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馬たちと放棄地を開墾する

馬たちは生きるために草を食べていて、それが放棄地を解消する役に立っています。それだけ草刈り機を使わないで済み、化石燃料や労力が減らせる。食べるスピードは遅いかもしれませんが、場所の使い方をそのスピードに合わせればいいのです。これまで放牧のやり方を何度も失敗しながら、雪や台風の時以外は放牧を続けてきました。

 馬たちが移住した先は森の中の寂れてクタクタになった小屋。カヤが生い茂った広場の周りに手入れのされていない森が広がっていました。森の中にぽっかりと空いた樹々のない空間です。 

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 広場を畑にしていく為に周りに金網を張って、その中の草を馬たちに食べてもらっていきました。1週間もすると中の餌はなくなる。そこで、早くも次の場所に金網を張っていきます。

 カヤでも若い草は根元まで食べますが、大きくなって芯も太くなると食べなくなりました。踏み荒らして食べていくので、ヒトが入っていくのも大変な藪になっていても、いつの間にかスカスカになっていく。ガリガリッ、キュッという音がして、根っこをほじって食べたりもしています。

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 草には食べるのもあれば残ってしまうのもあります。よく見かけるものではワラビやタケニグサ、ヤマゴボウなど毒草は食べませんが、ハルジオンやヨモギ、セイダカアワダチソウなども好んでは食べません。そのままにしておいたらハルジオンのお花畑になってしまったこともあります。ヨモギやセイダカアワダチソウは福之助が食べてるのは見たことがあるので、馬の好きずきなのかもしれませんね。

 金網の中を食べきってしまったので、次はフェンスの外を食べさせていきました。杭にとめた長いロープに繋ぎます。ロープが届く範囲を食べていくので、夕方には草地に円形の模様が出来上がる。つなぎ場所が悪いと危険なので、杭を打つ場所は注意が必要です。崖や穴の近くや障害物のあるような場所は避けています。夜には繋ぐのはやめて小屋の隣に作ったフェンスの中に戻していました。

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 ある朝のこと、馬たちに会いに行くとフェンスの中にいません。周りを見渡すと隣の畑との境界にしていたフェンスが倒れて向こう側に2頭とも出ているのが見えました。見えるところにいてよかったと思うのも束の間、馬たちが畑を荒らしていることがわかりました。これは困った。順調だった畑の大豆が全滅。一株も残らず食べるか踏み荒らしています。食べたいものの前では、このくらいの金網は壊してしまうようです。

 金網に変わるものとしては、電気柵があります。強度は全くないのですが、ここには近寄ろうとはしません。放牧地の周りの柵を張る部分だけ草刈りをしておいて、長い距離も金網を張るのに比べれば簡単で移動もしやすい。この囲いであれば夜間放牧もできるようになりました。夏は暑いので日中よりも夜間の方がよく食べるようです。

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 森の中のぽっかり空いた空間も、3年かけてゆっくりと草刈りされてきました。毎年食べていると、カヤの勢いも弱くなっていき、柔らかい草などの植生も見られるようになってきました。体重にもよると思いますが、1頭あたり1haの草地が必要ともいわれています。足りない分は、麓の田んぼで作られた稲わらからも得ていきます。馬たちが自然の中で生きるためには、これくらいの大きさのスペースが必要となるし、それくらいは食べてくれるということなのでしょう。




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