あいみょん『おいしいパスタがあると聞いて』

2020年9月9日発売、あいみょんの3rdフルアルバム。

先月か先々月か、書店の音楽雑誌コーナーの表紙があいみょんばかりだったような気がする。それほど今とても人気のあるシンガーソングライターあいみょん。

僕があいみょんを知ったのは、FM802の春のキャンペーンソングで、クリープハイプの尾崎世界観が作詞作曲した「栞」という曲に参加しているのを聴いた時だった。

僕はこの時全く知らなかったが、「わりと声の低い女性アーティストだ‥」というぐらいの感想だった。その数ヶ月後には『マリーゴールド』がヒットし、あっという間に知名度が上がっていった。その時、シングル曲をテキトーに試聴してみたりした覚えがある。

なので、これまであいみょんの過去の楽曲は、代表的な曲しか聴いてこなかったので、今回初めてこのアルバムでしっかり楽曲と向き合ったことになる。

まずタイトルとジャケットだ。
前作や前々作のタイトルを調べると『青春のエキサイトメント』『瞬間シックスセンス』と、漢字＋片仮名（乏しい表現ですみません）のアーティスティックな感じだったのに対し、台詞というか、今めちゃくちゃ売れているアーティストが"結構テキトーにノリで付けた感"がある。

ジャケ写は、チューリップ型に形成されたパスタに虫が群がる。これは逆にアートっぽい。

基本的にあいみょんの楽曲はギター1本、コード進行を決めて歌を吹き込んでいく。その出来上がりに他の楽曲を加えていくというスタイルだと思う。シンプルな構成というか、王道のシンガーソングライター。

聴いた率直な感想、めっちゃ良い！けど、ちょっとイメージとは違ったかも！という感じ。

M1. 「黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を」ここから普遍的な詞で聴き手をがっつり掴む。"愛は全てを解決しない　金があれば何でもできるかもしれない"。
色んな過去を振り返るが、曲の締め括りには"余裕のある人はかっこいい　でも余裕のない人生は燃える"と歌う。自分自身に重ねたくなるフレーズだ、まだまだやれる。不安なく余裕で生きててもそれは退屈だ。

M2.「ハルノヒ」これは劇場版クレヨンしんちゃんとタイアップしていたのを覚えているが、歌い出しは"北千住駅の〜"と始まる。それはともかくこの曲のメロディーは抜群に良い。街で流れているBGMで数回サビを聴くだけでも好きになれてしまう。

M3.「シガレット」でほんの少し鬱な彼女が垣間見れる。昔はもっと凄かったよね‥しっかり聴いてないけど、この曲のようなイメージ。コードももっと暗いような。

M4.「さよならの今日に」は配信限定のシングルらしい。結構良い、気負いながらも過去のロックスターやプロボクサーはどう生きたのかと考える彼女に素朴な人間らしさを感じる。

M5.「朝陽」で"乾電池みたいな女だよ"や"心のシュレッダーの刃はもうガタガタだよ"と歌い、M6.「裸の心」へ。メロディーに既視感を感じる人が多数いるみたいだけど、そんな曲は無数にある。よくあるコード進行だから。そんなことは置いといて、アルバムの中の1曲として光っていると思うし、曲順もベスト。単体としても良いし、人気があるのがよく分かる。

M7.「マシマロ」の歌詞は、マシマロやチョコレートを比喩に少しエロティックな内容に。「裸の心」の後だからか、どこか軽快だ。

M8.「空の青さを知る人よ」これも確かアニメ映画とタイアップしていた曲だったと思う。結構気合い入れて作った曲なんじゃないかな、構成は「ハルノヒ」と似ているけど、サビのメロが本当に良い。この曲の世評はどうなんだろう、もっと注目しても良い曲だ。‥自分がこの路線好きなだけかもしれないけど。

M9.「真夏の夜の匂いがする」これもシングルらしいが、サビまではこれまでとは少し違ったアプローチで面白い。ちょっとダークな感じだけど、サビではやっぱり明るい音になる。

M10.「ポプリの葉」で忘れらない記憶の中の香りを歌い、M11.「チカ」でも引きずった恋心を歌っている。結構終盤は消極的だ。

M12.「そんな風に生きている」では、今までネガティブだったり、ポジティブだったり、色んなことがあったけど、最終的にはどちらでもないような振り切ったような感情が歌われている。
"生きていく術は人それぞれ　だから私はいつも風まかせ　そんな風に生きてる"

最終的に「前向いていこうぜ！」と落とし込むのではなく、どっちつかずな曲で終わる。演奏は止まり、彼女の鼻歌だけが響きフェードアウト。

過去作から聴いている人からすれば、全体的にかなりキャッチーになった印象を持つ人が多数派なんだろうけど、わりと無知なリスナーからすれば充分にあいみょんの世界観を体感出来るアルバムだと思う。過去作も聴きたくなる。

おしまい