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3月日記

2023年度が終わる。今年は切り良く4月1日が月曜日で、明日から社会人篇が始まる名も知らぬ元学生達に対して歓迎と羨望が混じった感情が湧く。自由を手に入れた彼らはこれからどんなマジックアワーを過ごすのだろうか。そんなどうでもいいことを考えながら、社会人になりたての頃の写真を見返す。明日から社会人五年目になる現実からは目を背けながら。

3月の頭に合唱の本番があった。およそ四年振りに上がるステージは緊張感よりも本当にこれで良いのかという不安の方が強く、けどその動揺を表に出さないように普段は絶対浮かべないような笑顔で歌っていたら何箇所もミスをしてしまった。ペチカを間違えたベースは私です。謹んでお詫び申し上げます。そして当日来てくださった方、本当にありがとうございました。次の本番はどうやら一年後らしいので、日時が決まり次第ご連絡いたします。

先月の日記に引越しをするかどうか悩んでいる旨を記載して、それを書いた当時は自分でもどうなるのか分かっていなかったのだが、結局引っ越しはせずに、今の家を更新をすることにした。あと二年弱は住むことになるだろう。大家さんに家賃の相談をしたら賃料を安くしてくれて本当に有難い。このことを人に話すとそれなりの驚きが返ってくるので、これは珍しいことなんだなと粛々と感謝が湧く。とはいえレイアウトには飽きが来ており、部屋の模様替えをしたいなと企んでいる。インスタで見つけたソファベッドがかなり好みで、詳細を調べたら販売終了していた。メルカリで正規価格の二倍で売りに出されていたけどそこまでの情熱は無い。

第一次の結婚ブームとやらが凄まじい。3月だけでインスタしか知らない昔の顔見知りが数人、会社の同学年が二人、数年前に同居していた友人が結婚した。大学のゼミの集まりではトークテーマがプロポーズや家を建てた話になっていて、周りの世界はズンドコ流れていることを再認識する。自分の姉には子どもが生まれた。生後一週間の赤ん坊を抱っこしたら腕から伝わる熱と鼓動によってそれ自体が巨大な心臓のように思え、生命の重さにうだってしまった。晴れて叔父になった自分だが特に何の進展も無く、休日に友人と集まり桃鉄を15時間やったり、ゲーセンのUFOキャッチャーやパチンコで金を溶かしたりしている。いつまでこんな生活を出来るのだろうか。

二年前から伸ばしていた髪をバッサリと切った。15センチは切った。心境の変化があったわけでも失恋をしたわけでも無いが、何となく切ることにした。家に帰って自分で髪を洗ったら余りの短さに驚嘆の声を出してしまった。一人で笑いながら湯船に浸かった途端、自分でも想像していなかった寂しさに襲われた。何の感触も無い後頭部をさすりながら二年間の積み重ねを思い返す。それらが全部無に帰し、平坦な日常が続くような静かなる予感がした。濡れた身体をタオルで拭き、後ろ髪を引かれる思いでドライヤーをしたら乾くのが早過ぎてものすごく楽だった。髪なんて短い方が良いに決まっている。

今年の3月は去年よりも寒い期間が長く、いつまでダウンを着るのか…と憂いていたら、今日いきなり25度になって情緒がバグる。昼寝をしようとしたら暑過ぎて寝れなかった。今年初めてサンダルを履いて外に出たら去年の北海道を思い出した。

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