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とあるスープの功名

自分はそんなもんだと思いながらも心がささくれることもある。

私はママ友付き合いというのが苦手だ。
こんな私でも仲良くしてくれる人は何人かいるし、
全く人付き合いをしないわけではないけれど。

ただ、積極的に話していくタイプではない。
なんやかんや総じてめんどくさがりなのだ。

子供の持久走大会の日のこと。
私は半休をとり、カメラを抱えて見に行った。
夫は来れなかったので、一人で。

私はカメラを構え、なんとかいい写真を残そうと子供を追いかけた。
うろうろしていると、会話に花咲く集団がちらほら。

そんな人たちが視線の横に入ると、
ブラックな自分が心の中に現れた。
子供見てんのかな?喋りにきてるのかな?
みたいな悪態を突き始めるブラックME。

羨ましいのか、なんなのか。
そっち側に行けるなら行きたいけど
行かない選択をしている自分の後ろめたさみたいなものなのか。
別に行かなきゃいけないもんでもないし、
色々めんどくさいことはごめんなので、
なるべく一人を選択しているのに、
やっぱり自分の中にある集団が正みたいな感覚がモヤモヤと現れ始める。
あの集団の引力は、なんだか恐ろしい。

自分にカメラという趣味があってよかった。
心底思いながら、ブラックMEを無視することにして、
また写真を撮り続けた。

あー子供を見に行ったはずなのに、
モヤモヤしてしまった。。
なんだか若干の虚しさを抱えて昼前に学校を出た。

ささくれた心をどうにかしたいなぁー
と思った時に、ふと歩いて行ける距離にあるスープ屋さんを思い出した。
週に3日しか空いていないスープ屋さん。
以前テイクアウトできるお店を探していた時に、
立ち寄った時のことを思い出した。

小さいお家をお店にして営んでるスープ屋さん。
玄関を開けると、オーナーらしき方が出迎えてくれた。
その方は、白髪でご年配のようだったけれど、
背筋もスッとして、美人で、凛としていた。
とても優しい物腰で、メニューを説明いただいたのだけれど、
支払いが現金のみ。
モバイル決済に頼りきりだった私は、
その時うっかり現金を持ってくるのを忘れていた。
対応できないことにものすごく申し訳なさそうにされていて、
むしろこちらがすみませんという気持ちで、また来ますと言って店を出た。

あ、あのスープ屋さん、開いてる日だ。

引力を感じて、歩いて向かった。
現金、持っててよかった。
あの素敵な雰囲気の方に会えた。
特別な話をするわけではないけれど、なんだか嬉しかった。
イートインも出来たが、テイクアウトをお願いした。

お家に持って帰って、
ゆっくり食べた。
スープとサンドのセット。
とても優しいスープ。
丁寧に作られているスープ。
体に染み渡ると共に、
心のささくれがどうでもいいやー!とどこかに飛んでいった。
あーありがとう。優しい食事って心も解いてくれるみたい。

あれ以来、疲れた時や、心やさぐれてしまった時は
あのスープ屋さんを思い出す。
覗いてみると予約でいっぱいだったり、
臨時休業だったりで、あの日以来まだ行けてはいない。
その度、私はまだ大丈夫ってことなのかなって思ったりもする。
(予約しなよ自分。とも思う。)

また、心を解いて欲しい時に立ち寄りたい。

#元気をもらったあの食事

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