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韓国文学と韓国のことについて

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韓国文学の読書感想文をたくさん投稿してきたので、まとめました。 韓国についての本もまとまっていくつかあったので、一緒にしました。
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記事一覧

延長があるような小説ーーキム・ジュンヒョク著『楽器たちの図書館』を読んで

 キム・ジュンヒョク著 波田野節子・吉原育子訳 クオン 2011年出版  クオンという出版社…

森マリアンヌ
9か月前
2

韓国文学におけるSFとはーー『保健室のアン・ウンニョン先生』を読んで

 チョン・セラン著、斎藤真理子訳 2020年出版  図書館の本棚に、刺さっていたから借りた。…

森マリアンヌ
11か月前
4

音楽と小説の結びつきーー『そっと 静かに』を読んで

ハン・ガン著 古川綾子訳 クオン 2018年出版   韓国の新しい韓国の文学のシリーズに入っ…

森マリアンヌ
11か月前
2

主人公がいない小説ーー『フィフティ・ピープル』を読んで

 チョン・セラン著 斎藤真理子訳 亜紀書房 2018年出版  斎藤真理子さんが翻訳やっていて…

森マリアンヌ
11か月前
11

お年寄りと若者の関係ーー『ショウコの微笑』を読んで

 チェ・ウニョン著 吉川凪監修 クオン 2018年出版   クオン社という出版社から、新しい…

森マリアンヌ
11か月前
5

『今、何かを表そうとしている10人の日本と韓国の若手対談』を読んで

 西川美和とムン・ソリ/寄藤文平とキム・ジュンヒョク/光嶋裕介とアン・ギヒョン/朝井リョウ…

森マリアンヌ
11か月前
2

【読書感想】貧困層の人たちの描写ーーキム・ヘジン著『中央駅』を読んで

キム・ヘジン著 生田美保訳 彩流社 2019年出版  地元の図書館の韓国文学のコーナーにあったから、借りてみた。  ある日、若者が中央駅に来て、ホームレスの生活を始めるところから物語が始まる。社会的に最底辺にいる男の話で、救いもない話がずっと続く。ホームレスを支援する人とのやり取りもあるが、男が落ちに落ちていく姿が書かれていて救いようもない。女が出てくるのだが、愛を交わす時に、愛しているのか、肉体的な欲望だけなのか、と終始自問するのも痛々しい。ホームレスという境遇で、女に

【読書感想】現代社会におけるルッキズムーーパク・ミンギュ著『亡き王女のためのパヴ…

パク・ミンギュ著 中川美津帆ほか訳 クオン社 2015年出版  パク・ミンギュという作家が書…

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文学の括りって?ーーチョン・セラン著『屋上で会いましょう』を読んで

チョン・セラン著 すんみ訳 亜紀書房 2020年出版  チョン・セランさんのシリーズになって…

5

【読書感想】親しみを感じるエッセイーークォン・ナミ著『ひとりだから楽しい仕事』

クォン・ナミ著 藤田麗子訳 平凡社 2023年出版 地元の本屋さんで見かけて、面白そうと思っ…

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『世界でいちばん弱い妖怪』キム・ドンシク著を読んで

キム・ドンシク著 吉川凪訳 小学館 2021年 作者は1985年に生まれ、小説なども読んだこ…

4

『ハングルへの旅』茨木のり子著を読んで

茨木のり子著 朝日文庫 1989年出版  高橋源一郎さんの本読んでたら、この本が紹介されてい…

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『ミカンの味』チョ・ナムジュ著を読んで

 チョ・ナムジュ著 矢島暁子訳 朝日新聞出版 2021年出版  中学校の4人の仲良し組が高校…

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『サハマンション』チョ・ナムジュ著を読んで

チョ・ナムジュ著 斎藤真理子訳 筑摩書房 2021年出版  格差社会の最底辺で暮らす人々が住むサハマンション。そこで暮らす人々のことが描かれている。ここまで住むところで格差社会が表れてしまっているのは現代の韓国らしい問題だと思うし、MERSという呼吸器症候群と思われる病気にかかって、政府の実験台にされる人が出てくるのも、現代韓国の社会的問題をはらんでいる。  サハマンションに住む人の人間関係と事件が描かれている。どの住民も訳ありなのだが、最後になって、政府との葛藤が見えな