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『アマゾンの「Project Kuiper」、衛星の初回打ち上げに成功。有事の海底ケーブル切断への対策として重要性が高まる』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.10.11


■アマゾンの「Project Kuiper」、衛星の初回打ち上げに成功--「Starlink」対抗

 Amazonが、軌道上の衛星によってインターネット通信を提供する「Project Kuiper」について、大幅に延期されていた衛星の初回打ち上げを完了した。

イーロンマスクのStarlinkがウクライナ戦争で成果を上げているという報道があったのは1年前の開戦直後でしたでしょうか。

その後、衛星通信そのものの話題はあまり挙がっていなかったように思いますが、一方ですごく報道が増えたのが「海底ケーブルの切断」のニュースです。


台湾有事→海底ケーブル切断→日本のインターネット全滅

2月には台湾で本島と島を繋ぐケーブルが何者かによって相次いで切断され、島の通信が途絶える事態も起きました。中国の関与などはわかっていませんが、台湾の有事の際は、海底ケーブルも攻撃対象になる可能性が高いと指摘されています。

ウクライナ以後、台湾有事がリアリティを持って報じられることが多くなってきました。その報道量に合わせて、インターネット通信網の要である海底通信ケーブルの脆弱性が報じられる回数がものすごく増えたように感じています。

「海底ケーブル自体が切れるとビジネスで使っているオフィスアプリケーションが使えなくなる」

・・・そういうレベルの問題ではありません(笑)
金融・決済も物流もすべて止まります。オフィスが使えない、エクセルが使えない、じゃあ済みません。


海底ケーブルはたった475本(2020年12月時点)

 2020年12月時点での世界の海底ケーブル数は475本となっている。ただこの数字は、新しいケーブルが完成したり、古いケーブルが引退したりするため変動する。

インターネットは世界中をメッシュ状のネットワークでつなぐことで単一障害点を作らず、1か所がやられても通信が維持できるようにする軍事技術が元だっただということをご存じの方も多いと思います。

しかし実情は、たった475本の海底ケーブルが全通信の99%を担っています。


2本、4本切れただけで大混乱

08年、台湾沖で発生した地震の影響で台湾の海底ケーブルが2本破損し、使用できない状態に陥った。さらに台湾とケーブルがつながっている中国や香港、フィリピンなどでデータ通信が遮断され、タイやマレーシアなどの東南アジアの国々でも通信障害が発生。完全に修復するまでには数週間を要した。

 台湾以外でも、海底ケーブルの問題は発生している。23年1月末時点でベトナムの海底ケーブルは5本中4本が使えない状態になっている。ベトナムの現地メディアは「現在もケーブル一本のみでインターネット接続を行なっているために、通信速度が大幅に遅くなって、経済活動にも大きな影響を及ぼしている」と報じている

2本や4本というヒト桁の破損本数で大ダメージが生じるのが海底ケーブルの実情です。そしてそれは実際にもう起きています。

現地時間の2023年8月6日(日)、世界最長の海底渓谷のひとつで地滑りが発生し、アフリカにインターネットサービスを提供するための重要な海底ケーブル2本が切断されました。これにより西アフリカの海岸沿いではインターネット帯域幅が激減する事態となり、アフリカのインターネットユーザーが大混乱に陥っています。

アフリカでは海底での地滑りで海底ケーブルが2本断線した事故が、つい先日8月6日に発生しました。

地震などの自然災害や、漁船がひっかけて断線してしまう事故もありますが、いま心配されているのは有事の際に故意に切断するリスクです。


有事で真っ先に狙われる海底ケーブル

 台湾をめぐり、同国側についた米国が中国と紛争になった場合、米国の同盟国である日本に対し、中国が情報封鎖を仕掛けてくる可能性が指摘されている。海底ケーブルは真っ先に標的になる。

 世界規模の戦争や地域紛争における軍事衝突では、相手国の通信の遮断は常とう手段である。かつて明治期の日本軍は、中国旅順を封鎖するために、ロシアが敷設していた海底ケーブルを切断した。第一次世界大戦が勃発すると英国は北海にあるドイツの海底ケーブルを切断した。

有事の際には海底ケーブルが真っ先に狙われることはすでに多くの軍事専門家が指摘しているところです。簡単に切断でき、復旧に数週間以上かかり、与えるダメージは絶大。しかもケーブルは長いので全体を防御することが難しい。攻める側にはとても有効なターゲットです。

クラウドサービスの多くの情報基盤を、海底ケーブルでつながる米国に依存している日本は、海底ケーブルの切断によって、甚大な損害を被ることは間違いない。

日本の場合、アメリカのクラウドサービスに接続していることが非常に多いので、アメリカまでの通信を断絶させてしまえばいいという狙いやすさもあります。

もし通信が断絶しても、最低限のインフラが活きている状態にすることが必要です。それは決済の期日猶予の法整備などソフト面でできることもありますが、別の通信手段を確保するということも対策になる場合があります。

その対策のひとつが、今回ご紹介しているAmazonの、軌道上の衛星によってインターネット通信を提供する「Project Kuiper」です。


バックアップとしての衛星通信の重要性

 Project Kuiperは、Elon Musk氏のSpaceXが手がける衛星インターネット「Starlink」に対抗する新たなサービス分野として、Amazonが構築を目指す計画だ。Starlinkはすでに、数千の衛星を軌道上に乗せ、複数の国で100万を超える顧客にインターネット接続を提供している。Amazonの最高経営責任者(CEO)であるAndy Jassey氏は、Kuiper衛星サービスは今後の事業の中核になると述べている。

今回打ち上げられたのは2基の試験衛星ですが、今後6年間で3200基以上の建造と配備が計画されています。

日常的に衛星通信を使うことは想定されていないはずですし、一般ユーザーが使うというよりも、重要な社会インフラを有事の際にも維持し続けるためのバックアップ回線としての位置づけになるはずです。

最近のテクノロジーは通信ありきです。スタンドアロンで動作するものはほとんどありません。そのため通信が使えなくなると機能しなくなります。

海底ケーブルをすべて防御することは不可能ですので、衛星通信など別の通信手段を併せ持っておくこととが非常に重要になります。

サムアルトマンがいうように、「いかなる政府管理課にも属さない世界的な通貨」が使われるサイバーワールドの最大の弱点は通信遮断です。いわゆるメタバースが実現されるためにも、衛星通信というバックアップ手段は今後ますます重要性が増します。

ただし、宇宙空間も「ゴミ」が増えすぎて大変なことになってはいますが。

「テクノロジー依存から脱却して昔ながらの生活に戻そう」運動が起きないことを切に祈ります。

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