1兆ドルコーチ、すごいいい本だった

この本、たまたま読んだんですがすごい良い本だったので思わず紹介します。
といっても2019年の本なので今更感はあるのですが。

なんで今更なのかっていうと、この本が出た時正直なところ読む気にならなかったんですよね。なんとなく当時コーチングに対して胡散臭さを感じていたというかなんというか、私の中のあまのじゃくな部分が「コーチング最高〜!」みたいな風潮に対して忌避するところがあったというか。
じゃあなんで今更この本を読んだのかって話になると、たまたま EMPOWERED 普通のチームが並外れた製品を生み出すプロダクトリーダーシップ を読んでいたらこの本への言及があって、そしたらたまたまこの本がKindleセールの対象になっていたので積読するだけしておいて、たまたま仕事で大変さを感じて子どもを寝かしつけたらベットで横になる以外何もやる気が起きない状態になって、とはいえ眠れないのでKindleアプリを開いたらたまたまこの本が一番手前にあったのでなんとなく開いた、って感じでどこにも能動さがなく読み始めたのでした。

この本の何が良いかっていうと、この本はシリコンバレーの伝説とも言われるビル・キャンベルについてのエピソードをまとめた本で、「著者はビル・キャンベルではない」んですね。
だいたいマネジメントとかコーチングとかあの辺の本って成功した起業家やコンサルが「私の話を聞きなさい」みたいな感じで書いていて、ともすればホンマかいそれはって話も多かったりするんですが、この本は「私はビル・キャンベルにこんなことをしてもらって、そのおかげで今がある」とビッグネームたちが体験談を語る、というテイストになってます。そういうテイストなので全てのエピソードの説得力がとてつもない。だってひとりひとりの「私」の話なのでそこに疑いを入れる余地がないから。
そしてそのメンツがビッグネームすぎる。この本に出てくるメンツが経営している会社の時価総額を足し合わせると余裕で1兆ドルを超える、っていうので「1兆ドルコーチ」というタイトルになっているのでそれはそうです。

で、この本では「こんな課題に直面した」けど「ビル・キャンベルのおかげでこうできた(そして今事実として大成功してる)」という構成で多くのエピソードが語られるのですが、「こんな課題に直面した」というところがリアリティがあるというか、まあ事実だからそりゃリアルなんですが、めっちゃ情景が思い浮かぶ課題なんですよ。
私がITサービスを提供する会社で働いているというのはあると思うのですが、毎回のエピソードへの没入感がすごかった。あるよね〜あるある、私も同じような課題に直面してる、と感じながら読める。これもこの本の良いところです。

さらにこの本ですごい好きなところがあって、毎回のビル・キャンベルの課題解決方法に何ら再現性がなくほぼ参考にならない、というところです(個人の感想です)。
だいたいマネジメントとかコーチングの本は広く一般的に取り入れやすいスキルの話に終始しがちですが、ビル・キャンベルのやり方はスキルという面で切り取ると「そんなの無理やろ」ってものばかりに感じます。
なんとなくスマートなコーチとして君臨してたのかな、なんて思っていたのですが、エピソード読む限りマジでメチャクチャでビックリしました。

じゃあこの本がマネジメントとかコーチングの文脈で全く無用な本かと言われるとそんなことはなく、むしろこれらの根底に流れる重要な概念を多くのエピソードによって伝えているように感じました。
たしかにビル・キャンベルのひとつひとつのエピソードは破天荒なものも多く、ビル・キャンベルじゃない誰かがひとつの具体を取り上げて実践してみたらそりゃもう悪い意味でとんでもないことになると思いますが、全体を通すと不思議と何かひとつの芯が通ってくるような感覚を私は覚えました。

そして読み進めていくうちになぜか自分も勇気づけられていくというか、ビル・キャンベルにコーチングされている感覚になってくるというか。私自身この本を読んでいるとき仕事で行き詰まっており閉塞感があったのですが、読み終わる頃にはポジティブな気持ちで満ち溢れ、次のアクションをいくつか思いつくようになっていました。(ちょうど目標設定の時期だったので助かった)
ほんとうにたまたま読んだ本でしたが、もしかしたらタイミング的にも一番求めていた本だったかもしれません。読み物としても面白いと思うのでいろんな人におすすめできる本です。

ということでめちゃくちゃ良い読書体験をしたし、しばらくは「あなたが好きな本は何ですか?」という質問に対してはこの本をあげていこうと思っておりますよろしくお願いします。

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