[いただきました] 本田浩邦『長期停滞の資本主義――新しい福祉社会とベーシックインカム』(大月書店、2019年)

本田浩邦『長期停滞の資本主義――新しい福祉社会とベーシックインカム』(大月書店、2019年)をいただきました。ありがとうございました。
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著者の長期停滞 secular stagnation の原因についての認識は「生産性の不十分さにあるのではなく、生産力の飽和状態にある」(16ページ)というもの。著者の基本的な認識に同意ですが、ドイツの社会学者・ハインを引用しながら、「サマーズが長期停滞の基礎に需要サイドの問題があると言う場合、それは投資需要について述べているにすぎないということを見逃してはならない。今日のマクロ経済の問題を考えるうえでは、消費需要の戦略的位置が考慮されねばならない」(59ページ)と指摘していることは重要です。

日本がこうした状況にあるのはいうまでもないことですが、無視できないのは、「(日本における)公債は富裕層や大企業、金融機関の保有する過剰な資金の運用先として機能している。その意味で財政赤字と経済停滞とがバランスを保っている。過剰な資金が市場に滞留しているため、財政赤字をこれだけ出しても国債は暴落せず、金利も上昇しない。実体経済が冷え込んでいて投資が伸びないので、物価も上がらない。しかしこうした均衡の上で毎年、1 0兆円近くもの金が納税者から公債保有者に流れる仕組みが維持されている」(130ページ)こと。

「この関係を逆転させるべきである、そのために抜本的な所得保障策――ベーシックインカムを導入すべきである」というのが著者の基本的な戦略です。著者のような政策的立場に立って、まとまった形で長期停滞論についてレビューした作品はこれまであまりなかった。先進国経済と日本経済の現状と今後をみるうえで必携の書です。

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