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【はりきゅう】わかりやすい鍼鎮痛の解説(ゴロ合わせでも覚えれる)

【2021/08/13 更新】このアカウントは鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師・理学療法士・作業療法士・臨床検査技師・言語聴覚士などの国家試験対策の覚え方のコツ・ノウハウ・ゴロ合わせなどをお伝えしています。

【生理学】 
 ⏩鍼鎮痛
  ゲートコントロール説・下行性痛覚抑制系
  末梢性オピオイド鎮痛・アデノシンA1受容体による鎮痛
 についての解説

こんにちは!
オンラインで試験対策を学ぶなら森元塾 塾長のもぬけです。


「患者からなんで鍼を刺すだけで痛みがとれるの?」って聞かれたときに根本から理解して解答できるようかっこいいですよね。

ってことで今回は国家試験問題を押さえながら鍼鎮痛について学習していきます。


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【はりきゅう理論】鍼鎮痛について

西洋医学的に鎮痛を起こすには、薬物や外科的処置により痛覚経路を遮断することによるが鍼鎮痛は鍼で背板を刺激することによって、もともと生体に備わっている内因性鎮痛機構を賦活させることにある。

生体にもともと備わっている痛みを取り除く能力を鍼によって引き出すのが鍼鎮痛の役割ってところですね。

この鍼鎮痛の方法(機序)なんですが大きく分けると、中枢性のものと末梢性のものがあります。

【鍼鎮痛機構:中枢】
 ▶ゲートコントロール説
 ▶下行性痛覚抑制系

【鍼鎮痛機構:末梢】
 ▶末梢性オピオイド鎮痛
 ▶アデノシンA1受容体による鎮痛

急に難しい言葉が出てきましたが、とりあえず末梢性と中枢性で少し内容がちがうんだな。ぐらいでオッケイです。


【はりきゅう理論】ゲートコントロール説について

鍼による鎮痛機序の神経生理学的説明としてゲートコントロール説があります。

ゲートコントロール説は末梢の感覚受容器からの太い神経線維と細い神経線維からの異なる入力の相互作用の結果として説明したもの。

ヒトの身体は一般的に、太い神経線維からの感覚入力は触圧覚を伝え、細い神経線維は痛みを伝えています。

細い神経線維からの入力よりも太い神経線維からの入力の方が優先されるんじゃないかな?と仮定したものがゲートコントロール説と言えます。

仮定なので本当にそうなのかは神のみぞ知るってことなんです。

でも痛いところを擦るおまじない「いたいのいたいの飛んでけ」で実際に痛みが軽くなりますよね。


この流れを生理学的に書くと次のようになります。

Aδ繊維やC繊維などの細い神経線維が興奮するとSG細胞の働きが抑制されT細胞を介して脳へ疼痛の信号を送ります。ですが触圧覚などのAβ繊維が興奮すると、SG細胞がT細胞そのものの働きを抑制させるため、痛み刺激が脳に伝わらなくなり鍼鎮痛になるというものです。

ここで出てきたSG細胞について説明します。
SG細胞は脊髄後角にある膠様質物質細胞で痛みを伝える門番の役割があります。つまり(ゲートをコントロールしているもの)

SG細胞は細い神経線維と太い神経線維が収束しており、脊髄から視床などの上位中枢に信号を伝える伝達細胞に入力する両神経繊維に対してシナプス前抑制をかけると考えられています。

ややこしいのでスルーしても大丈夫です。
下記のまとめだけ押さえておきましょう。


【ゲートコントロール説のまとめ】
 ▶痛覚も触圧覚が優先される 
 ▶Aδ・C繊維よりもAβ繊維が優先される
 ▶SG細胞が関与している
 ▶あくまで「説」

冒頭では中枢性とかきましたが正確にはゲートコントロール説は脊髄によるものです。


【はりきゅう理論】下行性痛覚抑制系

下行性痛覚抑制系は視床下部の弓状核後部から始まり、ドーパミンニューロンを介して視床下部腹内側核にいたり、ここから2つの経路に分かれる。
1つは縫線核系、もう一つは傍巨大神経細胞核をとおるノルアドレナリン系の下行性抑制系である。

簡単に言うと脳の中にそもそも痛みを抑制する部位があるってことです。

説明の通り2つに機序が分かれています。
1つはセロトニンによって抑制するルートともう一つはノルアドレナリンによって抑制するルートです。

なんかよくわからないってヒトはココだけ押さえておきます。

【下行性痛覚抑制系のまとめ】
 ▶ノルアドレナリン
 ▶セロトニン


【はりきゅう理論】末梢性鎮痛について

末梢性鎮痛には末梢性オピオイド鎮痛とアデノシンA1受容体による鎮痛があります。


【はりきゅう理論】末梢性オピオイド鎮痛

オピオイドという痛みや感覚を鈍くさせる麻薬によくにた性質をもつ物質があります。

これが作用し痛みを抑制させるというのが末梢性オピオイド鎮痛です。

ストレスや外部刺激によって放出され、自由神経終末に出現している受容体と結合して起こると考えられています。

末梢性オピオイド鎮痛には少なくても3種類のタイプがあると言われています。これがよく国家試験で出題されるものです。

【オピオイド因子】
 ▶エンケファリン
 ▶エンドルフィン
 ▶ダイノルフィン

これらの受容器がそれぞれあります。

【オピオイド受容体】
 ▶δ(デルタ):エンケファリン
 ▶μ(ミュー):エンドルフィン
 ▶κ(カッパ):ダイノルフィン

【オピオイドゴロ合わせ】
 嚥下出る、ニューエンド、カッパ代

 嚥下(エンケファリン)出る(デルタ)、ニュー(ミュー)エンド(エンドルフィン)、カッパ(カッパ)代(ダイノルフィン)


もうすこしだけオピオイドについて説明します。

オピオイドにはそれを防ぐ拮抗物質というものも存在します。

それがナロキソンという名前の物質です。ロキソニンではありません。

動物実験でナロキソンを投与して置くと先程まで説明してきた鎮痛効果が全く出現しなくなるというものがあります。

じゃあこのナロキソンは身体の中で作られるのかというとそうではなく、1961年に作られたものです。国試関係ない…

【オピオイド拮抗物質】
 ▶ナロキソン


【はりきゅう理論】アデノシンA1受容体による鎮痛

鍼刺激などを行うことで組織が微小損傷すると、その部分の細胞が壊れてATPが放出されます。

このATPが分解されてアデノシンが放出されます。

ATPはアデノシン三リン酸ですので、アデノシンという物質にリン酸が3つくっついている状態。

それがアデノシンとリン酸に分解されて発生するという流れです。

出てきたアデノシンがアデノシンA1受容体を活性化させ、鎮痛が起こるという報告が近年研究として上がってきています。

参考:https://www.cosmobio.co.jp/aaas_signal/archive/ec_20100713.asp


【はりきゅう理論】その他の鍼鎮痛の研究

【SPA】
SPA(stimulation produced analgesia)の研究ではラットの中脳中心灰白質に電気刺激を起こすと鎮痛が出現するというものがある。

【ストレス鎮痛】
短期的なストレスは痛みを抑制させる。運動中に痛みを感じないのはストレスによるものである。カテコールアミンによる痛みの抑制やACTH・βエンドルフィンによる痛みの抑制と考えられている


【はりきゅう理論】D-フェニルアラニンについて

鍼鎮痛には個体差があり、約3.6:1の割合で、鍼鎮痛が出現する・しないがラットの実験でわかっている。

D-フェニルアラニンを投与すると、エンケファリン分解酵素の阻害を行うため、先程鍼鎮痛が起きないグループに対しても鍼鎮痛が起こること判明しました。

少し手前で話したナロキソンは鍼鎮痛を起こさなくさせるものでこのD-フェニルアラニンは鍼鎮痛が起きない生体に対して起こさせるようにするものです。

【D-フェニルアラニン】
 ▶エンケファリン分解酵素阻害剤




【はりきゅう】広汎性侵害抑制調節

【広汎性侵害抑制調節】
 略:DNIC
 英:Diffuse Noxious Inhibitory Control
 疼痛が別の疼痛を抑制する現象。
 全身のあらゆる部位に加えた侵害刺激が本来の痛みの情報伝達を抑制する

ざっくりすると手に鍼を刺すことで、なぜか肩の痛みが取れるというような鍼灸師あるあるの現象のことをいいます。

もともとは1979年に麻酔をしたラットで行った実験から発見された現象のことをいいます。


広汎性侵害抑制調節(DNIC)は、下行性痛覚抑制系とは異なる機序で、延髄の背側網様亜核(SRD)が部分的に関与することが知られています。

【国家試験的なポイント】
 ▶内因性オピオイドやセロトニンが関与する。
 ▶全身性に効果がある


【はりきゅう理論】鍼鎮痛のまとめ

鍼治療による鎮痛効果をもたらす機序は上記に説明したとおり色々と種類があり、そのどれもがまだ研究途中ということです。

研究のたびに少しずつ変わってくるので常に脳をアップデートさせていく必要があるみたいですね。

機序がわかっていたら施術にもいい影響をもたらしそうです。
なんであの患者だけ鎮痛効果が出ないんだろうと思ったときなんかに個体差の話を思い出していただければ説明もしやすくなるのでは無いでしょうか。


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