
臨床で使える腸腰筋(腸骨筋・大腰筋)の知識
【2020/03/11 更新】鍼灸師・柔道整復師1年目の方向けの基礎的な内容をまとめています。国家試験対策では出題されないため省いている部分を多く載せ臨床に役に立つ内容にしています。
今回は
【臨床でも使える腸腰筋の知識】
についてをまとめてます。
こんにちは、🐔もむけです。
国家試験の勉強ではとりあえず起始・停止・支配神経を覚えてきた解剖学ですが、卒業して実際に患者を目の前にすると今までの知識量じゃ全然太刀打ちできなかったりします。
有料マガジンに掲載していますが、最後まで無料で見れます。
腸腰筋の解剖学的知識について

腸腰筋は股関節の最も強力な屈筋です。
股関節を後面では大殿筋・前面では腸腰筋が固定しています。
腸腰筋には、股関節の屈曲作用の他に、脊柱を下方へと引き下げ、直立を助けます。
【腸腰筋の解剖学】
▶腸骨筋:腸骨窩→小転子
▶大腰筋:腰椎の肋骨突起・椎体 → 小転子
約半数の人は大腰筋の前面に小腰筋を持つため、小腰筋を腸腰筋に含めることもあります。※1
腸腰筋の触診について

まずは腸腰筋の触診についてお伝えしていきます。

腸腰筋はイラストのように、腹部からの触診と鼠径部からの触診が可能です。健常者であれば腹部からの触診も可能ですが、高血圧症や糖尿病・心疾患のある患者の場合、腹部には腹大動脈の脈管が多く通っているためリスクが生じます。
特に腹部の皮下脂肪・内臓脂肪の多い方だと、脂肪と内臓をくぐり抜けて触診するため、患者にも負担があり、術者も触知が困難となります。
理由がない場合は腹部からの触知をせずに鼠径部で確認をするのが無難と思われます。
痛みが無くても腹部を触られるのを嫌がる患者は結構な割合でいています。
その場合、腹部からの触診が本当に必要かどうか考えてみても良いかもしれません。
【鼠径部から触診する場合】
鼠径部から触れる場合、上記で説明したリスクは少なくなりますが、代わりに腸腰筋のボリュームも少なくなります。
腸腰筋の拘縮や伸張性に問題ある場合、鼠径部からの触診でも確認できます。
触診方法はスカルパ三角内の鼠径靭帯下方、大腿動脈の外側、縫工筋の内側を目安に触診を行います。
【スカルパ三角】
▶鼠径靭帯
▶縫工筋(内側縁)
▶長内転筋(外側縁)
腸腰筋のテスト法
腸腰筋で一番有名なものはトーマステストでは無いでしょうか。
トーマステストは股関節の拘縮の有無を見るテストなので、腸腰筋に問題があるかどうかの判断にまでは使えません。
動画では患側をベッドから出さずに行っていますが、膝が屈曲できるよう下肢をベッドから出して行う方法もあります。
股関節を完全屈曲した際、反対側が水平面よりも上がった場合を股関節部がタイトな状態と考えます。
逆に水平面よりも下がった場合をタイトネスなしの状態と考えます。
腹部の圧迫テストについて
前章でお伝えした腹部から腸腰筋を触診する方法を用いて圧迫テストを行う方法があります。
患者を背臥位にした状態で上前腸骨棘の高さ、下側腹部に両手の指腹をあてます。そこから、腹直筋の外側縁を確認した後、外側・背側に向かって挿入します。
腸腰筋が触れた際の圧痛や硬度の確認を行う方法です。
圧痛のレベルに応じて腸腰筋を触れた状態のまま下肢を挙上させてさらに確認することもできます。
腸腰筋の治療に関して
腸腰筋由来のグロインペインに効果が認められている特異的な理学療法は報告されていない。※2
そのため腸腰筋の問題に対してはこれを行えば解決するというものは存在しておりません。
触診やテスト法で腸腰筋のタイトネスを認める場合には柔軟性を高めるダイレクトマッサージやストレッチングを行うのが効果的です。
また患者の姿勢が明らかなスウェイバック姿勢を取っている場合にはそれを改善することも大切となっていきます。
【鍼灸師】鍼治療による腸腰筋へのアプローチ
経穴で言えば、「衝門」が腸腰筋には当たります。
ですが、衝門は大腿動脈の外方を通るため刺鍼には注意が必要です。
【衝門】
▶足の太陰脾経
▶鼠径部・鼠径溝で大腿動脈は駆動部外方
▶府舎の内下方
他にも背部兪穴である腎兪なども効果はあるとされていますが、まだ私自身がその理屈をちゃんと理解していないので割愛させていただきます…
経穴の位置を無視した場合は上前腸骨棘から腸骨に沿うように刺鍼することでも大腰筋を刺激することができます。
ストレッチや鍼・マッサージなどによるものは腸腰筋の弛緩を狙ったものです。逆に腸腰筋の機能低下による問題に対してはトレーニングが有効です。
【文献】
※1 著 河野邦雄 他 解剖学 第2版 医歯薬出版株式会社
※2 著 永井 聡 他 股関節 理学療法マネジメント MEDICALVIEW
臨床で使える腸腰筋の知識まとめ
こちらに掲載しているのはあくまで知識ベースの話です。
患者の症状の原因が本当に腸腰筋からくるものなのか判断するのは難しいので、腸腰筋だけにとらわれずに他の筋肉や部位についても確認してみることをおすすめします。
現在期間限定の無料ですべて公開しています。
記事がまとまってきたら有料化していく予定です。
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