東京オリンピック2020開催直前に考えていたこと

 今度の東京オリンピックは、個人的に1988年の昭和天皇が重体の中開催されたソウルオリンピックの頃を想起させる。
 国中が自粛の空気に圧し潰され、テレビからお元気ですかの声が消され、文化祭でのバンドの演奏も中止させられた。連日天皇の容体が逐一報道される最中、ベン・ジョンソンのドーピング疑惑が起きた。ほんの一瞬だけ、重苦しい雰囲気が忘れられたかのようだった。
 2021年のコロナ禍、事態はより深刻である筈だがあの時の重苦しさはない。このままずるずるとオリンピックが開催され、報道は華々しいアスリートの活躍や国民の盛り上がりばかりが幅を利かせ、悪化するであろう感染状況は刺身のツマ扱いとなるだろう。
 そしてオリンピックの後に待っているのは、昭和が終わった時に感じたある種の解放感ではなく、山積した問題を高揚と情緒で塗りつぶす国家的欺瞞である。


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