アサーション

先日、あるオンライン講座の哲学カフェでアサーションが取りあげられた。そして、発刊されたばかりのリクルート『Career Guidance』vol.437 でも、進路指導に役立つ手法として紹介されていた。今回は、自分の頭の中を整理する意味でも、アサーションについてまとめておこうと思う。


1.アサーションとは

ご存知の方も多いと思うが、assertionは「自己主張」という意味に訳される。assertiveは派生語で形容詞で、「正当に主張する」 「自分の意見を述べる」 「自信を持った」 といった意味である。でも、カウンセリングのときには、 少し違う意味で使われているという。アサーションは1950年代にアメリカで生まれたカウンセリング手法である。もともとの用語の意味は、周囲のことなど気にせずに、 自分の言いたいことを素直に言うことをだったが、自己主張をするときに自分もきちんと意思表示し、しかも相手も不快にさせないコミュニケーションスキルを指すようになった。

2.コミュニケーションの3タイプ

アサーションでは、コミュニケーションを理論的に三つのタイプに分けている。 

・アサーティブ:自分の思うことをそのまま伝える素直なタイプ。自己受容感が高い。

・ノンアサーティブ:自分は自分だと考えるタイプ。相手にどう思われるかを気にして思うことを言えない逃げ腰型で、自己肯定感が低い。 自分はダメだと考えることが多いという。

・アグレッシブ:相手を支配しようとして勝ちにいくタイプ。文字通り攻撃型で、自己肯定感が高い。自分はスゴイと自信を持っていることが多い。

このタイプを理解したうえで、進路指導に有効なのはもちろんアサーティブである。自分の考えがまとまらずに周りの意見に左右されてしまう生徒の場合、周りの意見との対立をあおるのではなく、相互尊重の主張をする重要性を伝える。面接試験で失敗した生徒の場合、うまくいかなかった問題点を指摘するのではなく、一緒になって問題点を考える姿勢をとる。ほとんど自分から話をしない生徒の場合、教員側が困っていることを明確に伝えたうえで、生徒に自分の気持ちを表現させたり資料を見せてもらったりするようもっていく。なるほど、うまくいくかどうかはわからないが、トライしてみる価値はありそうだ。


3.哲学的に考えるアグレッシブ

今回の進路指導に使うアサーションからはやや話がそれるかもしれないが、アグレッシブについて、 私の尊敬する哲学者(大学の先生) は哲学カフェで次のように解説してくれた。アグレッシブは自己肯定感が高いように「見せている」けれど、実は自己受容感は低い。「虎の威を借る狐」なわけだ。自分を大きく見せて勝ちにいきたい。だって本当の自分は小さいから。そう考えるとアグレッシブはノンアサーティブと同類で、不安に満ちている。自分は小さいと思っている。他人の中にいて全然安心なんかしていない。いつも隠れている、あるいは他人を支配しようとしている。世の中は危険に満ちていて、他人は信頼できないと考える。

アグレッシブは2パターンあって、素朴なアグレッシブは俺様感満載で、暑苦しい(けどわかりやすい)だけだが、アグレッシブ上級者というのがいる。アグレッシブ上級者は、アサーティブなふりをして人を操作したり支配したりする。素朴アグレッシブだと拒否されてしまうからだ。だから上級者は、他人の耳に心地いい言葉を使い、相手を支配する。でも、そんなことをするのは、そうしないと自分のことを認めてもらえないと思っているからだ。やっぱり不安で、この世間にいて安心なんかできないからだろう。

なるほど、奥が深い。その哲学の先生は最後に次のようにまとめている。

アグレッシブな人もノンアサーティブな人も、でも不安な毎日は辛いだろう。不安に満ちて、いいとこだけ見せて、悪いところは隠して、本音は隠して、生きるのは疲れるだろうと思う。周りの人たちなんてどうでもいいのにね。だって「周りの人たち」なんていない。いるのはいつでも、目の前の相手と自分の心だけなんだから。

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