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『証明写真より魅力的、プロ撮影より安くて手軽…10枚を合成「AI顔写真」をプロフィールに使うのはアリなのか』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.9.19


■証明写真より魅力的、プロ撮影より安くて手軽…10枚を合成「AI顔写真」をプロフィールに使うのはアリなのか

AIがプロ並みのプロフィール写真をつくる
アメリカで「AI顔写真」が大きな注目を集めている。手持ちの自撮り写真をアプリに読み込ませるだけで、写真館で撮影したようなプロフィール写真をAIが自動生成する。価格・手軽さ・品質のバランスが非常に良いとして支持を集め、就職活動などのビジネスシーンで使われ始めている。

代表的なアプリのひとつであるAI写真編集アプリ「Remini」は7月、米App Storeの総合トップに君臨した。米大手ニュースネットワークのABCニュースが報じた米国App Storeのランキングでは、7月19日時点でiPhone向け無料アプリのダウンロード数で総合トップを獲得した。

AI写真編集アプリ「Remini」はアメリカではアプリランキングで総合1位なんだそう。
画像生成AIで身近で実用的に使われているユースケースがこの、面接のときなどに使う証明写真をAIに生成させる「AI顔写真」です。

同社によると世界で累計2200万回以上ダウンロードされており、7月20日時点で日別アクティブユーザー数は2000万人を超えているという。

DAU2000万人越えは、生成AIの範疇に留まらず大半のアプリを含めても最上位クラスに位置します。


証明写真機より魅力的、写真館より安くて手軽

作成は手軽だ。すでにスマホにある写真をいくつかアップロードするだけで、バリエーション豊かな写真がいくつも得られる。
Reminiの場合、アプリで最大12枚までの顔写真を送信し、提示されたスタイルの中から好みのものを選択する。すると、AIが指定のスタイルに沿った仕上がりの新たな写真を生成する。

そして実際に就職に使った実例では、入社後も証明写真を生成AIで作ったことに誰も気づいていないそう。「盛る」とは違う、ウソにならない範囲で好感度を高めて仕事を獲得するという実利につながるAIの活用法がアメリカではすでに広まっています。


他者が使う競争環境の中でAI利用が加速する

まずは書類選考から始まり、経歴から実力や性格を類推しますが、ルックスも採用担当者の印象に影響を与えます。

ルッキズム批判はありつつ、容姿だけでなく雰囲気、センス、清潔感など写真だけでも伝わる情報はたくさんあります。

少しでも他者より優位に立つことを求められる就職活動において他者がAI顔写真を使い好感度を高める努力をするならば、自分も使わないと損をするという状況にすらなっているとも言えます。


AIの抱える各種問題はあるが、時間と慣れが解決する

瘦せ型や白人風など美醜の価値観バイアスの問題、指や歯を上手に描けない問題、人間の写真家よりは瞬間を切り取る精度が低い問題など、画像生成AIならではの問題はこのAI顔写真のサービスでも抱えています。

しかし多くは時間が解決するでしょう。そしてユーザーの使い方と工夫で解決できる部分もあります。


品質と価格のバランス、そして気軽さ

当然、プロの写真家が撮影する本格的な顔写真よりは、完成度で劣る。だが、若い求職者たちが求めているのは、品質と価格のバランスだ。まだ学生で実入りも少ない場合には、就職活動を助ける強力なツールになるだろう。

さまざまな写真がスマホに置き換えられている中、証明写真は未だに街中の専用マシンがあまり台数を減らさずに稼働しています。

これが証明写真用生成AIの登場をきっかけに、ようやくスマホに移行する兆しが見えてきました。

アプリ自体を無料でダウンロードした後、1週間は無料で使える。気に入ればサブスクリプションを購入する形となる。日本のApp Storeを経由する場合、現時点で料金は週あたり720~1500円だ。適切に生成することさえできれば、証明写真機よりも魅力的な写真を、写真館よりも安価かつ手軽に入手できる。

アプリ運営側も生成AIに払うコストがあるため完全無償とはなりません。しかしもともと証明写真マシンにお金を払っていた市場なのと、就職がかかっているという実利のある場面や、これから10年使うパスポートに載せる写真となれば、お金を払うことは納得できます。

学生に限らず社会人でも、精神的な利点から気軽に利用しやすい。自撮りや証明写真では、何度もカメラの前で撮り直し、いまひとつ決まらない表情に悩むことも多い。AIにいくつかのパターンを生成してもらい、気に入ったものを選ぶほうが、ずっと気軽に取り組むことができる。

証明写真マシンの撮り直しのしづらさや、証明写真を撮るためだけの恰好やメイクをしていかなければならないメンドウさや気恥ずかしさもあり、自宅で何度でも撮り直せて、AIがきれいに仕上げてくれる便利さは本当にありがたいと感じる人が多そうです。


「証明」写真のAI加工はアリか?

もちろん注意点はある。加工が行き過ぎては、証明写真が用をなさなくなってしまう。また、パスポート写真などに利用してしまうと、法的な問題を生じかねない。AI顔写真はどこまで加工が認められるのか、さらなる議論が必要になるだろう。

本人だと証明するための顔写真が「証明写真」なので、本人とかけ離れた見た目になっては意味を成しません。

しかし、髪型やメイク、服装や背景はAIでなくても変更できますし、ライティングによって全く異なる印象を与えることができるのは写真の特性そのものでもあります。

AIと名乗らなくても、「フィルター」と呼ばれる写真撮影&加工アプリはもともとたくさんありました。目を大きくする、色白にする、あごを細くするなどなど、とても本人だとは言えない加工が施されるアプリは多数あります。

対して、少なくとも「本人」だと思える範囲で、好感度を高めるように修正したり、服装や髪形を自在に変更したりできる「Remini」の目のつけどころは見事です。

<個人の識別が容易にできないとされる例>
・マスクを着用している
・顔や目が髪の毛や衣類・スカーフなどで隠れている
写真を修正、合成している
・写真が明るすぎる、もしくは暗すぎる
・歯を見せて笑っている など

運転免許証の写真は、場所によっては持ち込みが可能です。
個人の識別ができるかどうかなどの基準で、持ち込んだ写真を使ってもらえるかが決まります。

基準の中に「写真を修正、合成している」とNGと明記されており、文字通りに読むなら「Remini」のような生成AIで作成した写真は使えないことになります。

しかし持ち込んだ写真を使うかを判断する警察官が、生成AIで作ったものだと気づかず、本人だと証明するのに問題がない映りだと考えれば、おそらくそのまま使われるのではないかと思います。

就職や転職のシーンでも、フルリモートワークの仕事の場合だと、実際に本人と会うことがなく雇うこともあります。リアルに顔合わせする人たちも、履歴書に貼ってあった写真とは「結構違う」人もそれなりに多いため、写真と本人の多少のギャップは就職シーンでは大きな問題にはなっていないのが現実だろうと思います。

アメリカでは証明写真のAI化が急速に広まったというニュースではありますが、日本でも間違いなく普及するでしょう。

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