践していたり誰かに指導することのある人には、一度読んでおいて損のない一冊ではないかと思う。

(了)

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