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森見登美彦氏とわたし

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森見登美彦氏との出会いによって、大きく人生が変わったと思っているわたしが、森見登美彦氏について語るエッセイ
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2023年6月の記事一覧

森見登美彦氏とわたし【聖地に住む編】〈新釈〉走れメロスの巻

京都には桜の名所がいくつもある。 蹴上インクラインの桜のトンネルもよく知られているし、円山公園は桜の季節となれば黒山の人だかりだ。谷崎潤一郎「細雪」でも言及される平安神宮の枝垂桜は言うまでもない。賀茂大橋近くの鴨川沿いにも桜並木が続き、学生たちが花見の宴を貼る。 その中から「哲学の道」の桜並木を取り上げてみる。 私は京都と東京の遠距離恋愛がうまくいかず、パートナー宅へ転がり込む形で京都へ移り住んでゼロ距離恋愛を開始した。 ある春の日、パートナーと花見に行こうという話になった

森見登美彦氏とわたし【聖地に住む編】きつねのはなしの巻

遠距離恋愛をするには、東京と京都では遠すぎた。 そこで私は、会社を辞めて京都のパートナー宅へ転がり込んだのである。 左京区に住むパートナー宅から、一乗寺界隈へは頻繁に足を運んだ。 オモチロイ書籍を取り揃えた書店があったからだ。 いろいろ買ったけれど、建設中のダムや橋梁の写真集なんてマニアックなものが一番「買って良かった」と思っている。 たびたび書店で開催される文芸フリマイベントも好きだった。いつか出店しようと思いながら、それは叶わなかった。 今住んでいる金沢で、いつか実現し