セイコー製の時計を受け継いだら調べてほしいこと
時計修理店の現場では時折、ご両親から譲られたセイコー製腕時計のオーバーホールをご依頼いただくことがあります。
そんな時におせっかいながらもお伝えするのが、裏蓋に刻印されているシリアルナンバーのちょっとした秘密。時計好きの方ならご存知の方も多いと思いますが、実はこのシリアルナンバーから製造年月がわかるのです。
シリアルナンバーを分解すると次のような構造になっております。
「製造年(西暦)の下1桁」+「製造月」+「ロット番号」
下の画像はメイン画像(キングクォーツというモデル)の裏蓋側ですが、上記構造にならうと
「製造年(西暦)の下1桁=『6』」+「製造月=『1』」+「ロット番号『0273』」と読むことができます。
このキングクォーツというモデルおよび搭載されているCal.0852は、1975年から1977年の間製造されておりました(Cal.0852はキャリバー0852と呼び、Cal.は内部機械=ムーブメントの形式番号。セイコーの場合はこのキャリバー名も裏蓋に刻印されています。画像右下の4桁数字-4桁数字の前半部分ですね。ちなみに後半部分はケースの種類に応じた番号です)。
シリアルナンバーの構造から、画像のキングクォーツの製造年は1976年と特定することができます。モデルごとの製造年代については検索するとすぐに出てきます。
製造年(=おおよその購入時期)がわかると、想像が色々と膨らんできます。
「あれ?俺が生まれた年じゃん」
「お父さんとお母さんが結婚した年だわ」
「その年はたしか・・・実家を建てた年じゃないかな」
「私が小学校に入学した年。記念写真で父がしてた時計ってまさかこの時計?」
「当時の親父は23歳。初ボーナスで買ったのかなぁ?」
などなど、当時のご両親や家族の様子に思いを馳せるきっかけになるのです。
不思議なことに、製造年を知るとその時計への思い入れが少し強くなります。風防やケースの傷もただの傷ではなく、よい時も苦しい時もご本人のすぐそばで時を刻み続けてきた証に見えてきます。そう、シリアルナンバーはその時計が内包するエピソードをより豊かなものにしてくれるのです。
ご両親のこと以外にもその年の10大ニュースを調べるのもおすすめです。1976年であればこんな感じです。
個人的には「およげ!たいやきくん」が脳内再生されて止まりません。修理することをお考えでなくても、ぜひ処分せずにそっと飾っておいてもらえたら嬉しいですね。
ちなみに製造月にはアルファベットが刻印されていることもあります。これは表記ルールによるもので、1月から9月まではそのままの数字、10月はOctoberの「O」、11月はNovemberの「N」、12月はDecemberの「D」となります。
もしセイコーの時計をお持ちでしたらぜひお調べいただき、束の間の想像の旅へとお出かけください。時計に興味をお持ちの方であれば、ご自身の誕生年月と同じ時計を探すのも面白いかもしれませんね。
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