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YONEX CARBONEX SLD Vol.3 実走編

Vol.2 から続く。

納車

さて、2月の14日頃にできそう、と言われていたのではあるが、15-17日はあいにく北海道に行っていたので、18日にキムラ自転車に顔を出すことにした。
18日の午前中に別用のついでに店に行ってみると、社長が「おっ」という顔で迎えてくれた。
聞けば組み上がっているはずだが、ダブルチェックがまだだという。
「午後来てもらったら渡せるようにしときますよ」
とのこと。

であれば、一旦帰宅して実走して帰る支度をしてくるか、ということで昼ごはんも兼ねて出直すこととした。

帰宅後、サイクルウェアやらヘルメットやらを揃えて再びキムラ自転車に。
そしてようやく完成車とご対面である。
本当にやれやれ。

ごたいめーん

クランクについてはパワーメーターを Magene PES-505 を導入してみよう(値段が何より安いので)と思ったときに、チェーンリングもグロータックの通販でMagene製のコンパクトクランクに該当する 50-34T を購入し装着してもらった。
なのでシマノの標準アルテグラクランクが思いっきり余っているが、とりあえず使用先は考えることにして数ヶ月経っているが、一応使用予定はある。

完成車でざっくり7キロを下回るくらいだが、細かいところを煮詰めていけば 6.5kg くらいにはなりそうである。とりあえずそれは気長な計画になるだろう。

お店の前で記念撮影をしてもらって、早速乗り出す事とする。
友人のクーニー氏も呼んでおいたので、一緒にある程度の距離を走ってシェイクダウンとフィーリングを確かめることにした。

衝撃

乗り出して、当然ではあるがホイールの組み合わせも相まってとんでもない軽さを感じる。30km/h くらいまでの加速は下手するとエアロロードの Aeroad より軽く早い。そして30km/h ちょっとくらいの巡行も、フレーム特性なのかペダリングを後ろからアシストしてくるようなバネ感が後押ししてくる。
正直、今までバネ感と言われてもよくわかっていなかったのだが、フレームとホイールの組み合わせによってはペダリングの下死点通過後から上死点までのももあげのところでアシストを微妙に感じるかのような感触である。
なのでトルクよりケイデンス、つまりダンシングで体重をかけながら、よりもシッティングで足をクルクルと回転させるほうが活きるセッティングになっている。
まあ開発ライダーの森本氏がそういう乗り方の人で、フィードバックをそういう方向性で入れたんだから当たり前なのだが、私のような素人にもそれはわかった。

その結果、今まで5%の坂道を登る感覚で7%くらいの坂を登れる。
2%くらいまでの勾配なら、体感はほぼ平坦である。それくらい軽さとフレーム特性が上り坂を劇的に変えた。
自転車の重い軽いは、別種の自転車に乗ると大きく体感できるが、似たようなポジションで漕ぐことはない。
例えばシティサイクルとクロスバイクのポジションは違っているし、ミニベロとロードバイクも同じにはならない。
今回の場合、Aeroad のポジションに合わせてセッティングしてもらっているため、ハンドル幅が10mm違う以外はまったく一緒なので車体の差が思いっきりわかった。

こんなに違うと流石に笑うしかない。
クーニー氏のロードバイクもエアロロードではあるが、SRAM eTap Rival 組ゆえ軽量な方ではないにしても、交換して乗り比べてみると明らかにリアのほうが重さで引っ張られる感触がある。

CARBONEX SLD 恐るべし。である。
なお、下りのハンドリングも癖はなく素直な乗り心地で、ブレーキを当てながらのカーブでも問題はない。

弱点

もちろん CARBONEX SLD は万能ではない。
弱点というほどでもないが、設計思想的に軽さと乗り心地の方面に振っている S-Works Aethos の国産版みたいな自転車であって、エアロ性能は当然ながらオーソドックスなフレーム形状ゆえ良くはない。空洞実験を繰り返して作られている最新のエアロロードバイクに敵うわけはない。
これはホイールを DT Swiss の ARC1400 DICUT を履かせてみて確認したが、リムハイトが 40mm から 50/60mm になることで巡行は楽にはなるものの、同じパワーを出しても上限の速度が数キロ変わってくる。

そんなわけでレーススピードの速度になってくると、平坦だけのコースだと分が悪い。逆にインターバルや上りが頻繁に出てくるコースなら輝きが増すだろう。
ヘヴィ級の私などからすると登りを助けてくれるし、ヒルクライマーならとんでもない武器になり得るフレームである。
しかし下りで体重を生かして漕がなくても追いつける、みたいなアドバンテージも同時に手放すことになる。

故に 35km/h 以上の速度域で、ひたすら平坦を進むようなシチュエーション
には向かないだろう。よってヒルクライム以外のレースには向いていない。

そして何より値段には言及しないといけないだろう。
円安の現代では相対的に買える値段になってしまっているとはいえ、一般的に60万+税は普通にしんどい。

活きる使い方

まず真っ先に思い浮かぶ活用はロングライドだ。獲得標高があるような場合は、より生きてくることになる。
よってロングライドではあっても、元々のフレームの特性を活かすためにも重量物はなるべくゴテゴテと付けたり持ったりせず、必要最小限の荷物だけで楽しむのが良いだろう。サドルバッグとツールボトルくらいにしておくのが無難だろうな、と思われる。トップチューブバッグも付けれるだろうが、積極的には推奨しない。ダンシングの時に当たって不快だからだ。

軽さを残したまま、パワーを使いすぎない負荷で淡々と走ると足への疲労はあまり残らない。
私の場合、しまなみ海道の往復140kmはPWRで言うところの3倍程度で走って6時間を切るような乗り方をすることが最近は多いのだが、2〜2.5倍くらいのパワーで走り続けたところ200kmという距離も、思ったより楽に走ることができた。

ブルベをする人には、体に優しくいいフレームかもしれない。

その後

というわけでオッサン二人でダラダラと走っていたのだが、ふと思い立って「野呂山」という文字を見つけてしまって、行ってみることにした。クーニー氏がバッテバテになってしまって登るのに1時間くらいかかってしまったが、私の方はというと脚質体重差を考えても斜度10%を超える激坂が続いても比較的楽に登っていけた。
こればかりは機材差というか重量差としか言いようがない。斜度が10%を超えてくると、さすがにホビーライダーの私程度では空力効果が出てくる14km/hを超えることができないので、自ずとパワーと自重+機材重量の単純な計算になる。
クーニー氏の FALATH EVO はおそらく8kg強。

https://www.strava.com/segments/2688774

流石に野呂山クラスの登りは長い。トータルで7kmくらいは登ってることになる。
長いとは思ったが、やはり機材の持つ特性、足へのダメージ軽減性とペダリングの補助感(いわゆるバネ感)は存分に感じることが出来た。

長いのぼりの後は同じ距離を下る必要が出てくるわけだが、多少寒さに震えつつしっかりと走った。軽くて不安定ということもなく、ハンドリングはフォークの形状もあるのかクイックすぎることもないしダルイこともない。
キャスター角がついているお陰だろう。

アンダーとオーバーの車のような細かい話はまた追々するとして、比較的アンダーよりのニュートラル気味、という感じだった。己の操作フィーリング内に収まってくれるのでとてもコントローラブルである。

結論

ロングライダーにはとてもいいんだけど、値段が値段なだけに雑にあつかうとすぐにフレームが割れちゃうんじゃ、という恐怖感も多少ある。それゆえグランフォンドや仲間との強度の高くないグループライドで出番が増えそう。
間違ってもアルミフレームのような頑丈さはないだろうから、ジェントルメーンな乗り方を楽しめる諸氏には楽しめると思われるが、やはり軽快に走りたければ減量した方がいいとは思う。自分も絶賛、脂肪落とし中です。

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