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窓に映る風景

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童話詩、物語
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窓に映る情景

何年か前の何でもない日のほのかな思ひ出のなか、 夕空には薄雲が流れ、おぼろに月影が見える。 青い服の人形と赤い服の人形が窓の外を見てゐる。 (今日も日が暮れてゆくわ) (もう日が山の陰に沈んでゆく) (あのバス停に男の人がゐるわね) (女の人もやつて来たよ) (男の人が女の人を見てるよ) (女の人も男の方をちらつと見たね) (でも二人ともすぐうつむいた) 風が吹き、落ちてゐる枯れ葉が渦巻く。 男の足元にも枯れ葉が取り巻く。 (バスがやつて来た) (あれ?バスは行つちや

“What is a youth?” 和訳詞

今月初旬公開した和訳の歌詞、映画「ロミオとジュリエット」の中で歌われている“What is a youth?”、の改定版の訳詞です。メロディーに合わせて歌えます。 初版の記事を少しずつ手直ししていました。 まだ詞の流れ、訴えるもの、まとまりがイマイチ😓ですが、ここで一旦終わります。またいろいろ勉強してみます。初版にスキをして頂いた方に感謝致します。 ✧✧✦✦✧✧ おまけ 海外の歌詞の秀れた和訳は昔からたくさんあります。「埴生の宿」や「庭の千草」などなど、簡潔であって心

ロミオとジュリエット、What is a youth?

前回に続けて音楽……作詞の記事です。 早速聴いてみましょう。 1968年の映画「ロミオとジュリエット」のなかで歌われている“What is a youth?”という歌です。ロミオをLeonard Whiting、ジュリエットをOlivia Husseyが演じています。歌っているのはグレン・ウェストン(Glen Weston)という方だそうです。 1968年というと、わたしが高校生の時でした。テレビの教育番組で英語の先生がこの歌を紹介していたのをかすかに覚えています。しかし

冬の花舞台

冴え冴えと赤く匂へる山茶花の 花舞台なる雨上がりの道 冬は侘しい。そんな中、山茶花は冬をいろどる花… さて、花舞台の準備が整いました。 歌ってもよし、踊ってもよし… でも、まわりを見ても枯れ草ばかり… おまけに曇り空… いったい観客はどこに… やっぱり冬はどことなく侘しいね。 いいえ、ご覧、カラスがやって来たよ、 鳩や、白鶺鴒も、 ほらあんなところから雀の兄弟が覗いている。 皆あなたの顔を見つめて、 今から始まるショーを待っている。 鮮やかに赤く咲き敷く山茶花の 散り花湿

昔、美はどこにでもあると思っていた頃があります。 例えば、歩く犬にさえ美しさを感じていました。 今はその感情を正確に言うことはできませんけれど、 少しまだ残っています。 そのどこに美があるのでしょう? 歩く姿に?犬の表情に?歩く目的に?歩く犬という風景に? 多分… それら総てに、 そしてわたし自身まだ気付いていない秘密のところに、 美しさはあるのです。 この世界の出来事や個々の思い…ただ過ぎゆくなかに、 ただ軽く椅子を触ったり ただ軽く冗談を言ったり 家事をしたり 店で品物を

沈丁花の歌

2月4日(つぼみ) 春秘めて未だ堅きつぼみなり 心をともに思ひ待つ日々 2月13日(一つ二つ咲き始める) 何にあれ小さきものはうつくしと 今日生まれこし子のごとく愛づ ▶参考、枕草子に  「なにもなにも ちひさきものは みなうつくし」  “うつくし”は、“可愛らしい”の意 (典拠の段番号は編集出版社によって異なる、角川146段、新潮144段、岩波151段とのこと) 2月24日(ますます開く花) 吾妹子が摘みし一房差しいだし  かぐはしきかな君も香を聞け 2月27

道、選択、現在、偶然…

少年- 僕はこの道がいい。 少女- わたしはこっちの道が… 少年- そっち、行ってみようか。 少女- …ねえ、どうしてさっきあの道がいいって…? 少年- なんか面白いものがありそうだった。 少女- ふうん…好奇心旺盛なんだ。 少年- 何か情熱を探したいんだな。 少女- 見て!あそこに「占いします」だって! 少年- ちょっと寄ってみよう、こんにちは。 占師- はい、どうぞ、何をお望みで? 少年- えーっと、明日の天気は? 占師- ふむ、曇りだね、少し雨が降るかも。 少女-

氣品一本

生業(なりはひ)に急ぐ小径のわきを見れば氣品一本曼珠沙華立つ

宇宙船の旅

ぼくはまだ死んでいないようだ ときどき何かが聞こえてくる ささやくように呼んでいる かすかな声に耳を傾ける そしてそれに答える。 ぼくは宇宙船ヴォイェジャー1号。 1977年9月5日、ケープカナベラル基地から タイタン・セントールロケットによって 打ち上げられた 轟音とともに、まっすぐ空へ天に向かって上へ… 目的地は、木星と土星… そして…果てしない星間宇宙へと ぼくは興奮した、希望に満ちていた、楽しかった。 地球の仲間たちもはりきっていた。 みんなに見送られて、ぼくは、

“存在”の波に揺られて

その少年の後ろに、見つめる者が居る、 少年は踊つてゐるけれども、自分では意識してゐない、 自身は、ただ単に歩いてゐる、 いや、歩いてゐるといふ意識もない、 見つめる者は、その見てゐるものから、世界を作り上げる。 人は、 ささいなことであつたとしても、そこに意味を作り上げて、存在させる、  ことができる、 虚しいまぼろしであつたとしても、そこに世界を作り上げる、  ことができる。 存在は活動であり、それによつて存在ができあがる、 思ふことも、考えることも、感じることも、“存在

ダンスがすんだ

青い服の人形と赤い服の人形が窓から外を眺めてゐます。 (お兄さん、調子はどう?) (調子ッて?まあまあ、いつも通りだらうね) (ちよつと身体でも動かしたはうが…) (でも、人形だから人に見られると動けないんだよな) (大丈夫よ、今誰も見てゐないから) (さう?ぢやあ、ちよつと歩いてみようかな、いちにい、いちにい…) (踊つてみたら?) (急に言はれてもねえ…、だいたい、踊つたことなんてめつたにないし…、  腕でもかつこよく振らうかな…いちにい…) (前へ歩くとすぐに窓の端に

しんみり、雨…

青い服の人形と赤い服の人形が窓から外を眺めてゐます。 (お兄さん、雨が降つてるね) (うん、今日は一日中雨になりさうだ) (風も出てきたやうよ、ほら) (うん、みんな傘を斜めにさしてるね) (でも、足元が濡れるからいやだわ) (さうだね) (靴も靴下もびしよびしよになつちやうわね) (さうだね) (このごろ、よく降るね) (さうだね) (梅雨だもんね) (さうだね) (じめじめするし…) (さうだね) (鳥も飛ばないし…) (さうだね) (灰色の雲ばかり) (さうだね) (

七つの橋

青い服の人形と赤い服の人形が窓から外を眺めてゐます。 (きれいな虹が出たねえ) (わー、ほんと、こんな大きくてはつきりした虹、初めてだわ) (虹を見ると幸せな気分になるよね) (あの虹の上に乗つてみたいわね) (行つてみようか) (どうやつて?) (わかんないけど…、  例へば、目をつぶつて、いちにいさんで飛んでみるとか…) (ほんと?) (ぼく、やつてみるよ、いちにいさん…  あれ?だめだ) (ぢやあ、わたし、虹の精にお願ひしてみる) (虹の精ッてゐるのかなあ) (虹さん

どんなスキ?

青い服の人形と赤い服の人形が窓の外を眺めてゐます。 (お兄さん、あそこに人が並んでゐるよ) (ああ、あのかどッこに新しいお店ができたんだ) (何のお店かしら) (パン屋さんぢやないかなあ、ほらパンの絵の看板が見えるよ) (ぢやあ、けふは開店売出しの日だね) (今日一日忙しいだらうな) (お兄さん、どんなパンが好き?) (さうだねえ、いろんなパンがあるよね、甘いの、香ばしいの、柔らかいの、それに猫の顔のパン) (猫が食べるの?) (食べてもいいけれどね、猫が好きな子供が買うだ