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小説 石丸伸二④

秘書鈴木から見た石丸伸二という男

決戦!安芸高田市長選③

石丸伸二との邂逅から、しばらく経ったある日のこと、以前と変わらない日々を送っていた鈴木は

突然、副市長の潮田からの呼び出しを受ける
普段関わることのない上役からの呼び出しに、不安を感じながら会議室に入ると

そこには副市長と伏目がちな松本、そして不機嫌そうな顔をした、見た事のない老人が座っていた

そして、鈴木が座るなり

副市長が
『鈴木君、今日どうして、ここに呼ばれたか理由はわかっているよね?』

と切り出した、

鈴木が、『えっ?あっ、いや…』

と答えると、

老人が
『この裏切り者が!白々しい演技しやがって!』と怒鳴りつけてきた

副市長が、
『まぁまぁ、碇さん、そう怒鳴らなくても。
あのね、鈴木さん、君が数日前にある男と居酒屋にいたのを見た人がいるんだよ。それは本当かい?』と言ったので

ハッとなって、松岡の顔を見ると、バツが悪そうに松岡は目を逸らした

これは不味い状況だと思いながら、
『それは、松岡に誘われて…』と言うと

碇と呼ばれた老人が、
『言い訳するな!松岡から聞いたぞ、
 お前が誘ったらしいな!』

( ハメられた… )

どうやら、自分が松岡を誘った話になっているらしい

自分が松岡を誘い、副市長の対立候補である石丸伸二を紹介して、言わば石丸のスパイになるよう持ち掛けたとの事だった

3人で居た所を誰かに見られたらしい、狭い町では噂に尾ひれが付いて、次の市長候補を追い落とす密談が行われたと噂になっていると

松岡は問い詰められ、とっさに私が首謀者だと言い逃れたらしい
上司からの信頼も厚い松岡は、涙ながらに居酒屋での出来事を語り、全ての罪を私に擦りつけた

呆然としている私に、副市長が冷たい笑みを浮かべながら
『裏切り者は許さないよ、ただ、私も鬼じゃない、ひとつだけ君が生き残る道があるが、聞く気はあるかい?』と問いかけてきた

私は、『ど、どうすれば?』と聞くと

副市長は、
『簡単な事だよ、君が石丸陣営の情報を流してくれたら、君を信じようじゃないか。
それどころか、これから先も良い関係を築けると思うんだが、どうかな?』

私に拒否権はない、どんな条件でも呑むしか道はないのだ

『ぜ、是非やらせて下さい、何でもやりますから、お願いします』
と答えると

『そうか、それでは期待しているよ。
 今後どうなるかは君次第だからね。』

そう言うと、副市長達3人は、会議室を出て行った

エアコンが効いているはずの部屋で、気付くとじっとりとした汗をかいていた

そして、この会議室で起きたことが夢でない事を改めて実感した

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