見出し画像

シャーマンと様々なスピリット

「シャーマンと伝統文化の智恵の道」に書いた文章を編集して掲載します。


シャーマンは様々な霊的存在と関係を結ぶことでシャーマンとなり、その役割を果たします。

「守護霊(ガーディアン・スピリット)」、「守護動物(パワー・アニマル)」、「援助霊(補助霊、盟友、スピリット・ヘルパー)」、先祖シャーマン、祖霊、神々などです。

シャーマンのあり方は各地で違いがあるので、霊的存在の種類も様々で、これらを指す言葉にも幅があります。


パワーアニマル


シャーマニズムの社会の多くでは、シャーマンだけでなく、誰にでも「守護霊」が必要とされます。

祖先など、人間的な「守護霊」の場合、人格的な性質が強く、知識や助言、直観を与えてくれる存在です。
これは、ハイヤー・セルフとか「真の自己」と呼ばれるものを同じと考えることもできます。

一方、北米インディアンでは、一般に、「守護霊」は動物の姿をしているため、「パワー・アニマル」と呼ばれます。
これは、シベリアでは「保護霊」、メキシコ、グアテマラでは「ナワール」、オーストラリアでは「アシスタント・トーテム」などと呼ばれます。

ですが、「パワー・アニマル」は人の姿をもった人格的存在として現れることもあります。

「パワー・アニマル」は、何よりも「生命力」を与える存在です。

人は「パワー・アニマル」を持っていると心身ともに元気でいることができますが、「パワー・アニマル」を失うと元気を失い、重病になったり、体調が悪くなったり、病気にかかりやすくなるのです。

また、シャーマンにとっては、「パワー・アニマル」は、変身の能力を与えてくれる存在でもあり、また、健康などの問題に対するアドバイスをくれる存在でもあります。

「パワー・アニマル」となる動物には多くの種類があって、人によってどんな種類の「パワー・アニマル」を持っているかは様々です。

熊だったり鷲だったり、たいていは、哺乳動物か鳥類です。

「パワー・アニマル」を持ち続けるためには、定期的に呼び出して、ダンスを捧げる必要があります。

それでも、ある程度の時期が過ぎると、自然に離れていくことがあります。この時には、違った種類の新しい「パワー・アニマル」を探す必要があります。

パワー・アニマルは通常1人に1つとされますが、部族によっては2つ以上持つことができるとすることもあります。

シャーマンは、患者や自分の「パワー・アニマル」を求めて、主に地下世界にトリップして捜して、それを持ち帰ります。

心理学的には、「パワー・アニマル」は自我がこれから統合しようとしている無意識の力の象徴のような存在でしょう。


守護霊(ガーディン・スピリット)


シャーマンの「守護霊」は、先祖のシャーマンの霊や、祖霊であることもありますし、精霊的な存在や「パワー・アニマル」の場合もあります。

先祖シャーマンの霊は「守護霊」ではなくて、単なる教育係の場合もあります。

「守護霊」が異性である場合、霊的配偶者となることも多いのです。

シャーマンの「守護霊」は、シャーマンとしての役割を果たすために必要なあらゆる知識と技術を教える存在です。

そして、霊界にトリップする時には、道を示したり、シャーマンに憑依して「守護霊」に変身させて飛行させたりします。

シャーマンの「守護霊」は心理学的には一種のハイヤー・セルフ、つまり深層の自己のような存在でしょう。

また、トーテミズムの社会であるオーストラリアのアボリジニーでは、人間の「守護霊」はその人の氏族の「トーテム先祖」であり、その人間の霊魂もその「トーテム先祖」の分霊です。

「トーテム」は、動物など(植物、天体、自然現象)の名前で呼ばれ、その根源である先祖は半獣半人などの姿をしています。

人間は「トーテム先祖」の性質を内面に受け継ぎ、「トーテム動物」はそれを外面で受け継いでいます

南北アメリカにもトーテミズムはありますが、ここでは、氏族の「トーテム動物」と個人の「パワー・アニマル」は別の存在です。


動物の女主


伝統的な狩猟文化では、獲物となる動物には、その生死を司り、産み出する神的存在である「動物の主(動物の母)」がいて、そのもとからやってくると考えられました。
この主はたいてい女神であって、地母神や大母的存在です。

彼女は、多くの場合、山や海中の洞窟などに住んでいます。

日本で言えば、山姥や竜宮の乙姫様は、もとを辿れば、「動物(魚)の女主」でしょう。

シャーマンは部族の代表として、「動物の女主」と交渉をして、獲物を確保する役割を持っています。

そのための一つは、供犠の儀礼で獲物の動物の魂を送り返すことです。
正しく動物の魂を「動物の女主」のところに送り返すことは、「動物の女主」が動物を人間のもとに送り出すための絶対条件です。

シャーマン自身の体を、霊的ヴィジョンの中で「動物の女主」に捧げることもあります。
北欧神話の主神ヴォータンのように、樹(や十字架)に吊り下げられる神が神話に登場しますが、これはシャーマンのこの行為から来ています。

この儀礼においては、シャーマンは人間の代表であると同時に、供犠とされる動物とも同一化されるのです。

文化によっては、シャーマンが「動物の女主」と格闘したり命令することもあります。

また、彼女が持っているは動物の魂の入った袋から魂を盗んだりして、動物の魂を手に入れることもあります。

また、シャーマンは「動物の女主」と交わって、豊穣を保証することもあります。
これは聖婚儀礼の最古の形でしょう。


スピリット・ヘルパー


「スピリット・ヘルパー(補助霊、援助霊)」は病気にしたり、直したりする力を持った精霊的存在で、呪術的攻防でも使われます。

「スピリット・ヘルパー」には多くの種類があって、「守護霊」とは違ってシャーマンだけが持つことができます。

「スピリット・ヘルパー」の物質世界での姿は「パワー・オブジェクト(呪物)」と呼ばれ、多くは植物です。

ですが、シャーマンがトランス状態で見る本質、つまり魂の世界では、動物か昆虫、魚、鳥、場合によっては人間として姿を現します。

特に水鳥の「スピリット・ヘルパー」は、水陸空の3界で行動できるため強い力を持っています。

見て何か力を感じさせるもの、心魅かれるものはすべて「パワー・オブジェクト」です。
それはシャーマンが身につけるべき力を象徴していて、「スピリット・ヘルパー」を持っているのです。


「スピリット・ヘルパー」は、敵の攻撃を撃退するために必要です。

敵と同じタイプの「スピリット・ヘルパー」だけがその外敵を撃退できるのです。

そのため、シャーマンは多くのタイプの「スピリット・ヘルパー」を身につけている必要があります。

特に、水鳥以外にも、クモ、ミツバチ、スズメバチ、蛇の姿をした「スピリット・ヘルパー」は、強力なので必須です。

シャーマンはいつ攻撃を受けてもいいように、常に「パワー・オブジェクト」をメディスン・バッグの中に入れて歩いています。

シャーマンによっては、常に胃の中に消化されない「パワー・オブジェクト」を入れたままにしているシャーマンもいます。

呪術師(黒シャーマン、妖術師)は、相手を攻撃するために「スピリット・ヘルパー」を放ち、相手の体に差し込むことがあるので、「スピリット・ヘルパー」は「魔法の矢」とも呼ばれます。

胃の上部に精霊体の「スピリット・ヘルパー」の力を蓄えていて、粘液とそれを共に吐き出して、攻撃のために口からそれを放つ呪術師もいます。
死んだ動物の骨や歯などに霊を吹き込んで送り出すこともあります。

治療を行うシャーマンは、患者から「魔法の矢」を自分の口に吸い出して、飛んで来た方向に吹き返すか、安全な場所に捨てます。


「スピリット・ヘルパー」は、病気を治療してくれる存在でもあります。
その植物が薬草として患者に飲食される場合もありますが、それは「スピリット・ヘルパー」のスピリット・メディスンの本質ではありません。

患者が飲食する場合もありますが、スピリットのつながりのためであって、シャーマンがタバコとして吸ってその煙を吹きかけることもあります。
「スピリット・ヘルパー」に治療法を尋ねる場合もあります。


幻覚性植物は、特別な「スピリット・ヘルパー」を持っています。
その植物に特有な幻覚作用によって、魂の世界に案内してくれるからです。
それらは、様々な知識をさずけてくれる存在で、「盟友(アライ)」と呼ばれたりします。


「パワー・オブジェクト」や「スピリット・ヘルパー」には多くの種類があって、これを4方に配置したり、12の月に配置したりして、体系化がされていることもあります。
これは、後世におけるマンダラや象徴体系の原型と考えることができます。


スピリット・ヘルパーの獲得方法


邪霊を撃退するために必要な「スピリット・ヘルパー」の獲得法を、ヒロバ族の方法を元にマイケル・ハーナーが解説しているので、それを中心に紹介しましょう。

まず、森などの自然の領域を歩いて、注意を引く植物を探します。
この植物が「スピリット・ヘルパー」を持つ「パワー・オブジェクト」なのです。

その植物が毒を持たないことを確認したら、植物に事情を説明して許可を得てから、その植物の一部を切り取って食べます。
代わりにきざみタバコのような贈り物をするシャーマンもいます。
そして、同じくその一部をメディスン・バッグの中にも入れます。

その夜、地下世界へトリップして、その植物が2度現れるまで待ちます。
次に、それが植物以外の姿に変身するまで観察します。

そして、2本の植物(2体のスピリット・ヘルパー)をそのまま食べます。

「スピリット・ヘルパー」は、ヴィジョンの中で、その植物ができる治療の能力や、邪霊撃退の能力について教えてくれます。

このようにして「スピリット・ヘルパー」を次々と身につけていくのです。
「スピリット・ヘルパー」の数が多いほどシャーマンの治療能力は高まります。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?