『生成AIによる著作権問題、日本弁理士会が論点整理。誤解も多い。』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.8.8
■生成AIによる著作権問題、日本弁理士会が論点整理
生成AIはすごくて便利。
なのですが、著作権やプライバシーの侵害、努力の結晶をAIの学習材料に使われる不快感、その結果として仕事が奪われる・単価が下がるなどの実害影響も懸念されているのはご存じの通りです。
さまざまな論点がある中で、今回は日本弁理士会が著作権に関しての論点整理の説明会を行いました。
生成AIは新しい技術なので法整備が追いついていないと思われがちですが、実は整理されいる面や意外に感じる法律上の論点がいくつかありました。
自分で作った創作物には当然、著作権が発生しているという先入観
今回の日本弁理士会の説明会では、そんな感情面とは別に、法的な面で冷静に整理しています。
まず法的な面だけで言うと、ネット上で公開されている創作物に著作権が発生しているかがひとつの争点とのこと。著作権が発生していないものを学習材料に使っても、当然著作権侵害には当たりません。
「著作権が成立するか」「類似性が認められ著作権侵害が成立するか」は専門家でも判断が難しく、かつ裁判でしか判断が下されないため、「自分の著作物が生成AIに無断で学習されている!」と感じたとしても、
・自分の作品に著作権が発生しているか
・生成AIがその作品を学習材料に使っている証拠はあるか
を裁判で立証しなければならないのが現状です。
学習対象を明示すると損、使用した生成AIの種類を開示すると損な現状
と、学習対象を明示する透明性が求められている一方、開示しなければ炎上もしないというのが実情です。
サントリーが「C.C.レモン」を生成AIで擬人化したプロモーションでも
としています。
Stable Diffusionを中心に無断学習が非難されがちな生成AIがある中では、使用した生成AIを明らかにしないことが炎上対策になっています。
Zoomが会議内容をAIの学習に利用する旨を利用規約に明示したところ炎上しました。こちらは著作権ではなく情報漏洩やプライバシー侵害を心配してのことです。
しかし、
GoogleはMeetをおそらくAIの学習に利用していますが、それを明言しないことで炎上を回避しています。
透明性を高めると炎上する。AIは使いたい。なので秘匿する。
透明性高く情報開示したところにAIが嫌いな人が叩きに行く。
かなりいびつな分断状況です。
日本の著作権法では、AIによる著作物の学習利用に権利者の許諾は原則不要
著作権法に詳しい寺内康介弁護士によると
と整理しています。
海外では著作物の無断学習について訴訟が起こされていますが、日本とは法律が違うことが原因です。
日本では違法ではないことでも、海外で訴訟が起きれば日本でもSNS上で炎上騒ぎになることもしばしばです。日本ではAI学習を認める明示規定があることをあまり知られていないようです。
Getty ImagesがStable Diffusionを提訴したのは利用規約違反の件
大量の画像素材を提供するGetty ImagesがStable Diffusionを提訴というニュースが報じられました。Stable Diffusionが無断でGetty Imagesの持つ画像を学習したことについて
と「著作者に無断でかき集め、データセットとして使用したこと」がGetty ImagesがStable Diffusionを提訴した争点だと書いていますが、これはミスリードです。
裁判上の争点は「ライセンス取得せず大量の画像を使用した疑い」です。画像を有償で提供するビジネスモデルであるGetty Imagesは「Web上に公開しているサムネイルを、利用規約に想定していない「AIの学習」に使用するのはライセンス違反である。」として提訴したわけで、著作権侵害で提訴したわけではありません。
生成AIの利用方法の整理が改めて必要
今回の日本弁理士会の説明会は著作権に関連して整理していましたが、法律面とは別にクリエイターを中心に感情面での反発が生まれているのも事実です。
法律で許されているからといっても、感情面のケアなしに商用利用はしづらく、企業などが炎上を回避するために保守的になることでテクノロジーが社会に浸透しなくなります。
法的リスクを回避するのはもちろん、炎上リスクを下げるためにも、何がよくて何がダメなのかのユースケースの整理を具体的に例示するようなものがAIの業界団体や経済団体から示されることが今期待されます。
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