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森見登美彦氏とわたし

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森見登美彦氏との出会いによって、大きく人生が変わったと思っているわたしが、森見登美彦氏について語るエッセイ
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#森見登美彦氏

森見登美彦氏とわたし【聖地に住む編】太陽の塔の巻

わたしが東京と京都との遠距離恋愛に耐えかねて、京都の恋人宅へ転がり込むように移住したことは、前回の「森見登美彦氏とわたし【聖地に住む編】プロローグ」で記述した通りだ。 その転がり込んだ家というのが、出町柳の界隈にあった。某関西最高学府もご近所と言える場所であり、鴨川に面した素敵な立地である。 そんな立地で暮らせば、ありとあらゆる森見作品を感じながら暮らせた。 今回は「太陽の塔の巻」と称して、当時の思い出を振り返っていきたいと思う。 まず、転がり込んで間もなく、わたしは出

森見登美彦氏とわたし【本当の出会い編】

わたしは学生時代に京都に住む年上の恋人からオススメされて読んだ「夜は短し、歩けよ乙女」により、森見毒の餌食となった。 借り物だった「夜は短し、歩けよ乙女」を読み終えたところで書店へ行き、自分用の「夜は短し、歩けよ乙女」と「四畳半神話大系」を購入した。 これでさらに強い森見毒に侵された。 森見毒とは恐ろしいもので、依存性が強いことで知られる。 タバコ、アルコールと並ぶ、依存性嗜好品。 ぐんぐんと読み進めていき、「四畳半王国見聞録」「有頂天家族」と次から次へと購入してい

森見登美彦氏とわたし【出会い編】第三回

前回記したように、わたしは遠距離恋愛中の恋人と会うために京都へ訪れた。 修学旅行を除けば、これが初めての上洛だった。 「ひろくんはどこへ行きたい?」 と聞かれて、大真面目に 「四条烏丸の交差点」 と答えたのち、わたしは彼女の案内により四条烏丸交差点へとたどり着いた。 そして、わたしは車が行き交う中、四条烏丸交差点へと歩み寄ろうとしていた。 まだ、四条通の歩道が拡張される前で、今よりも交通量があったような記憶がある。 もらい物の懐中時計を手に、「鴨川ホルモー / 万城目学

森見登美彦氏とわたし【出会い編】第二回

前回書いたとおり、学生の頃は京都の最高学府に通う歳上の恋人との遠距離恋愛を謳歌していた。 大学生だった当時の私は、東京の沿岸部に棲みながら書店のアルバイトをする似非文学青年だった。 恋人は頻繁に東京の私の下宿を訪れていたが、私が恋人の住む京都へ訪れたのは、遠距離恋愛開始からずいぶんと経ってからのことだった。 アルバイト代を貯め、食費や光熱費を切り詰めていざ新幹線で京都へ向かう。 京都へ行くのは中学の修学旅行以来のことだったので、興奮に近い高まりを感じたのを覚えている。

森見登美彦氏とわたし【出会い編】第一回

好きな作家さんは誰かと聞かれた時に挙げる三、四人の作家さんの中に件の森見登美彦氏もいる。 森見登美彦氏の作品は余さずそろえており、単行本で買ったものが文庫化されればそれも買う。 わたしの一年は森見作品とともにある。 例えば、宵山の時期なら「聖なる怠け者の冒険」や「宵山万華鏡」を読み、 秋になると「恋文の技術」を、 年末には「有頂天家族」といった具合に。 森見ファン諸賢と比ぶればヲタク具合は薄いかもしれない。 けれど、わたしはわたしなりの熱で森見作品と接している。 とこ