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盗作.

建築家ってのは響きからかっこいい。
僕は昔からかっこいいものに惹かれた。

ひとつは、バズ・ライトイヤー。
小さい頃の初めての夢は
宇宙飛行士だった。

部屋には沢山の宇宙船を並べて
天井には沢山の惑星たち。
図鑑も沢山読んだ。
宇宙や化学、物理について
小学生の時から沢山勉強した。
お陰で理科が得意だった。

小さい頃から興味があることを
とことん追求して理解したいという癖を
つけさせてくれた両親のおかげ。

ふたつめは、スパイダーマン。
蜘蛛を見る度こいつに噛まれたら
スパイダーマンになれるって
本気で信じて家に沢山蜘蛛を持って帰って
母親を困らせていた。

大いなる力には大いなる責任が伴う

スパイダーマンでベンおじさんが
パーカーに教えた言葉。
父さんも小さい頃からずっと
僕にこの言葉を伝えてきた。

今でもこの言葉がすごく好きだ。
スパイダーマンは僕の一生の憧れ。

みっつめは、父さん。

この世で一番かっこよくて
それなのに大切な人のために
一番ダサい人になれる人だ。

そんな父さんは仕事人間だ。
沢山の人を救っている。
近所の人に会うといつも
父さんのことで褒められていた。

その頃からだ、
僕も息子にこんな誇らしいと
思ってもらえる父親になりたいと思った。

将来の夢がありすぎた僕だ。
というよりかっこいいと思うものが
多すぎたせいだ。

もちろん進路を決める時にも迷う。
とことん迷っていた。

そんな時に出会う。
劇的ビフォーアフターの匠だ。
テレビに映る彼らは本当にかっこよかった。

彼らになるにはどうしたらいいか調べたら
建築家にたどり着いた。

今までで一番惹かれた。
間違いなくこれって思った。

元々宇宙飛行士の夢のために
沢山図鑑を読んで理科が得意だったり
スパイダーマンのように強くなりたくて
忍耐力があったり逃げ出さなかったり
父さんと同じように医者って夢のために
沢山勉強して数学の仕組みも大好きだった。

全部のかっこいいが合わさって
受験を頑張れたから今までのかっこいいも
無駄じゃなかった。

負けず嫌いを極めてる僕は
難関大学をクリアして晴れて
日本で一番の建築学部に入る。

大学に入ってからも
今まで学びたかったことをあんなにも
詳しく学べる空間が楽しくて仕方なかった。

そんな大学二年の時。
僕の製図が盗作された。
今まで書いた中で一番の自信作。

それが気づいたら全学年の前で
発表するコンテストで
プロジェクターに映し出された。

僕の自信作を荒んだ手で汚されて
アイディアだけ盗まれた悲しいものになっていた。

今まで味わったことがないほどの怒りと
虚無感でいっぱいだった。

盗んだ犯人はゼミの先輩で
それも入学したての頃からずっと
可愛がってくれてた先輩だった。

そのコンテストで先輩は表彰された。
悔しくて仕方がなかった。

それを賞賛するみんなの拍手も
褒めちぎる奴らも馬鹿だ。

僕の製図の本当の価値なんか分からずに
あいつらは賞賛している。

群がる烏合の衆に嫌気がさした。
なにが日本一の建築学部だ。
何が先輩だ、何が努力だ。

褒められるなんて当たり前だ
僕の作品だからな。

その頃から僕は製図に身が入らなかった。
自分の大切なものを
無価値にされた気持ちだったから。

そんな時に僕の友人が
あるアーティストのアルバムを渡した。

「それがなにって感じだけど
大丈夫だから、乗り越えれるから」

そう言って肩を叩いてきた。

家に帰ってその曲を聴いた。
頭を殴られた感覚だった。

僕はいつの間にか他人からの評価や、
賞賛、地位、そんな汚い欲にとらわれてた。

建築家になりたいと思ったきっかけは
そんな欲にまみれた気持ちじゃなく
もっと綺麗なものだった。

化けの皮なんていつか剥がれる
見向きもされない夜がくる
その時に見られる景色が心底楽しみで

親友が言いたかったのは
負けるなってことだけじゃなく
僕の作品の価値を見出してくれた。

見てくれてる人はいるってそう思えた。
僕は二年後、このコンテストで優勝する。
そうメッセージを送った。

そこから製図室に泊まり込み
ひたすらに製図を書いた。

二年後、無事コンテストも優勝して
そのコンテスト優勝をきっかけに
僕は一番尊敬してる男性に出会う。

僕は大学での盗作事件のおかげで
すごくポジティブに考えられるようになった。

バズ・ライトイヤーに憧れて
宇宙飛行士って夢があったから
理科が得意になれた。

スパイダーマンを見て大切な人達のために
いつも前を向く強さと、優しさは
やがて大きな力になり、
大いなる力には大いなる責任が伴うことを知れた。

父さんみたいなかっこいい男でいるために
自分の興味を追求し続けて、
努力を惜しまないこと。
大切な人を優しさで守る強さ。

全部合わさって僕がある。

何もかも失った後に見える景色は
本当に綺麗だろうから。

失うことは怖くない。
怖いのは大切な人達ぐらい。

まだ足りないし色んなものを知りたい。

長くなっちゃった、ちゃんちゃん。

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