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美人じゃねぇし

日曜日のスーパーの駐車場では毎週毎週空きスペースを見つけるための熾烈な闘いが繰り返される。

あれは出庫させる人とのタイミングがすべてのゲームみたいなものだ。

混んでいる駐車場でバックは許されない。

出ていく車が視界に入っても前に進むしかない時は無情にも頻繁にあるのだ。

とにかくタイミング命なのである。

先週の日曜日、いつものように買い出しに出かけいつものように駐車場ゲームに参戦していた。

空いてない
空いてない
空いてない

次のレーンに視線を移すと、なぜか車よりも大きなアクションをしているおじさんが目に入る。

おじさん?
おっちゃん?
おとうさん?

なぜか満面の笑みでわたしに向かって訴えている。

ここ!ここ、あいてるよ!

声は聞こえないが大きなゼスチャーで空いてるスペースを教えてくれているようだ。
それ以外におっちゃんの意図が思いつかない。

その場所は空いてると確認できたときには一旦バックしてからでないとレーンに進入できない、運転しながらでは完全に死角になる位置だった。

今まで何度そいつに泣かされたことか。

あそこ空いてたし…………
けど後ろの車詰めてるし…………涙

なぜかそのおとうさんはわたしにそこに入れろと猛アピールしているのだ。

わたしがそこに駐車するのを見届けるまで許してくれなそうな勢いだ。

え?なに?マジで?
あのひとネ申じゃね?

もうおじさまの誘導に従って車を入れるしか生きる道はなさそうだ。
素直に進む。
こちらも満面の笑みを浮かべて頭を下げる。

ありがとう!ネ申よ!

。。。

ってダメじゃん!
ワレどすっぴんの超度入りサングラス着用中やんけ!
笑顔伝わってなーーい…

マジか…

けれどわたしのそんな落胆をよそにその紳士は満足げに微笑みながら店内に消えていった。

なんであんなに親切にしてくれたのかな…
今日全く美人じゃないけどな…

おかげで早々にゲームから離脱できた。
ほんとうにいい人だった。
店内でもし見かけたらさらっとお礼を言わなくちゃ。

エレベーターで1Fに降りる。



もうすっかり忘れていた。




ってダメじゃん。。。



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