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『JASRAC、メタバース上のバーチャルライブ規定を告知も複雑で要相談。シンプル化を是非』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.1.17
■JASRACがメタバース上の有料バーチャルライブにライセンス料が発生することを明言 ロイヤリティ価格の具体例も公開
3次元の仮想空間(メタバース)において、有料のバーチャルライブをストリーム形式で配信する場合はインターネット上で音楽を利用する場合と同様のライセンスが発生する。一般社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC)は、メタバース空間内での音楽利用について、その姿勢を明らかにした。
「メタバース×音楽」はメタバース普及の鍵のひとつだろうと思います。
個人でも企業でもワールドが「3Dホームページ」的に簡単に作れるようになりつつある一方、制作したワールドへの集客が大きな課題になります。
既存ワールド上での音楽イベントによるメタバースワールドの認知拡大・集客施策や、3Dアバターの身体性によるライブとの相性の良さから常設型音楽専用ワールドが想起しやすい企画であることなど、今現在メタバースに音楽が持ち込まれやすい状況があると見ています。
そんな中、JASRACからメタバース上で音楽を使用する際のガイドラインが昨年2022年12月26日に示され、公開から半月ほど経っていますが改めて窓の杜で記事として紹介されました。
■余談:メタバースのワールドは検索できない課題
「メタバースのワールドは検索できない」というのが大きな課題です。
だからこそ音楽ライブで集客する動機が今は増している面もあると思います。
いわゆる「ホームページ」がWeb1.0黎明期に乱立した時も検索できないことが課題になりましたが、比較的すぐにソリューションが提供されました。初期Yahoo!のディレクトリ型による人力・手作業での整理から始まり、今ではテキストクローリングbot型による自動化とAIによる分析が進んでいます。
メタバースを検索可能にするために、最初はディレクトリ型に近い人力整理から始まるのだろうと思いますが、現在はそれすらなく、clusterやSpatialなどのポータルでの検索はタイトル名と若干の説明文をフリーワード検索させるに留まっています。
↑Spacialで「Museum」と検索した例。ワールドのタイトルに「Museum」という文字列が入っているものが引っかかるのみ。
将来はワールドの参加者で探せたり、ワールドの中で無数に開かれているイベントが検索できるようになったり、ワールドの中で起きた事件事故などをニュースとして記事化された内容から検索可能になるなど、検索機能はさまざまなかたちで充実していくと予想しています。
以上余談でした。
■規定は示しているが複雑。まずは相談しましょう。
さて話を戻します。
メタバースで音楽を使用するには手続きが必要です。
なんとなく「インターネットでは音楽を流せない」「ものすごい金額を払わないといけない」「手続きが超大変」「個人や素人には無理」というイメージがあるかもしれません。
JASRACの管理楽曲については今回のようにJASRACが手続き方法の指針を示しましたので、適切に手続きをすれば正規にメタバース上で音楽を流すことができます。
今回JASRACは大きく2つの例を挙げています。
●メタバースでバーチャルライブを行う場合
「動画配信」の規定に基づきライセンスいたします。
有料のバーチャルライブをストリーム形式で配信する場合の使用料の例
→月間の情報料および広告料等収入の2.1%
(最低使用料5,000円)
●メタバース上の店舗でBGMを利用する場合
「音楽配信」の規定に基づきライセンスいたします。
広告やアバターアイテム課金などによる収入がある
サービス内でBGMをストリーム形式で配信する場合の使用料の例
→月間の情報料および広告料等収入の3.5%
(最低使用料5,000円)
パーセンテージや最低使用料金を明示したことで具体的なイメージや試算がしやすくなったのは良い点だと感じます。
ただし上記の例示だけではわからないところも実は多々あります。
メタバースでバーチャルライブをやろうと企画した際は「動画配信」の規定に基づきライセンスいたします。とありますが、この動画配信の規定だけでもかなり複雑です。
「メタバースでの音楽利用について」のページの簡素さと比べて情報量が多く、またフォントなどが非常に固く読みづらい印象も相まって、動画配信の規定ページを開いただけで諦めてしまうかもしれませんw
いくつかケースを挙げてみたいと思います。
Q. お金を払えばどんな楽曲でも使用可能なのでしょうか?
答えは「違います」です。
(1)外国作品をご利用になる場合
JASRACにお支払いいただく使用料のうちの「基本使用料」は、日本国内の権利者である音楽出版者が指定した額(指し値)となります(一部例外曲あり)。申込前に音楽出版者にご連絡いただき、基本使用料額をご確認ください。
(2)第三者が制作した音源をご利用になる場合
市販CDやダウンロードした音源などをご利用になる場合は、JASRACへのお申込みの前にレコード会社・実演家などの許諾が必要です(著作隣接権)。直接レコード会社へお問い合わせのうえ、許諾を得てください。
に掲載されています。
そもそもJASRAC管理楽曲以外、たとえばNexToneなど別の管理団体の管理楽曲や海外の楽曲はJASRACへの申告と支払いで使用することはできず、個別に当該団体への申告や相談が必要です。インディーズ楽曲は権利者との個別交渉となります。
また事前に利用方法の許諾を得ないといけないケースもあります。楽曲の改変など著作者隣接権の管理はJASRACの管轄外だからです。
Q. メタバースライブを「参加無料」で開く場合はライセンス費用は必要でしょうか?
答えは「必要」です。
運営が収益を得ていなくても、JASRACが規定する「非商用配信」には該当しないため申告と支払いが必要です。
Q. サブスク型メタバースライブプラットフォームの場合、「月間の情報料および広告料等収入の2.1%」の規定でいう「月間の情報料および広告料等収入」は、その月の会員全員からの収入が分母になるのでしょうか?それとも当月に開いたライブで流した音楽に接触した人数分の支払いで良いのでしょうか?音楽制作者の権利を保護する目的なら、接触人数を分母にするのが理念に合致していると思うのですが・・・
答えは「相談ください」です。
でもおそらく「サブスク収益全額を分母にする」というところから交渉がスタートするはずです。
他にも当日のメタバースライブをアーカイブ配信する場合や、メタバースプラットフォームとしては音楽ライブ以外にさまざまな収益源を持っている場合に売上すべてを分母にするべきかなど、相談や個別交渉で決定する部分も現実的には多々あります。
このほか、ゲーム、ミュージックビデオ配信、カラオケ配信など、メタバースで行われるさまざまな音楽利用にライセンスしています。詳しくは、担当部門へご相談ください。
JASRAC自身も「ご相談ください」としていますので、メタバースで音楽を扱おうとする場合は事前に相談するのが吉です。決して黙ってコッソリやってはいけません。
■ガイドラインのシンプル化を是非
メタバースライブが動画配信の規定の遠用になっていて、その動画配信の規定もオンデマンド配信が出始めたころの規定から積み重ね改められ続けて今に至る非常に複雑な規定になっていることから、正直「相談するしかない」というのが実情です。
JASRACのサイトの読みづらく威圧的にも感じるフォントの使い方も含めて、もっと音楽の利活用が進みやすく支払いやすい、シンプルでわかりやすい規定や手続き方法に改めることが必要だと改めて感じました。
web3の非中央集権化時代が来つつある現在、JASRACのような超中央集権管理団体は目の敵にされがちですが、窓口の一元化で権利者との個別交渉が不要だという利便性はまだあると思います。
web3テクノロジーとUXの進化によって各音楽権利者がJASRACのような中央集権団体を通さずとも適切でより自由に楽曲利用を広め、結果的に音楽業界の経済流動性が高まる未来もあり得ると思っています。
複雑でわかりづらく結局「相談」の手間がかかる今のJASRACの手続き方法ではおそらく、Audius Muiscのように別の誰かが分散型ソリューションを開発することを促進する動機付けになってしまいます。
ネット上の音楽の使われ方は技術進化などによってどんどん変わっていきます。実態に合わせることも必要ですが、その結果ルールが複雑化し音楽が使われにくくなっていくのは音楽権利者を保護するJASRACの理念とも逆行するものだと思います。
よりシンプルで使いやすいガイドライン、個別相談など人力が必要ないシステムの構築を是非。そして3度目の言及ですが、あの読みづらく威圧的なフォント使いから是非改めてほしいと思いますw
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