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「クソ喰らえ」が励ましになる未来  ~もるげんよもやま話~

本当は普通にnoteの更新をしようと思っていたのですが、現在東京文フリの原稿作業で忙しく、記事を書く時間が取れませんでした。
というわけで、5/19の「東京文学フリマ」に参加いたします。
ブースは「た-61」です。短編集の頒布になります。

生もるげんに会える、数少ない機会なのでぜひご来場ください。

さて、今日はネットの海を漂っていた面白い研究について話そうと思います。


糖質カットせずにムキムキになれるのか

人間、筋トレするときに「糖質カット」をする方が多いでしょう。
正確にはPFC比(タンパク質、脂質、糖質)のうち、糖質を減らしてタンパク質を増やします。糖質は脂肪になるので減らしたいわけですし、タンパク質は筋肉になるので多く摂取します。
糖質(炭水化物)やらの栄養素は中学の理科や家庭科でも学ぶところになりますね。

しかし、世の中には「糖質ばかり食べているのに筋肉ムキムキ、マッチョマン」になる人たちがいるというのです。
それがパプアニューギニアに住む方々なのです。

この記事が、今回のタネ記事になります。
写真からも、めちゃくちゃムキムキなのが分かりますね……。

パプアニューギニアの彼らは主食を「イモ類」、つまり糖質に頼っています。逆にタンパク質などはあまり摂取しない、少なくとも我々ほどは摂取していないようです。
なのにこのボディービルダー顔負けの肉体ができるのはどうしてなのでしょうか。
東京大学の梅崎先生はこの疑問に立ち向かったわけです。

文字通り、”クソ”で。

今、クソがクソ熱い!

現在、医学や生理学を含め「クソ」の研究が近年稀にみる熱狂を見せています。
あのクールな研究者も、そこの美しい研究者も、こぞってみんな、「クソにお熱なのです!

どういうことかというと、「腸内細菌叢」と呼ばれる分野が非常に熱心に研究されています。

人間の胃、十二指腸、小腸、大腸には数百兆にも及ぶ細菌が活動しています。
この細菌たちの種類や分布が、人間のさまざまな活動に影響を与えているのです。
例えば潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患だけではなく、花粉症などの免疫疾患、がんなどにも関連していると言われています。
精神科領域でも統合失調症、うつ病、認知症だけではなくASDなどの神経発達症(発達障害)などでもその症状に関与していると考えられています。
様々な疾患や免疫系に影響を与えることから、「第二の脳」と言われることもあります。

梅崎先生の研究は、この腸内細菌叢が重要な役割を果たしているんじゃないか、という仮説で行われています。
人間はタンパク質を合成するのにアミノ酸という物質が必要です。アミノ酸が複数集まり、タンパク質になります。
そしてこのアミノ酸は窒素(N)を含んでいます。
窒素自体は空気中の8割を占めますが、このアミノ酸の形にするには窒素を生物内で取り込み、他の生物が利用できる形にする必要があります(固定、と言われたりする)。
例えば豆類はこの窒素を固定できるので、「畑の肉」などとも呼ばれるわけです。
重要なのは、「窒素を固定するのは、難しい」ということです。

パプアニューギニアの方々の糞便を調べると、未知の細菌が多く発見されたのです。
梅崎先生はこの細菌が利用できない窒素を利用できる形に変化させるのでは、と考えています。
ただの窒素では利用できませんが、アンモニアに変化させ、これがアミノ酸になれば人間でも窒素を利用できます。
この変化を細菌たちが引き起こしているのでは、というのです。
研究はまだ途中ですが、非常に面白い研究ですね。

クソ喰らえ、は勇気づける合言葉

この腸内細菌叢の研究、臨床では実際に利用が始まっています。
糞便移植という方法で。

簡単に話すと、潰瘍性大腸炎などの患者さんに健常な腸内細菌叢のクソ口から飲んでもらう、という方法です。

もちろん、そのままクソを食べるわけではありません。
カプセルに詰めたり、内視鏡で直接移したりするそうです。
欧米などでは実用化されつつあり、わが国でも研究の進んでいる治療法であります。
結局、「口からクソを入れる」というわけですが。

ひるがえって、もし様々な腸内細菌叢の実態が分かったとき、この「糞便移植」は素晴らしい治療になる可能性を秘めています。
さらに、梅崎先生の研究で窒素固定ができる腸内細菌叢が発見できた場合、「筋肉ムキムキになりやすいクソ」ができるわけです。

これは近い将来、様々な問題が「クソを喰う」ことで解決するかもしれません。
潰瘍性大腸炎で苦しんでいるのなら、「このクソを喰え」
うつ病になったときに「このクソを喰え」
そして、もし筋トレしてもムキムキになれない時、先輩のボディービルダーからこんな声を掛けられるかもしれません。

――俺のクソを喰え

クソを喰うこと、それは新しい希望になるかもしれません。
罵倒の言葉が誰かを励まし、勇気づけ、希望を与える言葉になった、らなんと素晴らしいことでしょうか。

冷静に考えて、まあ、こんな風には言わないでしょうけどね。

というわけで今日は可能性を秘めたクソ話でした。

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