【取材した奇談28】街の珍人、二題
【1話目】ビキニおばさん
智昭さんは、郵便局の窓口業務を担当している。
その出来事は、ある夏の昼下がりに起きた。
「いきなりビキニ着た女性が入ってきて。四十代ぐらいのおばさん、って感じの。派手目のビキニに、ポシェットみたいなのを持ってました」
局内にいた職員と利用客の視線が、一斉に彼女に注がれる。
その状況に、女は叫んだ。
「テメェら、何みてんだよッ」
その後は複数の職員によって、速やかに外につまみ出されたという。
「そりゃあ、そんな格好してたら誰でも見ますよね」
呆れた彼の言葉に、私は強く頷くほかなかった。
【2話目】江東区おじさん
かつて東京都千代田区路上に、〈江東区おじさん〉という男が出没していたらしい。年齢は当時で三十代ぐらい。
彼はどこからともなく自転車を蛇行運転しながら現れ、路上に立って呼び込みをしている店員に接近して自転車を停める。次いで、どこからか東京都の地図を取り出して開いて店員に見せ、地図を指さしながらこう問いかける。
「江東区、知ってる? ここ、江東区。江東区。江東区」
彼から発せられる単語の9割が「江東区」。
無視すると、再び自転車を漕いで去っていく。
彼が何者だったのか、全く不明である。
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