Facebookにそぐわない話

【2017.11.24 Facebookより】

インスタ映えという言葉も市民権を得た昨今、Facebookを見ると、やはりこちらも輝きに満ちた投稿にあふれている。

曰く、新しい部署でもがんばるぞ、こんな素敵な場所に行った、知人の結婚式に出席した…云々。
あたかも自分の生活の上澄み部分だけを見せ合うのがSNSの本道であるように。
あげく、外国人の友達も見当たらないのに外国語だ!誰向けの投稿なんだそれは!

そんなわけで、あえてfacebookにそぐわないような、生活の澱のような部分を見せる投稿をしてみよう。

尻から血が出たのだ。

自分が結婚したという報告も書かないでなぜ尻から血が出た話を投稿するんだという批判もあろうが、出たものは仕方ないのである。

それに、似たり寄ったりな内容になってしまう結婚報告の投稿よりはこちらの方が読み物としては面白くなるはずである。読んでもらうからには楽しんでもらいたいのだ。

・・・

さて、どうにも鮮血が止まらないので早いとこ医師にかかることにした。

とはいえ、直接見られたり、もしかして触診とかされるのはさすがに抵抗がある。

とりあえずネットで情報収集をすると、最近ではいきなり触診ということはなく、充分な聞き取りをして、本当に必要な時だけ触診をする医者が多いらしい。

それなら安心、と近場で肛門科の看板を掲げる診療所の門をくぐったのであった。

「色は?いつから?痛みはある?内臓系の病気やったことある?」
いかにもベテランらしい医師の質問はテンポよく、私の答えに応じて彼の脳内フローチャートの矢印が進行していくのがわかる。
私も弁護士。相談から問題点を把握し、アドバイスをする仕事。この辺りは大いに参考にしたいところだ。

「じゃ、見てみますんでズボン少し下げて半身に横たわってください」

見せるのかよ。
…百聞は一見に如かず。当事者の話も大事だが、やはり訴状を見るのが手っ取り早い。この辺りも大いに参考にしたいところだ。

「じゃ、少し指入れますね」

そして入れるのかよ。これは参考にしない。

「保険証見せてもらいましたけど」
「弁護士さんなんですね」
「娘夫婦の家の問題で聞きたいことがあるんですけど」
 
 すいませんその話するなら先に指を抜いてもらっていいですかね!

さておき、診察は終了。

 「ごく軽い裂肛ですね」「お尻の穴を時計に見立てると、6時の方向に軽い傷があります。」
 お尻の穴を時計に見立てるのもすごい話だが、上と下のどちらを12時とすればいいのだ。いや、上下というか前後なのか?
3次元的な混乱がおさまらないまま、飲み薬と、塗り薬をもらって帰った。

・・・

裂肛、いわゆる切れ痔。

生活習慣のほか、読書するなどトイレに長居することも原因の一つだそうだ。これで我が家の厠文庫の撤去が決まった。

薬の成果なのだろう、2、3日後にはすっかり血は出なくなった。

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