「やがて君になる」を観た

高田憂希さんが出演しているアニメが観たいなあと思い、「やがて君になる」を観ました。

七海燈子→小糸侑

ストーリーの序盤は、侑が他人に対する”特別”を知るための物語だと思っていました。気持ちの矢印が七海先輩から侑に向かっていく中で、特別な気持ちを知っていくのだと。
そうして、暗い水の底に沈んでいる彼女が、早く光をみつけてほしい、彼女の世界に色がついてほしいと考えていました。

侑が七海先輩を少しずつ知っていく中で物語の転機になったのが、2人が河原でお互いの感情をぶつけあったシーンでしょうか。
侑の心からの気持ちが初めて表れて、それに対抗するかのように七海先輩も自分の譲れない一線を侑に対して表明していく。ノーガードの殴り合いをみるような、そういう激しさがありました。

小糸侑→七海燈子

物語が終盤に向かっていくにつれて、感情の矢印が侑から七海先輩に移っていることに気が付きました。
そして、今まで何の気なしに聴いていたED曲「hectopascal」がまさに、2人の関係性を歌っていることにも気が付いたのはこの時でした。

侑が七海先輩への気持ちに気づいて、そんな描写が見え隠れするたびに、視聴している自分はまるで綱渡りでもしているような冷や冷やする気持ちでいっぱいでした。
不思議な事に最初は、侑が救われてほしいと思って観ていたものが、途中からこの2人の関係が終わってほしくない、変わってほしくないと願うようになっていたのです。

”先輩だって私の好きなもののこと、嫌いって言わないでよ”

自分のことが嫌いなこの自分に好意を寄せる人が信用できないと打ち明ける七海先輩。それに対する侑の声に出せない気持ちがあまりにも切ない。
作中で一、二を争う好きなシーンかもしれません。

君しか知らない

七海先輩を通じて特別な気持ちを知った侑が、ありのままの先輩を認めてあげて救いだす物語。

”知らないんですあなたしか”

生徒会劇のシナリオと同じくするように、誰かになろうとする七海先輩に侑が差し出した言葉でした。
これを書きながら最終話を見返していたら、挿入歌のタイトル「好き、以外の言葉で」が目に飛び込んできました。

今のあなたしか知らない。
まさにこれが”好き以外の言葉”なのかなと。侑が七海先輩を真正面から受け止めた、誠実で真っすぐできれいな言葉です。

ココロの位置が分かったよ

こうして自分の思考を整理していて、この作品はキャラクターへのスポットライトの当たり方とか、矢印の向きが自然に移り変わっていることに気が付きました。
2つの色が少しずつ混ざり合って、絶妙に溶けあっていくようなそんな印象でした。

登場人物の独白で物語が進んで、それぞれの心情が掘り下げられていって、自分の中にあるものを確認していく。
その過程で、キャラクター同士の感情が動いたり、心の機微がみられたり、こういう作品が改めて好きだと思いました。

アニメは原作の途中までみたいなので、ひょっとしたら原作を買うかもしれない。この物語をぜひ最後まで見届けたい。

最後に。
生徒会内の人間関係について何にも知らない能天気な堂島君も結構好きです。

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