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ふたりめ出産記(後編)

頭を振り回し、アホになりながら陣痛に耐えたわたしに、

そろそろ、分娩室へ行きましょう

という最終ステージへの案内状が渡された。

3年前の長女出産時には、
陣痛が破壊的すぎて、分娩そのものにそれほど苦しんだ記憶はなかった。
分娩台に乗って15分ほどで すぽーんと産まれてきてくれた。

初産にして、大声をあげることなく、深呼吸だけで出産した。
お手本のようなお産でしたよ!
とほめられたほどである。

よしよし今回もやってやろうではないか、と意気込んで分娩台にのる。

あだだ
あだだだだだ

さっそく声が出た。
こ、これはきつい。

それだけでなく
ぎゅーと下腹がしめつけられる痛みとともに
口からエクトプラズムがキラキラと流れ出ていった。

うわー、すみません!

大丈夫ですよ!もう出ませんか?

はい、もう大丈夫で…オロロロ

ほんとすみま…オロロロ

いったい何を産んでいるのか分からない惨状だった。

助産師さんはドン引きしていたが、
優しくそっと布をかけてくれた。

この産院は、呼吸法で痛みを逃すソフロロジー式分娩で有名だ。

先生は、ラストスパートで人差し指を立て、
この指を見て、ふーっと息を吐いて!!
大丈夫、がんばれ!!
キリッとした顔で伝えてきた。

よし、これならできる!
3年前にほめられたやつだ!

先生の指を見ながら、
ふーっと息を吐く口をしながら

ふぅぅーーうわぁぁぁぁぁぁぁあ

と叫んだ。
全然無理だった。

先生から目の光が消え、そっと人差し指をしまいこみ、
もう生まれます、と冷静に言った。

こうして
小1時間ほどで次女に会うことができた。

ドキドキしながらお顔を見ると、

栗まんじゅうだ。

ものすごく栗まんじゅうだ。

性別は女の子らしい。

立派なまんじゅうを生み出した達成感で、
ほっと一息ついた。

この日はお産が立て込んでおり、
わたしのあとにまだ3人の妊婦さんたちが
分娩台があくのを待っていた。

色々生み出して汚してすみません、と小さくなっていると、
さっさと車いすに乗せられ
あれよあれよと個室へと運ばれていった。

隣では栗まんじゅうが車いすと並走していた。

ふたりめ出産は痛くない…ことはなかったが、世界一かわいい栗まんじゅうを育てる幸せな日々のスタートだ。


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