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『中国テック事情:死者復活だけじゃない、ディープフェイク・ビジネス』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.5.30

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■中国テック事情:死者復活だけじゃない、ディープフェイク・ビジネス

ディープフェイク技術を応用して亡くなった家族を再現する。中国で急成長中のこうした新しい市場について先日レポートした。数千人もの悲しみに暮れる人々が、死んだ親族のデジタル・アバターに会話や慰めを求め始めている。
(中略)
死者のクローン作成に使われるのと同じテクノロジーが、他の興味深い方法でも使われているということだ。

先月も取り上げた、中国で勃興しつつある「AIで死者を復活させるサービス」。

ChatGPTなどチャットAIと、精巧なリップシンクができるAIディープフェイク映像技術の進化によって実現が可能になりつつあるものですが、死者を蘇らせる目的は「悲しみを癒すため」だけではない、というニュースです。

中国のAIテック企業はどんなニーズに応えようとしているのでしょうか。


墓前で故人に話しかける文化の現代版

墓所や葬儀中、あるいは記念碑の前で死者に語りかけるといった中国の文化的伝統を現代風にアレンジしたものだ。昔から中国人は、亡くなった愛する人に近況を伝えるのが好きだった。しかし、もしその死者が言葉を返せるとしたらどうだろうか?

墓参りをするのは世界中共通の文化だと思いますが、中国では墓前で故人に話しかけるのだそうです。

葬儀や墓前で故人に話しかけた時に、故人が返事をし、会話ができたらいいのではないか、というニーズをAIで実現しようとしています。

個人的には、大切な人を失ったとしても、まだ生きていて一緒にいるかのように四六時中AIに話しかけるか?には若干違和感を感じていましたが、朝に仏壇であいさつと少しの会話をしたり、お盆の墓参りで年に1回会話をする光景はあり得るなと感じました。


歴史上の人物と会話するため

「AIによる復活」事例の約3分の1は、死んだ中国の作家、思想家、有名人、宗教指導者のアバターを作ることだったと教えてくれた。このようにして生成された製品は、個人的な弔いのためではなく、より公的な教育や追悼を目的としている。

個人的なつながりはない、歴史上の人物や有名人などを現代に蘇らせることで、会話を実現させるというニーズもあります。

教育やエンタメとして用いられるもので、確かに歴史の授業などで役に立ちそうです。教科書で勉学・史実として教えられるよりも、たとえば織田信長さんご本人から直接当時の物語を教えてもらった方が印象に残るでしょう。

とはいえ、亡くなって間もない人を復活させた場合は反発も多くなることが予想されます。

AIは見た目と話す内容をソレっぽくできても、口調や息遣いなどを再現させるのは現状困難です。生前の姿を知っている人が存命のうちにAI死者復活をやると、本人と違うと実感しがちになるはずです。

時代劇や大河ドラマ、伝記映画などで役者が演じる場合においては「死者への冒涜だ」という反発が来ない範囲のエンタメに昇華できてはいますので、AI死者復活を歴史上の人物に当てはめる場合も、役者が演じて許される表現に収めることが大事なのかもしれません。


自分の物語を後世に伝える

92歳の中国人起業家の依頼を受けて同社が制作したアバター映像だ。この起業家の男性は自分の人生を記録した本を書いており、アバターはその本のすべてを大規模言語モデルに読み込ませることで制作された。

自分の成した偉業を後世に伝えることを目的として、自分のAIクローンを生前から作っておくことを目的としたニーズもあります。

AIクローンが作れた暁に実現されることは、「死後も偉人と話せる」というのは公人を蘇らせるのと同じです。本人が監修しているところが大きな違いで、「死者への冒涜だ」と周囲が問題視することがなくなります。

書籍を多く残している人は考え方を学習させやすいですし、映像がたくさん残っている人であれば将来しぐさや口調も学習できるようになるかもしれません。

現代ではブログやSNSへの投稿も重要な学習素材となりますので、今後自分を死後も残しやすくなるでしょう。


親が特定の年齢の子どもの記録を残す

親が特定の年齢の子どもの記録を残すために写真撮影にお金をかけるように、高価なAIアバターを作るのだ。
(中略)
その子をデジタル化してしまえば、いつでもどこでも12歳のときの我が子と話すことができるのです

生きている人の、その時点での記録として残す。という目的でもAI死者復活の技術で実現できます。決して亡くなる必要はないわけです。

我が子が歳を重ねるごとに、毎年1体ずつ、その時点に留めたAIアバターを残しておくことを、記念写真のように行うというものです。

個人的にはちょっとグロテスクにも感じますし、子ども自身が大きくなった時に「当時」の自分が残されていることを快く思わないような気もするのですが、人それぞれかもしれません。


サ終で「死者が2度死ぬ」事態を避けるべきか

同意の問題から著作権の侵害に至るまで、こうした利用に関わる倫理的な課題について、もっと多くの疑問に答えなければならないこともまた確実だろう。

著作権、人格権、倫理問題など、死者をAIで蘇らせることには課題があることは間違いありません。とはいえニーズがあることも確かで、技術の進化に伴ってより精巧なAIが作られていくことも止められない流れだと思います。

一方、死者をAIで蘇らせることをビジネスとして、民間企業、特にスタートアップベンチャーが手掛けている現状、経営基盤がぜい弱な分「サ終(サービス終了)」のリスクが高いことも憂慮します。

特に、家族や大切な人を失った悲しみを慰めるために作られたAIが、サ終によって再び失われてしまう「死者が2度死ぬ」ことのダメージは計り知れないだろうと思います。親が特定の年齢の子供の記録を残す場合も、AIへの思い入れが強いぶん、スマホで撮った写真がクラウドサービスの終了で全部消えた!以上のダメージを受けるはずです。

死者にまつわるAIビジネスの場合、何らかの業界規定を検討すべきだろうと思います。本人の同意の取得や著作権など権利侵害の防止、そしてサービスの持続性の担保が課題ですが、映画で偉人を映像化するくらいの自由度も必要です。

進化が速いAI業界では、つい行き過ぎたことが起きがちですが、みんなの感覚を少し超えつつ戻りつつを繰り返しながら、よいバランスポイントが見つけられることが必要です。

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