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寒空と手のひらの温度



「あーさむ、」
マフラーを首に巻いて白い息を吐くように言葉も溢す、朝は少し雲がかかっていて暗いなあくらいの印象、雪でもふるんじゃないかっていうのは昨日から小耳に挟んでいた。
(降らないじゃん…)
僕は童心のままに雪が降ってほしいと思う、僕の住んでる地域柄、年にあるかないかくらいのほんのりのイベント、大人達はやれ降るな、とか車があ、とかネガティブなことを口に出す。雪の白さをもっと楽しんでほしい。

前の冬は雪の降る所にいた、辺りは真っ白で雪玉を投げ合ったり大きな雪玉を2つくっつけたり、遊びの幅が沢山あったこと。外に出たら飽きるまで遊べるのは子供心に楽しくてしょうがない記憶、特別それは大人になっても変わってない、雪合戦と雪だるまなんて名前が付いた遊びを今でもしている、

マフラーに顔をうずくめる仕草とそこから溢れる白い息が好き、肌は白いのに顔なんか熱のせいか霜焼けみたいなので真っ赤でさ、辺り一面の雪景色は君を際出せる自然の化粧、タイプと言うかいいなあと思った冬の景色。

ちょうど一年前、一緒にご飯に行った子が印象的、僕は年上だったから少し背伸びをしたカフェに行く、背の高いテーブルと背もたれのないカウンターチェアに腰を掛ける、一杯の珈琲と大きい皿盛りのクレープを、味なんかするもんか、少し暖かな店内で顔が赤らむ女の子と同じ席だよ、美味しいよねっていいながら楽しいなあって思っていた、その子とは何も無い。それは文面の通り。僕は男だ、そうなればどれだけうれしかったか、でも俺は男だよ、自分の意志は面と向かいたい。葛藤や悩みを言い訳に時間がかかった、その道中で多分帰れないくらいの寄り道をした、だからその子は少しずつ離れていった、心が感じたもうすれ違いわない距離、せめて僕が思い出だったらと思う。

最後に君を思い出に、寒い中で僕を尋ねて、僕は君を尋ねて、僕はその日、落としたピアスも届けれない臆病者だよ、頬に手のひらを当てる、君が落としたピアスは僕のせい?それともわざと落としてくれたの?そんな答えも今は意味をなさないよね。少しずつ解けた君との距離は落としたピアスを探してる間、ずっと遠くにいってしまったようで、僕はなんども後悔を重ねていた。

手をアウターのポケットに入れて歩く、寒いから手を出せない、その日の温度を覚えている、赤らむ頬の温度は手のひらがしっかりと記憶している、貴女を思い出しては顔が赤らむ、きっと冬のせい、寒くてマフラーから溢れた息で顔が暖かくなる、雪が降ったらまた会いたい。寒さのせい、頬の温かさのせい。

今日は雪が降ったよ

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