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『やりたいことは、まず、やってみよう!』

久しぶりの休日。ひろみは都内一等地の自宅マンションの一室で、のんびりと窓の外に広がる美しい景色を眺めていました。広告会社での企画・編集の仕事は順調でしたが、やればやるほど、自分の思うような企画が通りにくい現実をもどかしく感じるようになってきた今日この頃です。さらに、30歳独身の彼女には、離れて暮らす両親からの、結婚しないのか圧力が重くのしかかります。

経営者の父と専業主婦の母のもと、なに不自由なく育ってきたひろみは、周りからの洗脳もあって、自分もそのような人生を歩むのだろうと信じていました。そのため、就職は、ほんの人生経験のひとコマぐらいの、軽い気持ちだったのです。ところが、一人暮らしをしながら仕事でもまれ、様々な人に出会い、色々な経験をしていくうちに、信じていた自分の人生に違和感を覚え始めていたのです。けれども、その気持ちさえも、忙しさで紛らわせていました。

そんな中での、ぽっかり空いた時間。心地よい部屋の一角でのんびりしていたひろみの脳裏に浮かんだのは、いくつかの、未来の自分の姿でした。今でも、スラっとして綺麗な顔立ちのひろみですが、浮かんだ姿のひとつに、キラキラ輝いている自分の姿を見つけたのです。数人の生き生きした仲間たちとともに、満面の笑みを浮かべながらも、どうやら仕事をしているようです。

「何?」ひろみは考えました。すると、実は最近、企業の中では、内容の良さだけでは企画が通らないことを痛感していたので、少しずつ起業について勉強していたのですが、そのことと繋がりました。
「やってみないと先のことなんてわからないわよね。初めてだもの、失敗したっていいじゃない。そこからまた、やり直せばいいのよ!」
「なにを恐れていたのだろう。お金も充分あるし、健康だし、やりたいという気持ちも溢れているし、同じ想いの仲間数人にも出逢うことができている」
「今見えた、キラキラした自分や仲間たちは、きっと私の未来!間違いない!」
「目に浮かぶわ。私たちの仕事が役にたって、今の子どもたちだけでなく、これから何世代も先の子どもたちが、ワクワクしながら美しい地球に住み続けられている姿が!」

これをきっかけにひろみは仲間とともに起業し、輝かしい未来を織物にすることにしました。高貴で穏やかな光に満ちた緑の地球。金色、紫色、緑色の特別な織り糸で。揃えてみると何か足りないと感じ、全体を引き締める、全ての色が入った黒色の糸だと気づきます。

しかしこの織り糸は、特別な糸なうえに、黒はとても貴重な色と言われていました。それを探すために、仲間たちに相談したところ、入手できそうな所が見つかりました。早速訪ねてみると、最後のひとつが、少し前に売れてしまっていました。

さくらはふたたび仲間と相談します。「諦めない。絶対見つかる」という気持ちで皆がひとつになると、仲間のひとりが思い出します。この特殊な織り糸だけを使った貴重な織物の話を。そこから織物の作者を探し出して、訪ねたところ、ひとつだけ残っていた貴重な黒の糸を譲ってもらえることになりました。

これで織りあげられます。子どもたちも大人たちも、動物たちも、全ての生命体が生き生きと暮らしている地球。暗黒の宇宙の中で、高貴で穏やかな光に満ち溢れた緑の地球が完成しました。ひろみも仲間たちも今の幸せを感じながら、自分たちの思い描く未来へ向けてワクワクでいっぱいでした。

おしまい

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