名古屋大学2023年度理系[3]

問題

(1) 方程式 $${\displaystyle e^x=\frac{2x^3}{x-1}}$$ の負の実数解の個数を求めよ。
(2) $${\displaystyle y=x(x^2-3)}$$ と $${\displaystyle y=e^x}$$ のグラフの $${x < 0}$$ における共有点の個数を求めよ。
(3) $${a}$$ を正の実数とし, 関数 $${f(x)=x(x^2-a)}$$ を考える。     $${y=f(x)}$$ と $${y=e^x}$$ のグラフの $${x<0}$$ における共有点は $${1}$$個のみであるとする。     このような $${a}$$ がただ $${1}$$つ存在することを示せ。

解答

(1) $${x<0}$$ のとき $${\displaystyle e^x=\frac{2x^3}{x-1}}$$ が成り立つことと $${(x-1)e^x-2x^3=0}$$ を満たすことは同値である.     $${g(x)=(x-1)e^x-2x^3}$$ とおく.     $${\displaystyle g(-1)=-\frac2{e}+2>1}$$ かつ $${g(0)=-1}$$ だから中間値の定理より $${g(x)=0}$$ は $${-1<x<0}$$ の範囲に少なくとも1つの解をもつ.     この解を $${x=\beta}$$ とおく.     $${x<0}$$ のとき

$$
g'(x)=xe^x-6x^2=x(e^x-6x) < 0
$$

だから $${g(x)}$$ は減少関数であり $${x<\beta}$$ のとき $${g(x)>0}$$, $${\beta<x<0}$$ のとき $${g(x)<0}$$ が成り立つ.     よって, 与方程式の解は $${\beta}$$ ただ 1つである.

(2) $${x=0}$$ のとき $${x(x^2-3) < e^x}$$ かつ $${x=-1}$$ のとき $${x(x^2-3) > e^x}$$ である.     さらに $${x=-\sqrt3}$$ のとき $${x(x^2-3)=0<e^{-\sqrt3}=e^x}$$ である.     よって $${y=x(x^2-3)}$$ と $${y=e^x}$$ は $${-1 < x < 0}$$ の範囲と $${-\sqrt3 < x < -1}$$ の範囲にそれぞれに少なくとも1つの共有点をもつ.

$${y=x(x^2-3)}$$ と $${y=e^x}$$ が 3つの共有点をもつと仮定し矛盾を導く.     共有点の $${x}$$ 座標を $${\gamma_1, \gamma_2, \gamma_3}$$ とおく.     ただし, $${\gamma_1<\gamma_2<\gamma_3<0}$$ とする.

$$
\gamma_1(\gamma_1^2-3)=e^{\gamma_1}, \quad
\gamma_2(\gamma_2^2-3)=e^{\gamma_2}, \quad
\gamma_3(\gamma_3^2-3)=e^{\gamma_3}
$$

である.     2つの共有点を $${\displaystyle \mathrm{P}\left(\gamma_1,e^{\gamma_1}\right)}$$, $${\displaystyle \mathrm{Q}\left(\gamma_3,e^{\gamma_3}\right)}$$ とする.     $${(e^x)''=e^x>0}$$ だから曲線 $${y=e^x}$$ は下に凸であり $${\gamma_1< x < \gamma_3}$$ の範囲で直線 $${\mathrm{PQ}}$$ より下にある.     とくに $${\displaystyle\left(\gamma_2,e^{\gamma_2}\right)}$$ は $${\mathrm{PQ}}$$ の下にある.

$${x<0}$$ のとき $${\left(x(x^2-3)\right)''=6x<0}$$ である.     よって $${y=x(x^2-3)}$$ は $${x<0}$$ において上に凸であり $${\gamma_1<x<\gamma_3}$$ の範囲で直線 $${\ell}$$ より上にある.     とくに $${\displaystyle\left(\gamma_2,\gamma_2(\gamma_2^2-3)\right)}$$ は $${\mathrm{PQ}}$$ の上にある.     曲線 $${y=e^x}$$, $${y=x(x^2-3)}$$ と直線 $${\mathrm{PQ}}$$ の関係から $${\gamma_2(\gamma_2^2-3)>e^{\gamma_2}}$$ でなければならないが, これは $${2(\gamma_2^2-3)=e^{\gamma_2}}$$ に反する.     したがって, 共有点は 2個である.

(3)   (1) の方程式の解 $${\beta}$$ に対して $${\displaystyle a=\frac{\beta^2(\beta-3)}{\beta-1}}$$ とおく.     すると,

$$
\beta(\beta^2-a)=\beta\left(\beta^2-\frac{\beta^2(\beta-3)}{\beta-1}\right)
=\frac{2\beta^3}{\beta-1}=e^{\beta}
$$

であり, $${(\beta,e^{\beta})}$$ は $${y=x(x^2-a)}$$ と $${y=e^x}$$ の共有点である.     $${y=e^x}$$ の $${x=\beta}$$ における接線を $${\ell}$$ とすると $${\ell}$$ の傾きは $${e^{\beta}}$$ である.     曲線 $${y=e^x}$$ は下に凸だから $${y=e^x}$$ 接点を除いては $${\ell}$$ より上にある.     $${x=\beta}$$ における $${y=x(x^2-a)}$$ における微分係数は

$$
3\beta^2-a=3\beta^2-\frac{\beta^2(\beta-3)}{\beta-1}
=\frac{2\beta^3}{\beta-1}=e^{\beta}
$$

だから $${\ell}$$ は $${y=x(x^2-a)}$$ の $${x=\beta}$$ の接線でもある.     $${y=x(x^2-a)}$$ は $${x<0}$$ で上に凸だから $${x<\beta, \beta<x<0}$$ の範囲で曲線 $${y=x(x^2-a)}$$ は直線 $${\ell}$$ より下にある.     したがって, この範囲で $${y=e^x}$$ と $${y=x(x^2-a)}$$ は共有点を持たない.

独り言

上に述べた解答では別の記事でも紹介した凸関数の性質を積極的に用いた.     この答案の (2), (3) が実際の入学試験の採点でどう評価されるかはわからないので試みに入学試験でも使えそうな答案を有料エリアで紹介する.

別解

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