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『「〇〇風」はアリ?画像生成AIの著作権侵害の訴えの大半を却下する米国裁判所の判断』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.7.21

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■生成AI裁判の重要なUSでの裁判所の判断。アーティストが画像生成AIを著作権侵害で訴えたものを大半を棄却する意向

生成AI裁判の重要なUSでの裁判所の判断。アーティストが画像生成AIを著作権侵害で訴えたものを大半を棄却する意向。「裁判官はまた、アーティストたちの名前を使ったテキストプロンプトに基づいてシステムが生成した画像が、彼らの著作権を侵害しているという主張が成功する可能性は低いと述べた。

「アーティストが作成した画像とAIシステムには実質的な類似性がないからだ。」

ただ、SDはオープンソースなのだから、調べることができるはずなので、もっと直接的に侵害している証拠を出して裁判し直せということらしい。データセットから訴えている人の著作物侵害を直接出していると言い切れないと。

「ダ・ビンチ風に描いて」と生成AIにプロンプトで指示したとしても、アーティスト本人が著作権侵害で訴えることは難しいだろうというアメリカの裁判所の判断が示された模様です。

もとはロイター通信の記事です。

これから生成AIで画像がたくさん作られていく中で非常に重要な判断になります。生成AIを使った人が明らかに「〇〇風」を意図してプロンプト指示をしたとしても著作権侵害で訴えられないとすれば、画風指定で作れる高クオリティの画像も、そのプロンプトテクニックも、より広く使われるようになり生成AI画像の普及の大きな後押しになるはずです。

商業グラフィックなど実用性を求められるシーンでは生成AIの画像がより普及しそうです。

対してグラフィックアーティストは自分の画像を学習させないようにするための対策や運動を強める人も増えるでしょう。


確定判決が出たわけではないことに注意

今回は裁判所が意向提示したにすぎません。また「大半は却下する」と言ってはいますが、すべてを却下するとは言っていません。

U.S. District Judge William Orrick said during a hearing in San Francisco on Wednesday that he was inclined to dismiss most of a lawsuit brought by a group of artists against generative artificial intelligence companies, though he would allow them to file a new complaint.
ウィリアム・オリック地方裁判官は水曜日のサンフランシスコでの公聴会で、アーティストのグループが生成人工知能会社に対して提起した訴訟のほとんどを却下する傾向があると述べた

そのため、このロイターの報道および今回のウィリアム・オリック地方裁判官の発言のみで確定的な判断はするべきではありません。

それでも大きな方向性を示されたという意味では影響力がある発言です。


自分の作品が実際にトレーニングに利用されたことを示す証拠の提出が不十分

なぜアメリカの裁判所が生成AIでアーティストを名指ししたプロンプトでの画像生成をしても、そのアーティストが著作権侵害で訴えることが難しいのかの要点をわかりやすく解説されているツイートです。

生成AIと著作権侵害に関する米国裁判、およそAI訓練に著作物を無断利用しても著作権侵害になりません、という話ではなく、本件では、
①そもそもAI訓練への無断利用により権利侵害された/出力結果により権利侵害されたと主張する著作物がどれか特定できてない、
②自分の作品がAI訓練に用いられたことを示す証拠の提出がない/不十分
であるため請求が認められない方向のようです。

(概要)
-アーティスト達が、Stability AI社、Midjourney社、DeviantArt社を提訴
-原告の主張は、インターネットから何十億もの画像をスクレイピングし、ステイブル・ディフュージョンに自分たちのスタイルを含む独自の画像を作成させて、自分たちの作品を許可なく使用し著作権を侵害したというもの
-つまり、生成AI訓練への著作物の無断使用が著作権侵害となるかが争点になる予定だった

-しかし、そもそもどの著作物が侵害されているかを原告が特定できていない+主張を裏付ける事実(自分の作品が実際にトレーニングに利用されたことを示す証拠)の提出が不十分であり、このままだと請求の大部分は認められない見込み

-なお、判事は、アーティストたちの名前を使ったテキストプロンプトに基づいてシステムが生成した画像が、アーティストの著作権を侵害しているという主張が成功する可能性も低いと言及

-つまり、「ダヴィンチ風に描いて」的な指示文言に基づき出力されたアウトプットの著作権侵害性も問題になったと思われる
-これが否定された理由も、「およそ一般的に~」という話ではなく、そもそも本件では「アーティストが作成した画像とAIシステムが作成した画像は実質的な類似性がない」で切られそう

もし訴えるなら、権利侵害された元の作品を特定したうえで、生成AIの学習(訓練)にその作品が使われたことを証明する必要があるということのようです。

画風が似ているけれど構図が全く違うという場合は「元の作品」を示すことが難しいでしょう。また学習データを非公開としているAIの場合は調査自体がAI開発会社の協力を得ない限り自力では難しいはずです。


消費者やクリエイターへの感情面の配慮は必要

著作権侵害で訴えられる可能性がかなり低くなったとしても、生成AIで作られた作品を見た消費者が「パクリだな」と感じて反発すれば、結果的に生成AIを使ったビジュアル作成はできなくなります。

プロンプトを開示することは実際あまり多くないので「〇〇風」と名指しして作成した事実は漏れないかもしれませんが、結果的に出力された画像が誰かの作品に似ていれば、消費者は反発しますしクリエイターもSNSなどで抗議をするでしょう。

集英社も「基本的に法務部に確認しながら適法の範囲内でやっている」としていたものの、消費者の反発があってグラビア写真集の販売を中止しました。

また、実在の人物に似ているという著作権以外の問題にも広がってしまいました。

適法かどうかも当然重要ですが、消費者やクリエイター、もしくは偶然似てしまった実在の人物などの感情を害するかたちになると生成AIは使えなくなります。

法的な面で使いやすくなったとしても、消費者やクリエイターなどへの感情面の配慮は必要です。


AIアートクリエイターの心理的安全性が増す

生成AIで作られたことを明示しないかたちで使われる広告ビジュアルなどは今後ますます増えるでしょう。

パクることを目的としなくても、「〇〇風」という命令を入れることで狙いの絵柄を出すことは生成AIのテクニックとしてよく使われています。そして多くの場合は「〇〇風」指示を入れても既存作品そのままの絵が出てくることはありません。

先述の通り感情面の配慮は必要ですし、完全に何かに似たものを世に出すことは避けるなど配慮は必要ですが、少なくとも法的にはプロンプトに「〇〇風」を明示しても違法性は問われないとしたら、AIクリエイターの心理的安全性は高まります。

米国の一部での判断でもありますが、今回のウィリアム・オリック地方裁判官の発言は、AIクリエイターが活動しやすくなり、AIが生成した作品を目にする機会がますます増える大きなきっかけになるのだろうと思います。

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