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音楽と雑音

音楽の記事を今まで何回か書きましたが、わたしは音楽の専門家ではない、ただの素人です。それでも音楽に関心ある心広い方々がこちらにお越しいただき、幾ばくか楽しんでもらえたようです。

では、今日も、柔らかいものから順に行きましょう。

雑音は音楽かと訊いたら大抵の人は、音楽ではないと応えるでしょう。つまり雑音でないものが音楽であるという定義。でも、このよく知られている曲を聴いてください。

「悲しき雨音」歌:シルヴィ・バルタン
(フランス語の歌詞があったとは知りませんでした)。

雷鳴から始まっています。他にも雨、風、嵐、水の流れ等々の音が入った楽曲が沢山あると思います。まあ、ここは曲ではなく、単なるアクセサリーのようなものと言われる方も居るかも知れませんけれど…(音がなくても、雨や風の音を聞こうというような文句の入った歌詞もありますよね。)
クラシック音楽にも、警笛を鳴らしたりするものもありますし(巴里のアメリカ人)……いやいや、もっともっと作品全体の一部としての雑音(騒音?)もあります。

Michael Jackson, Janet Jackson - Scream
(もっと適切な音楽の例があるかも知れない)

では逆に音楽は雑音になるでしょうか。聞きたくないのに聞こえてくる歌・音楽、そういうのはその人にとって雑音(あるいは騒音)と同じでしょう。こうなると、聞く態度のほうが問題になります。

雑音を入れた音楽は昔からあります。三味線には「さわり」というものがあり、濁った音を出します。

伝統音楽デジタルライブラリー 三味線 「サワリの話」

実は、こういう「さわり」のように濁った音を出す楽器はアジアの各地にあるとのことです。例えばインドのシタールやビーナなど…。現代では、こういう濁った音を電子的に加工して作ります〜〜かってテクノ・ポップとか呼ばれていたもの(?)。今もそんなふうに呼ぶのかどうか知らないけれど、ヒップホップやいろいろな分野において流用されています。

KEIJU - Let Me Know

これなんか映像にも“雑音”が入っています(わたしには、ファンタジックな感じがします)。音楽だけでなく、絵画や映像にも“雑音”は効力があるものなのでしょう。

ところで、話は変わりますが、日本人は母音を左脳で聴き取るそうです。左脳というのは、言葉や計算など、論理的なことを司り、他方、右脳は、音楽や絵画など感情的なことを司るようです。つまり日本人は母音を「意味のある言葉」として聞いているのです。
欧米人は、母音を右脳で聞きます。日本人は、母音だけでなくハミングや虫の声なども左脳で聞きます。欧米人は右脳を使います。(子音と母音の組み合わせである音節としては、欧米人も左脳で聞くようです→下図参照。)

以下、角田忠信氏(医学者)による研究から。

《日本人
左脳     |右脳

計算     |音楽
言語音    |
 子音、母音 |
感情音    |雑音、機械音
 泣、笑、嘆 |
ハミング   |
鳴き声    |
 動物、虫、鳥|
邦楽器音   |西洋楽器音
 ¦      |▶▶もの
 ↳▶▶心、ロゴス的、パトス的、自然

《欧米人
左脳     |右脳

計算     |音楽
言語音    |
子音(音節) |母音、ハミング
       |雑音、機械音
       |感情音(泣、笑、嘆)
       |鳴き声
       | 動物、虫、鳥
       |西洋楽器音、邦楽器音
▶▶ロゴス的 |▶▶パトス的、自然

日本人は虫の鳴き声(蝉、鈴虫など)に情緒を感じますが、欧米人は虫の鳴き声を単に雑音として聞いているという話もよく聞きます。
個人的なことですが、フルートの独奏を聞いていたとき、なにか喋っているように聞こえたことがあります。上の研究とは異なるようですけれど…。

Noise Music という雑音そのものを扱う音楽ジャンルもあるようです。以前紹介した沈黙の音楽「4分33秒」(ジョン・ケージ作)も、“演奏中”の雑音を聞くこと(あるいは聞くという態度)ではないかと思います。亡くなった方ですが現代音楽家の武満徹氏は、沈黙のなかに無数の音がうごめいている、と言うようなことを話していたと思います、わたしにはよくわかりませんが…。ところで〜

〜7年ほど前、スウェーデンの青年(日本の高校生ぐらい)と音楽などについていろいろ話し合ったことがあります。彼曰く…

音楽は……音の感覚という限界がある。でも、どんな音も音楽になるんだ、ただ感覚器官に頼っているけれど。例えば、ぼくはnoise musicをよく聴くんだ。多くの人にとってそれは気持ちの悪いおぞましい雑音に過ぎないけれどね。(実際、日本には最高のnoise musicがあるよ。MasonnaやMerzbowが僕のお気に入りだね。でも、検索しないほうがいいと思うよ。偏見は持ちたくないけど、あなたがこんなものを好きになるとは思わないので。)
それに、こんなことも思う。音楽は現実的な音でなくてもよい、それが音と同じように感じられるなら、音楽と呼んでいいのではないかと思うんだ。ベートーベンは耳が聞こえなかったけれど、立派な音楽を作ったよね。たぶん彼はどこか別の所に音楽を感じていたんじゃないかな。

「どこか別の所に…」、沈黙の中に無数の音ありってこのことかなあと…。

確かにMasonnaは、前衛的で過激です。(見ないことを勧めます!)
Merzbowについては、宇宙空間で聞く音のようだと返事したけれど、彼も肯定していた。ノイズは食事の間に取る生姜のように、気分を爽やかにするものなのだと…。

ホーミーもよく歌うよ。いろいろな歌い方を習いたいと思ってるんだ、うまく行かないけれど。メタルでゴウゴウ叫んで練習したりしてね…。 アイヌのRekuhkara, ヨーデル, スウェーデンの北に住むSami族のJojk(ヨイク)なども習いたいな。
[日本の]能楽も好きだよ。

ちょっと変わった趣味を持っていますが、真面目な青年でしたよ。今どうしているのか、大学も卒業しているだろうし…。

Masonna, Merzbowについては、ここに紹介しません。興味がありましたら、ご自分でお調べください。代わりに、もう少し柔らかいNoise musicを最後に紹介しておきます。

最後、思い出話になってしまいました。
まとまりのない話を読んでいただき、ありがとうございました。

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