[いただきました] 秋山道宏『基地社会・沖縄と「島ぐるみ」の運動――B52撤去運動から権益擁護運動へ』(八朔社、2019年)
秋山道宏『基地社会・沖縄と「島ぐるみ」の運動――B52撤去運動から権益擁護運動へ』(八朔社、2019年)をいただきました。ありがとうございました。
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本書の定義する「島ぐるみ」とは、「一つの地域を超えて沖縄の多くの人びとに問題意識や意見が共有され、特定の課題について集合的な解決へと向かおうとする一連の動き」(20ページ)。これは、「生存」の視点、すなわち戦争/占領体験に裏打ちされた生活や生命を守ろうとする人びとの運動を重視するところからきていると思います。
沖縄における「占領体験」について、本書はこう指摘しています。
現在の「オール沖縄」や「島ぐるみ」の運動もまた、この「生命を守る」という根源的な要求の現代的な現れとして、歴史的に(かつ実践的にも)捉え返していく必要があるだろう。その意味で、沖縄における占領体験は、いまだ過去のものではなく、現在進行形で語られねばならないのである。
「生存」というあたりまえの要求に焦点をあてたとき、それは社会運動としてどのような形であらわれてきたか、あるいはあらわれうるかという問いが浮上してきます。本書が重視する構造的な視点は、こうした切実かつ具体的な問いとのかかわりで大きな意味をもっています。
本書の目次は以下のとおり。
序章 本書の課題と視座
Ⅰ 課題と対象
Ⅱ 研究史の整理と研究手法
Ⅲ 本書の構成
第1章 1960年代後半の沖縄における基地社会の諸相
はじめに
Ⅰ 「島ぐるみ闘争」としての土地闘争:1950年代から60年代へ
Ⅱ 1960年代後半とはどのような時代か
Ⅲ 1960年代後半の基地社会と中部地域(コザ,嘉手納)
まとめと小括
第2章 即時復帰反対論の展開と「島ぐるみ」の運動の困難
はじめに
Ⅰ 即時復帰反対論をめぐる社会・経済的背景とその論理
Ⅱ 一体化政策の展開と即時復帰反対論の帰結
Ⅲ 即時復帰反対論からイモ・ハダシ論への展開
まとめと小括
第3章 B52撤去運動と生活/生存(生命)をめぐる「島ぐるみ」の運動
はじめに
Ⅰ 日常化する基地被害とB52戦略爆撃機の常駐化
Ⅱ 嘉手納村長選挙においてなにが問われたのか
Ⅲ B52爆発事故によって喚起された生活/生存(生命)への危機
まとめと小括
第4章 B52撤去運動の「島ぐるみ」での広がりと2・4ゼネスト
はじめに
Ⅰ 「島ぐるみ」で広がるB52撤去運動と2・4ゼネストに向けた動き
Ⅱ 2・4ゼネスト決行と回避をめぐる動き
まとめと小括
第5章 尖閣列島の資源開発をめぐる県益擁護運動の模索と限界
はじめに
Ⅰ 1960年代後半における「『援助』から『開発』への転換」
Ⅱ 1960年代後半における外資導入と県益の顕在化
Ⅲ 尖閣列島の資源開発をめぐる県益擁護の運動
まとめと小括
終章 「島ぐるみ」の運動からみえるもの
Ⅰ 本論全体のまとめ
Ⅱ 日本復帰前における「島ぐるみ」の運動とはなにか
Ⅲ 基地社会における「生活・生命への想い」のありよう
Ⅳ 本書において残された課題
沖縄研究としてはもちろん、他の時代・地域における社会運動の分析をするうえでも、本書は「役に立つ」でしょう。
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