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【定期ゲー】仕立て屋妖狐、異星を征く 或いはやらざるを得なかった私なりの無謀

 本記事は「創作キャラクター交流ゲーム Advent Calendar 2023」の9日目の記事となります。
(※当初別テーマの記事を予定しておりましたが準備に時間がかかっており、遅刻がひどくなりそうだったため25日目の枠もお借りした上で本日分は別なテーマで埋めることとさせていただきました。大変申し訳ございません。)

8日目: https://untroche.hatenablog.jp/entry/2023/12/09/015047
10日目: 


はじめに: イデクラって?

 「暗夜迷宮」等で知られるreifier氏によるゲーム「IDEA CRAFTERs」のことです。この夏、(キャラクターを動かせる期間でいえば)7/29〜8/25にかけて開催されたキャラクター交流ゲームで、去年4月にも開かれていて今回が2度目の開催となります。
 イデクラの舞台は数多の「ものづくりの知識」が失われ住民が立ち去ってしまった星で、「アルケー」という人物の頼みでそこに呼び出されたPCたちが再びにぎやかな星にするために各地で素材を収集してオリジナルのアイテムやら建物やらを創造していく(※1)……というゲームです。大きな特徴として(ゲームシステム上の)戦闘要素やスコアのようなものがなく、プレイヤー間のゲーム的な優劣がほぼ見られない作りになっています。ゆえにバトルが苦手な私も安心して楽しめました。
 時に奇抜な発想のアイテムに色めき立ち、時に創作料理をご馳走し、時に巨大施設を造るべく建材の寄付を募る姿があり、そして無事竣工した後にはPL主催イベントの舞台となって様々なドラマが巻き起こったりする……とまあ短くも濃密な時間が楽しめるゲームとなっておりました。

(※1)形のあるモノしか作っちゃいけないという決まりはなく、確か法律とかも造られてたかと思います(むろん勝手に……)

創造の世界に降り立つ者

 イデクラには去年と今年とで2回とも参加したのですが、1回目のPCは元々ものづくりには縁遠い方でした。

1回目のPC、ラーザ・モデュラスさん。どっしりむっちりな雌ドラゴンで故郷の世界では警察官的な市民を守る仕事をしていました。イデクラ参加時はなぜか料理に目覚め、最終的には飯屋を開くことに。

 で、2回目となる今回出したPCはというと……

 三尾の牝狐、名はサイカ・スイウ。自創作世界観(まだ作品は一つも作れてないのですが……)である「オルタナリア」の「モノの国」の出身です。モノの国では動物がある日突然知恵を得たり、器物がひとりでに動くようになった存在である「モノノケ」たちが(他の多くの種族に混じって)暮らしており、サイカもまたその一人です。
 狐ということで化け術が得意だったサイカですが、ある日見学した服の品評会に感銘を受けて仕立て屋兼ファッションデザイナーの道を歩み、その末に「服は大事にすればずっと残り、見た者にも広がっていく一種の化け術である」という自分なりの哲学を見出します。そうして服作りに励んでいたサイカはある日突然イデクラの舞台となる星に飛ばされてしまい、新作のアイデア探しも兼ねて星の復興を手伝うことにしたのでした。

 話は変わりますがイデクラには一つ重要なルールがあります。舞台の星はいくつかのエリアに分かれているのですが、その中には砂漠に雪山火山に毒沼と厳しい環境も多く、大半のエリアは特定の『要素』を揃えたアイテムがなければ入場できないようになっています。
 そしてゲームシステムの都合上、入場用のアイテムは自作することで用意しなくてはなりません(※2)。

 ……いつ決めたかははっきりとは覚えてません。
 こんな設定のPCでイデクラに臨むと決めた時点だったかもしれませんし、最初のエリア入場用アイテムが必要になった時かもしれません。

 が、いずれにせよ私は決意しました。
 全エリアの入場用アイテムをそれぞれ専用の服として製作し、さらにそれら全てのイラストを描くことを。

 エリアの解放はアイテムだけでなくゲーム開始からの日数も条件になっており、その間隔はだいたい数日おき。また一度に2〜3エリア同時に開くため、平日も含めた数日間で2〜3枚の絵を用意しないといけないことになります。これを大変と感じるかどうかは人によるかと思いますが、私にとってはかつてないレベルの試みでした。

 ……それでもやらんといけなかったのです。だって、サイカはある種の芸術家なのだから。私の腕でもって可能な限りそれを表現しなくてはならないと、そう思ったのです。

(※2)作ったアイテムのレシピは公開・共有することもできるので、誰かが各エリアの入場用アイテムのレシピを公開していればそれを使う選択肢もあります……一応。

サイカ・スイウ作品集

1.水虎潮浴衣(すいこしおゆあみのころも)

 最初のエリア解放で行けるようになった「海」エリアに入るための服です。とかくキュッと絞ったフォルムを際立たせるような代物に。
 表情が気に入っててXのアイコンにしてます……化け狐っぽく妖艶な顔つきをイメージしてたんですが普通にかわいらしくなってしまったり。サイカは作った服を自らまとうモデルの仕事もしてる設定なので、必要に応じて色々な顔を見せられるとは思います。

2.白熊裳布温衣(しろくまのもふぬくい)

 「海」ともども最初のエリア解放で追加された「雪山」用の服です。さっきのから一転してものすごい着膨れっぷり。寒さに耐えられるものでなくてはならないというのもありますが、サイカは色々あって太るのに憧れており、その趣味が反映された服になってたりもします。先述の通りモデルやってるのであんまり太るわけにいかないのですが……

3.本草学調査装束(ほんぞうがくちょうさしょうぞく)

 「森」エリア用の服。全身を迷彩とすることで野生動物に気づかれにくくし、露出を極限まで減らして毒虫や尖った植物による怪我を防ぐ、実用性を重視した服です。
 腰のポーチは特殊なベルトにくくりつけられており回転させることが可能。その時必要なものが手元に来るようにできます。

4.砂走宿衣(すなばしりすくのころも)

 「砂漠」エリア用の衣。足が接地する時間を最小限にして火傷を防ぐトカゲやら、トゲだらけの身体で大気中の水を受け止めて喉を潤すトカゲを参考にした服です。
 それ以外にもこの頃他のPCさんから請けたお仕事で開発した技術を使ってたりします……ありがとう。ご依頼きたときはビックリしましたし嬉しかった。

5.蛇足転必需衣(だそくてんじてひつじゅのころも)

 「湿地」エリア用の衣。蛇柄の服です。三本の尻尾も束ねて、先っちょの手前まで蛇になっちゃってます。
 個人的に一番ネーミングが気に入ってる服でもあります。木に巻き付いて登る蛇のしなやかさと、崖も駆け登る狐のしたたかさのコラボレーション……蛇足も組み合わせ方次第では決して無駄にはならないのです。

6.妖狐女忍殺衣(ようこくのいちにんさつのころも)

 「城跡」エリア用の衣。このエリアは強力なモンスターが巣食う場所となっており、中にはドラゴンの姿も……すばしっこさと化け術はあっても戦いとは縁遠いサイカ。そんな彼女が城跡を探索すべく仕立てたこの服は2種の兵器を備えています。1つは「絡繰魔導自律飛翔機械『鳥狩』(とがり)」。魔力をチャージして空を飛び、ターゲットに電撃を浴びせる……いわゆるひとつのファ◯ネルです。もう1つは「四脚式絡繰魔導篭手『鳴神』(なるかみ)」。本来電気の力で「化学操作」(※3)を行うためのアイテムとして作られたのですが、最大出力が強くなりすぎてモンスターも軽々倒せるレベルになってしまっていたのです。
 デザイン的にはまあ、セクシーなくのいちという感じに……

(※3)本作ではこの「化学操作」や「調理」、「抽出」などアイテムを作る過程の手段も色々と定義されており、それらを実行するためのアイテムも順次揃えていく必要がありました。

7.赫奕赤竜衣(かくやくたるせきりゅうのころも)

 「火山」エリア用の服。城跡でドラゴンを狩りまくり、鱗と皮をたくさん手に入れたサイカが満を持して仕立てた服です(※4)。この服を着ると気分も昂ぶって吼えたくなっちゃうんだとか。
 ドラゴンさながらの姿になりましたが、さっきの服と違って特に兵器の類は装備していないため、残念ながら戦闘力は据え置きです。空も飛べません。カッコイイ……とは思うけど!

(※4)ゲーム的には火山入場用のアイテムには「耐熱」要素が必要になるのですが、ドラゴンから得られる「竜の鱗」にはそれがありません。そのため別な素材で対処しています。

8.玄固朶頤竜具足(くろこだいりゅうぐそく)

 「毒沼」エリア用の服……というか着ぐるみに近い代物。でっぷりとした大ワニ。たっぷり顎肉はこだわりポイント。
 傍から見ると丸呑みされているかのような姿ですが、実際内側には外皮がはっきりしたタイプのスライムから中身だけ抜き取った「スライムスキン」が詰め込まれており胃袋の中にいるかのような感触を実現しています。そこら中に毒素が充満した地域で活動できるよう頭部には高性能フィルターが仕込まれており、清浄な空気を内部に送ります。
 視界があまりよくないのと陸での動きが鈍くなってしまうのをカバーすべく、『鳥狩』で培った技術も用いて偵察用鳥型メカ「絡繰魔導自律飛翔機械『千鳥』(ちどり)」を開発しお供としましたが、制御システムの開発にはかなり苦労した模様。

 ちなみに朶頤というのは食欲旺盛だったり、強い国が弱い国を取り込もうとする様を表す言葉です。「クロコダイル」のもじりで考えてて見つけました。

9.真機成操霊長衣(まきなあやつるれいちょうのころも)

 「研究所」エリア用の服。人々が去ってなお稼働する機械も見受けられるこの施設で、感電を防ぐべく尻尾をゴムで覆いつつ先端に銀細工のアームを装着。魔力によって操作することができ、便利に扱えます。
 この頃になるとサイカも色々作る中で学者・エンジニア気質というか、ある種の凝り性を自覚しつつありました。彼女の生きるオルタナリアには「テツの国」という機械技術を発展させ、ロボット兵士すらも生産している国があるのですが、イデクラの世界から帰ってきたサイカはそれらをどんな目で見るようになったのでしょうか。

10.深海潜水艇万年號(しんかいせんすいていまんねんごう)

外観
ちょっとだけ内部

 「深海」エリア用の服……というか潜水艇。とうとうこんなものまでこしらえてしまいました。丸っこい亀の形をしており、コクピットには四肢と尻尾を突っ込んで動かすコントローラーが。ヒレと推進装置で前進する他、三尾で操る外付け尻尾には研究所用の服と同様の銀製アームがついていて素材の採取に活用できます。コクピット内部にはスライムスキンが敷き詰められており、長時間操縦することになっても快適です。

11.天赤朱鷺衣(あまつあかときのころも)

 「神域」エリア用(※5)の服。アルケーの住まいでもあるこの地には幻獣や精霊のようなモンスターが生息しており、それらから入手した翼で空を飛べる服を作ることに成功しました(※6)。
 サイカもふと早起きして見た赤朱鷺色……あるいは赤と黄色の朝焼けに、眠りを忘れるときめきを味わったことがあるのでしょう。そんな思い出が蘇る、翼持つ天女の羽衣のような服です。

(※5)ここは追加エリアの中では唯一無条件で入場できるエリアなのですが、まあここまで来たら一通り服を作らぬわけにはいかんので……
(※6)ゲームシステム上の飛行能力も備わっており、入場条件を満たしていないエリアを飛び越えて進めるメリットが得られます。

12.万化九尾衣(よろずにばけしきゅうびのころも)

 サイカ・スイウがイデクラ世界で作った最後の服(※7)。星の最果てにそびえ立つ「塔」に立ち入ったサイカは、そこで「ものづくりの知識」の消失にまつわる真実を知ります。それは彼女や他の人々がこの星のためにしてきたことが、いずれまた無に帰してしまうかもしれないという不安を抱かせるものでした。自分たちがこの星を去った後も、星の主であるアルケーが幸せであり続けるためには……サイカが選んだ答えは、これからやってくる人々のために願いを込め、「化け術」を表象する服を残すことでした。
 身にまとう着物は「変化」の花言葉をもつルリハコベと、「困難に打ち勝つ」の花言葉のサザンカがモチーフ。そして九尾にはサイカが見出したこの星の全てがこめられています。モノノケになって間もない頃は化け術を逃げたり騙したりすることにしか使っていなかったサイカですが、服作りに出会って以来、化けるということは彼女にとって「今が辛くても、違う自分になって乗り越えていける」という希望を意味するようになりました。この星にこれから何が起ころうと、人はものづくりを続け、化けようとする……そうサイカは信じています。

 ……さて、サイカ自身にとってもそうでしょうが、PLである私にとってもこいつは最も難産な服でした。九尾の服にするのは割とゲームの早い段階で決めてたのですが、それでサイカの願いをどう表現するか、イデクラで過ごした時間全体をどう総括したものか……と考え、最終的には舞台となる星そのものを包み込むように広がった九本の尾それぞれでジャンル別(花、宝石や鉱石、海のもの、自然物、動物、魔晶石や精霊、モンスター、機械、塔にあった謎の楽譜)のアイテムを表す……という、まあ、単純な案に落ち着きました。そしてイラストを本格的に仕上げてくわけですが、最後ということで縦幅を他の絵の3倍に、そこからさらに解像度も2倍にして仕上げるためかなり厳しい戦いになりました。本当に割とギリギリまで作業してた記憶があります。

(※7)「塔」エリアも入場用アイテムが必要になる場所なのですが、ここだけは服ではないものを作って入場し、中での経験を経てこの服の着想に至る……というストーリー展開にしました。

 ありがたいことに、これ以外にも2着ほど他のPCさんの依頼で仕立てさせていただいた服があります。デザインはいずれもこちらで考えさせていただきました。サイカとしてはこれまでしてきた仕事がそうであるように知恵を絞り全力を尽くしたでしょうが、私としては喜んでいただけるか心配しつつの作業でした(実際にはどちらもとても喜んでいただけました。ありがとうございます!)。

復興者カードバトルのカード

 ゲーム内で各PCさんをもとにしたカードを製作してバトルをする遊びが流行しており、サイカも作ってみた代物です。
 九尾にこの時点でイラストが仕上がっていた9着の服が映り込んでいます。

展覧会

 イデクラではゲームの締めくくりに展覧会が開かれ、腕によりをかけてこしらえた自慢のアイテムを一人一つずつ展示することができます……といってもこの世界では物品だろうと建物だろうとアイテムとして取り扱われる(※8)ため、見せたいもの全てを合体させたアイテムを作って展示ブースというテイで出す、なんてことも可能です。そして展示したアイテムにはゲーム内で書く日記と同じ形式の解説文を添えることができます……というわけで最後の最後まで凝り尽くすことにしました。
 展示を個展とし、上のようなポスターイラストを作成(万化九尾衣の流用+加工)。解説文は個展内で配るパンフレットの内容とし、12の服の解説やらサイカ自身の身の上話やらをひたすら書き込んでいきました。これもだいぶ余裕のない作業になりましたが、やるだけのことはやれたと思います。

(※8)アイテムとして作られた建物を使用することでそのエリアに建設することができ、その状態でも展示会には出せます。

イデクラを終えて……

 とまあどうにかこうにか12着+αを仕上げることができました。大変でしたが楽しかったです。
 ただ終わってから見返してみると「化ける」というテーマというかサイカの哲学をちゃんと表現しきれていたか、あるいは設定上はファッションデザイナーという職についているサイカの腕前を私の技術と頭で表せてたか……というのはあります。まあ服飾の勉強なんてしてこなかった身なのでそこは仕方がないのですが……

 もちろんロールの方も楽しませていただきました。個人的には水鉄砲バトルのイベントが一番のお気に入りです。あれは盛り上がった……別な場所でプチファッションショーやらせていただけたりもしました。砂漠と深海、神域あたりがとにかくめっちゃ賑やかだった印象です。色々RPイベントできるような大型施設ができたのはやはり大きかったのかなと。無論それ以外のエリアでも盛り上がらせていただきました。

 私はキャラ交流ゲーに参加する度にRP・日記を通じて共通のバックストーリーをちょっとずつ進行させていっており、サイカもまたイデクラを終えてその一部となりました。今後もどこかで出番があると思いますので、その時にまた彼女なりの美をお見せできるよう、私も勉学に励んでゆきたいと思います。
 というか服が作れるってのは色々とおいしいのでキャラ交流ゲー以外でも色々とアレコレすると思います。しました。

アレコレの一例・2023年ハロウィン絵。今後時節イベント用の服はサイカが作ったというテイになるでしょう。
ちなみにこの絵には後日談があるのですがちょっちここに載せるのは……な代物ゆえ見たい方はXの方へ。

 何はともあれ、今後ともごひいきに。
 ここまでお読みいただきありがとうございました。そして、IDEA CRAFTERsという素晴らしい体験を我々に提供してくださったreifier氏や、RPにお付き合いいただいた方々、盛り上がるイベントの数々を主催してくださった方々にも、この場を借りてお礼申し上げたいと思います。


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