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良き理解者であり心友


小学生の高学年の頃、学校が少し荒れていた。

というよりは、私たちの学年だけが荒れていた。誰も手をつけられなくなって、病気や何かで学年の半分の担任が途中で交代になった。

毎日が参観日だった。それでもお構いなしだった。私は、ただ毎日が退屈だった。だから外へ出た。

その頃から仲良くなった心友の話をしよう。


その子は男の子である。私に好意を寄せていた。

私に恋愛感情は一切なかったので、告白を受けてからも関係は変わらずずっと仲良しだった。

彼はいつも私の味方でいてくれたと思う。


中学校に上がって、部活に新生活に追われていた。

クラスの子と馴染むのが精一杯だった。彼は毎晩連絡をくれた。いろんな報告をしてくれたけれど、同じクラスだったから全て知ってる内容だった。


二年になって、学校に行くのが辛くなる出来事があった。

私は男友達には恵まれていたので、その辛い出来事のときにもたくさんの男友達が声を掛けたり手を差し伸べてくれたけれど、それらは全て火に油を注いだ。

彼は私に「あまり表立って言うと余計にヒートアップするだろうから、何か出来ることあればメールで教えて」みたいな内容のメールをくれた。

彼は一手先を読んで、私に優しさをくれた。

彼はモテる人だった。もちろん優しいから今考えるとモテて当たり前かもしれない。

三年に上がる前、担任の先生に尋ねられた。「誰が同じクラスなら乗り越えられそうか?」と。私は迷わず彼の名を出した。


進級当日。私のクラス名簿のなかに彼の名はなかった。

彼との仲の良さのせいで、私の抱えていた問題が余計に拗れるのを心配した先生たちが敢えてクラスを離したと後から聞いた。少しさみしかった。


そのあとすぐに、初めての彼氏が出来た。
恋人は心友の部活の先輩だった。だから、少し距離が生まれてしまった。


うちに、心友は家庭の事情で転校することが決まった。

彼氏が居ることをわかっていながら、彼は私の恋人に断りを入れてその事実を伝えるため、私を呼び出した。

今思うと、彼はずっと私を密かに好きで居てくれたんだと思う。

「成人式の日、この街に戻ってくるから、そのときデートしてください。一緒にお酒飲もう。」

そう告げられたことを、今でも忘れられない。


大学生になった頃、心友から久しぶりに連絡がきた。

「あの時の約束、まだ覚えてくれてる?」


結局、成人式後の同窓会で顔を合わせたものの、お互い試験期間で忙しく、居住地も離れていたため、そのデートの約束は果たされぬまま彼は一昨年結婚した。


ずっと味方で居てくれたアイツが、昨日夢に出てきた。それだけで、涙が溢れ出た。

久しぶりに連絡しようとLINEをスクロールして、やっぱり送るのをやめた。
やっぱり男女の友情は、どちらかが結婚すると成立しづらくなる。


よしゅ。元気にしてる?あの時はありがとう。

一度も恋愛関係にはならなかったけれど、たくさんたくさん支えてもらいました。ありがとうが直接伝えられなくなってから気付いてごめんね。

またいつか会えたら、笑って手を振るよ。



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